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第一章
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しおりを挟む言えない事が多すぎて話しにならない。
迂闊に喋るんじゃなかった。浅慮な自分が嫌になる。
しかしローゼンガルドの事を知るには目の前にいるこの人しか今のところ頼れる人がいない。
素直に聞けば教えてくれるだろうか。
でも、自国の情報を怪しい人間に漏洩する王子様なんているはずないわよね………。
アンリ様は私の言葉の続きを待っているのだろうか。【言えない】と言う私にそれ以上何も聞いては来ないが、じっと私を見つめている。
「怪しいですよね…何も言えないなんて。でもあなたに危害を加えようとか、そんなつもりはないんです……。」
「わかっています。さっき………苦しむ私を助けてくれたのでしょう?とても心地好い力が私を慈しむように癒してくれた。だからあなたが悪人だとは思えない。」
アンリ様……。
そうだ。この人はこういう人だった。
もう忘れかけていたけど最初の頃は何も喋らない私に根気強く語り掛けてくれていた。
【エルフィリア、いつも何をして過ごしてるの?】
【エルフィリア、御菓子は好きかい?】
【エルフィリア、どんな本が好き?】
アンリ王子を救う事以外の接触を禁じられていた私は何も答える事は出来なかった。監視の衛兵を気にする私の目線でそれに気付いたのか、それからは魔力を渡す口付けの前後、距離が近付き誰にも聞かれないその時だけ
【エルフィリア…今日もありがとう。何か困った事はないかい?足りないものは?大丈夫、今なら誰も聞いていないよ。】
私の目を見つめてそう言ってくれるようになった。しかしそれも…何も答えない私に辟易したのかそのうちに何も言わなくなったけど……。
思いきってお願いしてみようか…この国の事を教えて欲しいと。そして返答次第ではその先の事も………。
「私は……この国の事を知りたいんです。訳はまだ話せません。先ほども言いましたが危害を加えるつもりもない。だから………」
「いいですよ。」
「えっ!?」
やけにあっさりOKしてくれた。あ、怪しい。
「本当に!?」
驚く私の顔がよほど面白かったのかアンリ様は笑う。
「ええ。まずは何が知りたいの?」
まずは………何から?
一番聞きたいのは十二年前の事よ。
でもいきなり核心ついてもいいのかしら。
当たり障りのない会話から徐々にの方が色々と怪しまれないんじゃ……。ええい、ままよ!
「あの……ローゼンガルドが他国との接触を絶つようになったのが十二年前だと聞きました。何故なのか聞いても…?」
私の言葉にアンリ様の顔付きが変わる。
やはり何か大きな出来事があったのは間違いない。教えてくれるだろうか………。
しばらく黙っていたアンリ様だったが、思い出すのが辛いのだろうか、苦しそうな面持ちで話し始めた。
「……ローゼンガルドがこうなってしまったのはすべて私のせいです………私さえ首を縦に振れば良かったのに………。」
アンリ様は少しうつむきがちに当時の事を話し始めた。
第一王子アンリがこの世に生を受けたその日、ローゼンガルドの民が信仰するサラマンドラを祀る大神殿に神からの御告げがあった。
その内容は
【近い未来にこの国を統べる男御子の伴侶となるべき者をこの世に送り出した。その者はいずれ聖女として覚醒し、男御子の支えとならん】
そして大神殿の神官達はアンリが七歳を迎えようという頃一人の少女を連れて王宮を訪れた。
少女は燃えるような赤い髪の持ち主だった。 その姿はまるでサラマンドラの化身のよう。
神官達は少女こそが御告げにあった聖女であると主張した。
しかし年々強大な力を持つようになった神殿との婚姻に、王家からは反対の声が出た。
何よりアンリ王子が少女を強く拒否したのだ。
そして悲劇は起きる。
七歳を迎えたアンリ王子は胸を押さえて倒れた。原因はわからない。日に日に弱る身体。
神官達はこれ幸いとばかりに急き立てる。
【王子を助けられるのは聖女しかいない】
【国の未来を潰すつもりか】
「………それでもどうしても嫌だったんです。あの女性……ファルサを妃に迎えるのが……。」
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