48 / 65
勿忘草
6※
しおりを挟む
顔を背けたくなるような水音が鼓膜を揺らす。室内に響くものと自分の体内から奏でられるそれは、身体をよじらせるだけで音を上げ、行為を自覚させるのだ。
「あざみ、辛くない?」
環が身をかがませたことで穿つ角度が変わり、返事の代わりに低い唸り声が出た。中を掻き回していた指とは違う圧倒的な質量に狭路を押し広げられると、快楽を上回る圧迫感で呼吸をすることすら難しい。
点滅する視界の中、途切れ途切れに映る環が俺の髪を撫で付ける。汗ばんだ額から頬へ下った環の手に頬ずりをすれば、体を支配する痛みが和らいだ気がした。
「大丈夫だよ、大丈夫」
「ふっ、ぅ”、んんっ」
「大丈夫だからね」
そう言って俺の頬を撫でる環の表情は、落ち着いた言葉に反して余裕がない。眉間に皺を刻み熱い吐息を零しながらも、俺の体を気遣って動きを止めるその姿が嬉しくもありもどかしくもある。
「環っ」
「痛い? やめる?」
「やめんなぁっ。……もっと、入れていいから」
環に絡めた脚で引き寄せると、ミチミチと音を立てて沈みこんだ。あまりの苦しさに、くはっ、と息を吐くと環の体が止まる。
「あざみ、無理しないで」
「し、てない゛っ」
「でも、」
「たまきぃ……」
「あー、もう……」
俺の腰を抱えなおした環が、身を沈める。臓器を押しつぶしながら、環の性器が深くまで入ってくるのが分かった。熱く滾ったそれが侵入を許したことのない領域まで届き、圧迫感に目を見開く。
「ぃ、ぁっ……」
「あざみ、」
肌と肌が触れ合う。その感覚から、ようやく全てを受け入れたのだと分かった。体の中心から引き裂かれるような痛みはあるが、それ以上に1つになれたことに対する喜びで頬が緩む。
「たまきぃ」
「ん?」
「手ぇ、握ってほし、」
「うん」
伸ばした手はすぐに絡めとられた。シーツに押し付けられると、ゆるゆると腰が動き始める。カリの凹凸で内壁を擦られると、身を悶えるような激痛の間に快感が生じ始めた。覚えたばかりの快楽を体が必死に掬いとり、短く声が漏れる。
互いに余裕など遠くの昔になくなっている。そのはずなのに、息を荒げながらも本能のままに動かない環に愛おしさが込み上がる。それが友情からくるものだったとしても。
今、環の視界にいるのは俺だけだ。俺が環でいっぱいになっているように、環だって俺のことでいっぱいになっているはずだ。他の誰でもない、この俺で。
「環」
「うん?」
「好きに動いていいよ」
好きに動いて、気持ちよくなって、その体と記憶に俺と言う存在を刻みつけたい。好きになってくれだとか、付き合ってほしいだとか、そんな贅沢なことは言わない。ただ、俺のことを忘れないでいてくれるだけでいい。そういう気分じゃなくなって、俺への興味がなくなっても、忘れないでいてほしい。
環の中に俺を刷り込んで、ふとした瞬間に思い出してくれれば、この間違った行為も正しくなるから。
「あざみ、辛くない?」
環が身をかがませたことで穿つ角度が変わり、返事の代わりに低い唸り声が出た。中を掻き回していた指とは違う圧倒的な質量に狭路を押し広げられると、快楽を上回る圧迫感で呼吸をすることすら難しい。
点滅する視界の中、途切れ途切れに映る環が俺の髪を撫で付ける。汗ばんだ額から頬へ下った環の手に頬ずりをすれば、体を支配する痛みが和らいだ気がした。
「大丈夫だよ、大丈夫」
「ふっ、ぅ”、んんっ」
「大丈夫だからね」
そう言って俺の頬を撫でる環の表情は、落ち着いた言葉に反して余裕がない。眉間に皺を刻み熱い吐息を零しながらも、俺の体を気遣って動きを止めるその姿が嬉しくもありもどかしくもある。
「環っ」
「痛い? やめる?」
「やめんなぁっ。……もっと、入れていいから」
環に絡めた脚で引き寄せると、ミチミチと音を立てて沈みこんだ。あまりの苦しさに、くはっ、と息を吐くと環の体が止まる。
「あざみ、無理しないで」
「し、てない゛っ」
「でも、」
「たまきぃ……」
「あー、もう……」
俺の腰を抱えなおした環が、身を沈める。臓器を押しつぶしながら、環の性器が深くまで入ってくるのが分かった。熱く滾ったそれが侵入を許したことのない領域まで届き、圧迫感に目を見開く。
「ぃ、ぁっ……」
「あざみ、」
肌と肌が触れ合う。その感覚から、ようやく全てを受け入れたのだと分かった。体の中心から引き裂かれるような痛みはあるが、それ以上に1つになれたことに対する喜びで頬が緩む。
「たまきぃ」
「ん?」
「手ぇ、握ってほし、」
「うん」
伸ばした手はすぐに絡めとられた。シーツに押し付けられると、ゆるゆると腰が動き始める。カリの凹凸で内壁を擦られると、身を悶えるような激痛の間に快感が生じ始めた。覚えたばかりの快楽を体が必死に掬いとり、短く声が漏れる。
互いに余裕など遠くの昔になくなっている。そのはずなのに、息を荒げながらも本能のままに動かない環に愛おしさが込み上がる。それが友情からくるものだったとしても。
今、環の視界にいるのは俺だけだ。俺が環でいっぱいになっているように、環だって俺のことでいっぱいになっているはずだ。他の誰でもない、この俺で。
「環」
「うん?」
「好きに動いていいよ」
好きに動いて、気持ちよくなって、その体と記憶に俺と言う存在を刻みつけたい。好きになってくれだとか、付き合ってほしいだとか、そんな贅沢なことは言わない。ただ、俺のことを忘れないでいてくれるだけでいい。そういう気分じゃなくなって、俺への興味がなくなっても、忘れないでいてほしい。
環の中に俺を刷り込んで、ふとした瞬間に思い出してくれれば、この間違った行為も正しくなるから。
10
あなたにおすすめの小説
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
【全10作】BLショートショート・短編集
雨樋雫
BL
文字数が少なめのちょこっとしたストーリーはこちらにまとめることにしました。
1話完結のショートショートです。
あからさまなものはありませんが、若干の性的な関係を示唆する表現も含まれます。予めご理解お願いします。
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。
誉コウ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。
その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。
胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。
それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。
運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
先輩のことが好きなのに、
未希かずは(Miki)
BL
生徒会長・鷹取要(たかとりかなめ)に憧れる上川陽汰(かみかわはるた)。密かに募る想いが通じて無事、恋人に。二人だけの秘密の恋は甘くて幸せ。だけど、少しずつ要との距離が開いていく。
何で? 先輩は僕のこと嫌いになったの?
切なさと純粋さが交錯する、青春の恋物語。
《美形✕平凡》のすれ違いの恋になります。
要(高3)生徒会長。スパダリだけど……。
陽汰(高2)書記。泣き虫だけど一生懸命。
夏目秋良(高2)副会長。陽汰の幼馴染。
5/30日に少しだけ順番を変えたりしました。内容は変わっていませんが、読み途中の方にはご迷惑をおかけしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる