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第三章
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しおりを挟む「ローゼンガルド!?今、ローゼンガルドって言いましたか!?」
ノエリアは悲しそうな瞳でエルフィリアを真っ直ぐ見つめている。
ノエリア様の身体の中には精霊の血が流れている。と言うことはその妹であるミレーヌ様の身体にも……。
ミレーヌ様はローゼンガルドへ行った……そしてアンリ様の身体の中には精霊の血が流れているとサニーが………。
「…まさか……!!」
【……あなたがあの子を連れて帰って来た時…すぐにわかったわ……。ミレーヌと同じ匂い…同じ気の流れ……間違い無い。あなたの大切な人はミレーヌの子よ。】
「アンリ様のお母様が…ノエリア様の妹…。」
だから…だからアンリ様の命を繋ぐ事が出来たのだ。魔法が使えたのも元々ローゼンガルドの人間ではなかったから…。
「ノエリア様……ミレーヌ様は何故この美しいアテルナを捨ててローゼンガルドへ?」
【愛する人が出来てしまったの……。ローゼンガルドの第一王子アルベリク……あなたの大切な人の父親よ……。】
「アンリ様のお父様を愛して…国を…アテルナを捨てた……。」
でも何故?王族同士なら祝福されて結ばれる事が出来たはず。それなのになぜミレーヌ様はアテルナを捨てなければならなかったのだろう。
【アルベリクはシャグランの民に目を付けられていたの。】
「シャグランの民に!?」
【……シャグランの民は忌み嫌われる存在。それ故に陽のあたる場所で生きる事を許されない。けれどそれでも彼らは憧れた……陽のあたる場所での暮らし。それが例え極寒の地ローゼンガルドでも……。】
「そんな……じゃあシャグランの民はローゼンガルドが欲しくてアルベリク様を?」
【……それ…だけじゃな…………ナ……が……】
「ノエリア様!?」
ノエリア様の身体が消えて行く。
きっとまだ回復しない身体で無理に出て来てくれたからだ。
【……気……付け……奴ら………あな……狙……】
「ノエリア様!!」
そしてノエリアは姿を消した。
そこでエルフィリアの意識も途切れたのだった。
***
……頭が重い……身体も。
目を開けたいのに自分の意思で開く事が出来ない。でも自分が何か柔らかなものの上にいて、とても温かいのはわかる。
(……私……どうしちゃったんだろう……)
こんな事、生まれて初めてだ。
魔法の修行中だってこんな状態になった事はなかったのに。
(……とりあえず生きてるのか死んでるのか、それだけは知りたいわ……。)
ちゅっ
(……ちゅっ……?)
何だ今の音。
瞼が重すぎて見る事は叶わないのだが、さっきからこの“ちゅっちゅっ”という音はずっと聞こえている。
感覚を研ぎ澄まそうと意識を集中すると、どうやら音は私のこの重くだるい身体の表面から聞こえているようだ。何となく何かが触れている感じも少しわかる。
(……でも何?………んぅ……!?)
今度は柔らかくてぬるぬるしたものがお口の中を探り出した。
私……死にかけてるんですけど……これは一体どういう状況?しかもすっごく舌が絡められてるんですが……
唾液が溶け合うまでそれは続き、離れた。
「……エルフィリア……“もういい”なんて言わないで……いや、そんな悲しい言葉を言わせたのは私のせいだよね……本当にごめん……」
(この声……アンリ様……)
何だかとても久し振りに聞くような気がしてしまう。
唇を離してアンリ様は囁く。まるで自分に言い聞かせるように。
「でも嫌だったんじゃないんだ……あの時何も言えなくなってしまったのはね、私の命があなたを助けられるって聞いて、耳を疑うほどびっくりしてしまったからなんだ……私にもあなたにしてあげられる事があるなんて思わなかったんだよ……」
アンリ様…声が震えてる……。泣いてるの?
私…大丈夫よ…。確かにあの時はちょっと暗い気持ちになっちゃったけど…ちゃんと知ってる。アンリ様がどれくらい私の事を大切に想ってくれているか。
「でももう待たせない……」
ん?待たせない?
「ちゃんとお父上にも許して貰ったから何も心配いらないよ……」
お父様に?何を許して貰ったの?
「本当はエルフィリアの意識のある時にしたかったけど……」
アンリ様、さっぱりわからないわ。
それに私、一応意識はあるのよ。
“ちゅっちゅっ”は首筋に、そして胸に落ちた。さっきギャレットの前でして見せたような胸元でストップするやつじゃない。
む、胸!!直に!!お胸に!!
………ちょ、ちょっと待ってーーー!!!
あまりの事にパッカーンと音がしそうな勢いで目を開けるとそこには……裸のアンリ様がいた。
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