【完結】白銀を捧ぐ

白井ゆき

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シクラメン

6※

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 宣言通り同じ辱めを2度も与えられ、抵抗する気力を失った俺を環は膝の上に乗せた。向かい合うように跨らせ、尻の中に指を埋めたのだ。

「あざみ、どう?」
「き、もちわるい」

 腸壁を戒めた水圧の感覚が残る腸内は、はじめこそ異物の侵入を許さなかったが、指に纏わせたコンディショナーの滑りを利用して少しずつ奥を開いていく。指の節の侵入を許すたびに、身が引き裂かれるような痛みがピリリと走り、食いしばった奥歯の隙間からうめき声が漏れた。

「そ。これからもっと気持ち悪くなるだろうね」
「ぅ、やだ……、ぁ」

 空間を広げるように環の指が回る。粘着質な音を立てながら体内を押し広げられる感覚に体を捩った。その拍子に食い込んだ指の刺激から逃れようと腰を浮かせると、頚椎を抑え込まれ一層深く沈みこむ。漏れ出た呼気に環が笑い、反応を楽しむように更に奥へと押し入る。その繰り返しだ。

「やだって。それを望んだのはあざみでしょ」
「違う……」
「違わない。何? もしかして手繋いでキスするだけが恋人だとでも思ってたの? ぬっる」
「そうじゃねぇ、けど……ぅっ」
「けど、何? こんなに辛いとは思ってなかった? そりゃそうでしょ。本来入れるところじゃないんだから。普通はこんなとこ使わないんだよ。こんなとこ使うのはあざみだけ。分かる? あざみがしようとしてることは、こういうことなんだよ」

 指が増やされる。みちみちと小さな入り口を掻き分けるように突き立てられた指は、確かな痛みをもたらした。目の前の体に腕を回して痛みを誤魔化そうとしても大した意味はなく、生理的な涙が落ちる。
 普通は使わない。使うのは俺だけ。それは、俺が普通ではないから。親友に邪な気持ちを抱いたから。罰が当たったのだ。友達の枠組みを超えた欲情を抱き、あまつさえ幸せを邪魔しようとしたのだ。
 私利私欲のために傷つけようとしておきながら、1番でありたいと願うだなんて虫がよすぎる。その浅はかな考え方を見透かされたのだ。神様にも。環にも。

「な、ぁ、……もうやめろよっ……俺が悪かったから……」
「謝ったって何も解決しないよ。あざみはこれからここにチンコ入れられるんだよ。ほら、ちゃんと広げて」
「ぅ、ゃだぁ」
「仕方ないなぁ」

 環のため息が耳を掠める。その僅かな刺激に跳ねた体の隙間、その僅かな空間に滑り込んだ環の手が、力なく垂れていた俺の性器を掴んだ。そのまま亀頭部分を摘まれれば、項垂れていた首が擡げ始める。擦る皮膚の感触や握る強さもタイミングも自分で慰める時とは何もかもが違う刺激に、あっという間に硬度が増した。

「あっ、待っ……、ぅんんっ」
「あざみ、先っぽぐりぐりされるの好きなんだ」

 先端を手の平で包まれたかと思えば、掌全体を使って鈴口を捏ねられる。滲み出た先走りが水音となって俺の耳にも届き、顔を赤くした。その様子を気に入った環の喉奥で響く笑い声が、羞恥心を一層際立たせせる。

「あーあーこんなに濡らしちゃってさぁ」

 そんなに気持ちいいんだ。そう囁くように、俺の耳朶を食んだ。耳の輪郭をなぞるように這う舌。同時に指先で尿道口を刺激され、頭は白く塗りつぶされた。前に与えられる快楽に夢中になっていると、今度は中を戒める指が動き背筋が伸びる。それに気をよくした環は、窄まりを押し広げるように指を広げ、先走りを纏わせた手で竿を扱くのだ。強い快感に引っ張られ、後ろに生じていた違和感が次第に快楽へと転ずる。浴室内に反響する上擦った声が一体何に対するものなのか、考えることを放棄した頭では分からなかった。

「やぁ、ぁっ、……たまきっ環ぃっ、それっ、あ、ぁっ」
「……っとにさぁ」

 環が小さく呟く。自分のことで精一杯で上手く聞き取ることができず、聞き返そうと顔をあげると耳に舌が入り込んだ。湿った舌が齎す未知の感覚と脳内にまで響き渡るような水音。滑る竿を撫でるだけに止まらず、皮を引き延ばして剥き出しになった部分まで届く愛撫。そして、探るような手つきで腸壁を押し込む指。それら全てが正気を奪い取っていく。

 元々そんな機能はなかったかのように、思考回路は止まり、体は与えられる快楽を目一杯享受しようと、ゆるゆると動き始めた。普段と違う刺激をあちこちから受ける体では、そんな小さな動きでさえも大きな快楽となって返ってくる。浴室に響く自分のものとは思えない声も、興奮をもたらす一因となって体を蝕んだ。

「あざみっ……」

 環が俺の名を呼ぶ。熱のこもった囁くような声。俺に見せる普段のおちゃらけた姿とはかけ離れた性感を煽る響きに、脳がびりびりと痺れ、得体の知れない感覚が背筋を駆け上がった。

「ぁっ、んっ、ぅ、んんんぅっ……!」
 
 体が痙攣し、吐精した。数度に分けて吐き出した白濁を受け止めた環の動きが止まれば、体から力が抜け落ち、重力のままに環の肩口に沈み込む。
 
「ははっ。いっぱい出たね。気持ち良かった?」

 鼻腔をくすぐる環の香りに安心感を覚えると、一層体は脱力した。密着したから環の胸からは、心音が聞こえている。何も纏わない裸の胸から互いの心音が響きあい、リンクして1つになる。

「たまき……」
「ん?」

 好きだ。こんなことをされても、好き。心にどうしようもないほどの愛情が込み上げる。何をされても、何を言われても、きっと最後には許してしまう。

 言い出しっぺの環が途中で投げ出したパズルを完成させた時も、色んなものが混ざり合って複雑な味になった食べ物を押し付けられた時もそうしたように。全部全部、許してしまう。これが、惚れた弱みなのだろう。好き。好きで好きで堪らない。

 霞ゆく頭の中、脳内には、ただそれだけが浮かんでいた。

「……あざみ?」
 
 環に話しかけられている。それを認識しながらも、心地の良い倦怠感と疲労感に包まれた体は言うことを聞かず、流されるがままに落ちていく瞼をそっと瞑った。
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