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チューリップ
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初めて体を重ねた日のことは、よく覚えていない。自分が望んだとはいえ、十分な時間を費やしていなかった行為は引き裂かれるような痛みを伴ったが、それでも互いに指を絡ませ名前を呼び合いながらするセックスは気持ちがよかった。切羽詰まったような吐息とその狭間で紡がれる自身の名前を吹き込まれるたび、好きな人が自分で興奮していることを確認できて優越感すらも覚えていた。翌朝目覚めたときに走った痛みや違和感も、その証左だと思えば心地が良かった。
その日を境に、幼馴染という関係は無くなってしまったのだと思う。いや、そんなもの遠の昔に壊れてしまっていたのかもしれない。環への好意を自覚したあの日から。
「あざみ、ここ好き?」
腰を掴んだ環が奥の窄まりに分身を押し付ける。すっかり慣れた体はその刺激から痛みを拾うことはなくなり、代わりに身が悶えるような快感を齎す。枕に押し付けた口元からくぐもった声が漏れるのもお構いなしに、再びぐりぐりと穿たれるのだ。
「ねぇ、気持ちいい? 教えてあざみ」
背後から顎を掬われ、指先が唇を割り入る。舌根から扱かれると声を抑える方法は奪われ、鼻にかかった声が零れる。見慣れた部屋の窓の外からは、学校帰りの小学生のはしゃいだ声が聞こえてくる。無邪気な声と、己が出す声の淫蕩さに思考はぐちゃぐちゃと乱され、そのアンバランスさに体が昂った。
「ねぇ、教えて?」
身を屈めた環に高く上げていた下半身を押しつぶされ、ベッドの上にくたりと寝そべる。その間も回すように動く腰に1点を刺激され、開かされた口から嬌声が漏れた。変わった角度が齎す新たな快感に慣れる間もなく体重をかけられ、より深くを穿たれる。高く上がる声を押し殺そうと引き寄せた枕は取り上げられ、耳に名前を吹き込み教えてと強請られる。
「きもちっ、きもひぃからぁっ」
「本当?」
「ゃぁあっ、ひ、んぅっ」
「ん、気持ちいね」
俺の様子を窺うように動いていた腰が次第に激しさを増す。ぐちゅぐちゅと耳を背けたくなるような水音を立てながら肌が触れ合うたびに乾いた音が響いた。突かれると性器がシーツに擦れ、不規則な快楽に体が痙攣する。くにくにと舌を潰す環の指へ配慮する余裕もなくなり、歯を立てると薄らと鉄の味が広がった。
「はっ、あざみ……」
「ふゔぅ、ん゛っ、」
名前を呼ばれるだけで、いとも簡単に絶頂へと押し上げられる。追い打ちをかけるように速くなる律動に高められた体は、あっと言う間に達し痙攣を始めた。心地のいい倦怠感に余韻を感じる暇なく突き上げられれば、敏感になった中はより深い快感を求める。
きつく体を抱きしめられたまま、ベッドに押し付けられ、身動きの取れなくなった体に掠れた名前が落ちる。それに答えようと開いた口からは、壊れたように喘ぎ声しか出てこない。断続的な声の合間で名前を紡ぎ、肩越しに振り返れば、切なげに顔を歪めた環と目があった。
「あざみ……」
「あっ、ん、……った、まきぃ」
「んっ、……あざみ、きもち?」
「きもちっ、きもちぃ」
気持ちいい? 痛くない? そう言って、行為中の環は何度も確かめる。挿入前もしつこい程中を解し、許容量を超えた快感に頭がおかしくなり強請る俺にもう少しだけと指を動かすのだ。固く張り詰めた怒張と、行為中にのみ見せる据わった瞳から余裕のなさは見てとれるのに、それでも無理に行為を進めることはない。
そんな気遣いが嬉しくて、辛かった。
「あ、ざみっ、ぅっ……」
どくりと中で跳ねた環から精が溢れた。短く吐き出される吐息と、隙間なく触れ合う体の熱さに遅れて2度目の絶頂を迎える。
体を重ねたまま荒い呼吸が交わり溶ける。しばらく、そうして見つめ合っていた。
「あざみ、気持ちよかった?」
「うん」
「ん」
良かった。そう言ってずるりと出ていった環に寂しさを覚える。空気が澄みきった真冬だというのに、汗で額に張り付いた前髪を掻き分ける指先でさえ、微かな刺激となり吐息を漏らすと喉を鳴らすように笑われる。誤魔化すように体を起こせば、体を支えられる。その指先にくっきりとついた歯跡に視線を落とした。
「指、ごめん」
「いーよ。気持ちよかったね」
俯いた頬に手を添えられ、気付かぬうちに流していた生理的な涙を拭われた。
あの日から体を重ねるようになった。環から誘われることもあれば、俺から誘うこともある。俺から声をかけるのは、環から求められなくなり不安を感じたときで、環から断れないことに、飽きられていないことに安堵したいときだ。
今日もそうだった。「ゲームしよう」が合言葉だ。帰り道、電車に揺られながら伝えるときは、いつも体が強張る。断れたらどうしよう、と。
幸い、まだ断られたことはない。それに胸をなでおろす一方で、行為中の環に憂思が芽生えるようになった。
行為中の環はひどく優しい。いつだって俺の体を慮り、何度も名前を呼ぶ。まるで恋人にするかのような対応に、頭は無意識に愚かな妄想を組み立てる。もしかしたら、自分と同じ気持ちなのではないかと。告白したら、受け入れてもらえるのではないかと。
