【完結】白銀を捧ぐ

白井ゆき

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勿忘草

6※

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 顔を背けたくなるような水音が鼓膜を揺らす。室内に響くものと自分の体内から奏でられるそれは、身体をよじらせるだけで音を上げ、行為を自覚させるのだ。

「あざみ、辛くない?」

 環が身をかがませたことで穿つ角度が変わり、返事の代わりに低い唸り声が出た。中を掻き回していた指とは違う圧倒的な質量に狭路を押し広げられると、快楽を上回る圧迫感で呼吸をすることすら難しい。
 点滅する視界の中、途切れ途切れに映る環が俺の髪を撫で付ける。汗ばんだ額から頬へ下った環の手に頬ずりをすれば、体を支配する痛みが和らいだ気がした。

「大丈夫だよ、大丈夫」
「ふっ、ぅ”、んんっ」
「大丈夫だからね」

 そう言って俺の頬を撫でる環の表情は、落ち着いた言葉に反して余裕がない。眉間に皺を刻み熱い吐息を零しながらも、俺の体を気遣って動きを止めるその姿が嬉しくもありもどかしくもある。

「環っ」
「痛い? やめる?」
「やめんなぁっ。……もっと、入れていいから」
 
 環に絡めた脚で引き寄せると、ミチミチと音を立てて沈みこんだ。あまりの苦しさに、くはっ、と息を吐くと環の体が止まる。

「あざみ、無理しないで」
「し、てない゛っ」
「でも、」
「たまきぃ……」
「あー、もう……」

 俺の腰を抱えなおした環が、身を沈める。臓器を押しつぶしながら、環の性器が深くまで入ってくるのが分かった。熱く滾ったそれが侵入を許したことのない領域まで届き、圧迫感に目を見開く。

「ぃ、ぁっ……」
「あざみ、」

 肌と肌が触れ合う。その感覚から、ようやく全てを受け入れたのだと分かった。体の中心から引き裂かれるような痛みはあるが、それ以上に1つになれたことに対する喜びで頬が緩む。

「たまきぃ」
「ん?」
「手ぇ、握ってほし、」
「うん」

 伸ばした手はすぐに絡めとられた。シーツに押し付けられると、ゆるゆると腰が動き始める。カリの凹凸で内壁を擦られると、身を悶えるような激痛の間に快感が生じ始めた。覚えたばかりの快楽を体が必死に掬いとり、短く声が漏れる。
 互いに余裕など遠くの昔になくなっている。そのはずなのに、息を荒げながらも本能のままに動かない環に愛おしさが込み上がる。それが友情からくるものだったとしても。

 今、環の視界にいるのは俺だけだ。俺が環でいっぱいになっているように、環だって俺のことでいっぱいになっているはずだ。他の誰でもない、この俺で。

「環」
「うん?」
「好きに動いていいよ」

 好きに動いて、気持ちよくなって、その体と記憶に俺と言う存在を刻みつけたい。好きになってくれだとか、付き合ってほしいだとか、そんな贅沢なことは言わない。ただ、俺のことを忘れないでいてくれるだけでいい。そういう気分じゃなくなって、俺への興味がなくなっても、忘れないでいてほしい。
 環の中に俺を刷り込んで、ふとした瞬間に思い出してくれれば、この間違った行為も正しくなるから。
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