しかし、それを打ち砕くように、体を重ねた翌日の環は冷たい態度を取るのだ。それが、勘違いをするなと言われているかのようで、男のことを好きになることはないと現実を突きつけられ、心が沈みこむ。それでも、この関係から抜け出せずにいるのは、一重に環の興味をひくことを1つでも多く持っていたいからだ。
きっと、この関係は間違っている。それでも、このままでもいいと思ってしまう自分は、やはり愚かなのだろうか。
その日を境に、幼馴染という関係は無くなってしまったのだと思う。いや、そんなもの遠の昔に壊れてしまっていたのかもしれない。環への好意を自覚したあの日から。
「あざみ、ここ好き?」
腰を掴んだ環が奥の窄まりに分身を押し付ける。すっかり慣れた体はその刺激から痛みを拾うことはなくなり、代わりに身が悶えるような快感を齎す。枕に押し付けた口元からくぐもった声が漏れるのもお構いなしに、再びぐりぐりと穿たれるのだ。
「ねぇ、気持ちいい? 教えてあざみ」
背後から顎を掬われ、指先が唇を割り入る。舌根から扱かれると声を抑える方法は奪われ、鼻にかかった声が零れる。見慣れた部屋の窓の外からは、学校帰りの小学生のはしゃいだ声が聞こえてくる。無邪気な声と、己が出す声の淫蕩さに思考はぐちゃぐちゃと乱され、そのアンバランスさに体が昂った。
「ねぇ、教えて?」
身を屈めた環に高く上げていた下半身を押しつぶされ、ベッドの上にくたりと寝そべる。その間も回すように動く腰に1点を刺激され、開かされた口から嬌声が漏れた。変わった角度が齎す新たな快感に慣れる間もなく体重をかけられ、より深くを穿たれる。高く上がる声を押し殺そうと引き寄せた枕は取り上げられ、耳に名前を吹き込み教えてと強請られる。
「きもちっ、きもひぃからぁっ」
「本当?」
「ゃぁあっ、ひ、んぅっ」
「ん、気持ちいね」
俺の様子を窺うように動いていた腰が次第に激しさを増す。ぐちゅぐちゅと耳を背けたくなるような水音を立てながら肌が触れ合うたびに乾いた音が響いた。突かれると性器がシーツに擦れ、不規則な快楽に体が痙攣する。くにくにと舌を潰す環の指へ配慮する余裕もなくなり、歯を立てると薄らと鉄の味が広がった。
「はっ、あざみ……」
「ふゔぅ、ん゛っ、」
名前を呼ばれるだけで、いとも簡単に絶頂へと押し上げられる。追い打ちをかけるように速くなる律動に高められた体は、あっと言う間に達し痙攣を始めた。心地のいい倦怠感に余韻を感じる暇なく突き上げられれば、敏感になった中はより深い快感を求める。
きつく体を抱きしめられたまま、ベッドに押し付けられ、身動きの取れなくなった体に掠れた名前が落ちる。それに答えようと開いた口からは、壊れたように喘ぎ声しか出てこない。断続的な声の合間で名前を紡ぎ、肩越しに振り返れば、切なげに顔を歪めた環と目があった。
「あざみ……」
「あっ、ん、……った、まきぃ」
「んっ、……あざみ、きもち?」
「きもちっ、きもちぃ」
気持ちいい? 痛くない? そう言って、行為中の環は何度も確かめる。挿入前もしつこい程中を解し、許容量を超えた快感に頭がおかしくなり強請る俺にもう少しだけと指を動かすのだ。固く張り詰めた怒張と、行為中にのみ見せる据わった瞳から余裕のなさは見てとれるのに、それでも無理に行為を進めることはない。
そんな気遣いが嬉しくて、辛かった。
「あ、ざみっ、ぅっ……」
どくりと中で跳ねた環から精が溢れた。短く吐き出される吐息と、隙間なく触れ合う体の熱さに遅れて2度目の絶頂を迎える。
体を重ねたまま荒い呼吸が交わり溶ける。しばらく、そうして見つめ合っていた。
「あざみ、気持ちよかった?」
「うん」
「ん」
良かった。そう言ってずるりと出ていった環に寂しさを覚える。空気が澄みきった真冬だというのに、汗で額に張り付いた前髪を掻き分ける指先でさえ、微かな刺激となり吐息を漏らすと喉を鳴らすように笑われる。誤魔化すように体を起こせば、体を支えられる。その指先にくっきりとついた歯跡に視線を落とした。
「指、ごめん」
「いーよ。気持ちよかったね」
俯いた頬に手を添えられ、気付かぬうちに流していた生理的な涙を拭われた。
あの日から体を重ねるようになった。環から誘われることもあれば、俺から誘うこともある。俺から声をかけるのは、環から求められなくなり不安を感じたときで、環から断れないことに、飽きられていないことに安堵したいときだ。
今日もそうだった。「ゲームしよう」が合言葉だ。帰り道、電車に揺られながら伝えるときは、いつも体が強張る。断れたらどうしよう、と。
幸い、まだ断られたことはない。それに胸をなでおろす一方で、行為中の環に憂思が芽生えるようになった。
行為中の環はひどく優しい。いつだって俺の体を慮り、何度も名前を呼ぶ。まるで恋人にするかのような対応に、頭は無意識に愚かな妄想を組み立てる。もしかしたら、自分と同じ気持ちなのではないかと。告白したら、受け入れてもらえるのではないかと。
しかし、それを打ち砕くように、体を重ねた翌日の環は冷たい態度を取るのだ。それが、勘違いをするなと言われているかのようで、男のことを好きになることはないと現実を突きつけられ、心が沈みこむ。それでも、この関係から抜け出せずにいるのは、一重に環の興味をひくことを1つでも多く持っていたいからだ。
きっと、この関係は間違っている。それでも、このままでもいいと思ってしまう自分は、やはり愚かなのだろうか。
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