侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中

文字の大きさ
2 / 125
第一章

1 公爵家の息子 ハニエル

しおりを挟む





    目が覚めるとベッドに一人だった。
    痛む身体を無理矢理起こし、自分の身体を確認する。
    身体中につけられた紅い痕。
    シーツに付着した破瓜の印が目に入ると再び絶望に襲われる。
    それにしても彼はどこへ行ったのだろう。
    戻ってきてしまったらまた……
    ゾワリと悪寒が走る。
    (逃げなきゃ…何とかして侯爵邸まで帰らなければ。)
    ここにいたらきっと家に帰してもらう事などできないだろう。けれど昨日着ていたドレスは無理矢理脱がされた時に抵抗したせいであちこちが引きちぎられている。そしてどこに落としてしまったのか履いていた靴も見当たらない。仕方なく破れたドレスの上にシーツを巻き付け部屋を出ることにした。
    (廊下から出れば見つかってしまう…)
    幸いな事にここは一階だ。城の庭園へと続く大きな窓から音を立てないように外へ出た。

    裸足で駆けるたび柔い足の裏が擦れて痛む。
    (屋敷までどうやって帰ろう…。)
    門番にルーベル殿下から私を城から出すなと言伝が行っていたら…。

    「痛っ!」

    小石でも踏んだのか痛む足の裏を見ると切れて血が滲み出てきた。
    (どうしよう。これじゃ見つけてくれと言っているようなものだわ。)
    滲む血は石畳に跡を残してしまう。とりあえず血を止めるため、近くの茂みの影へと移動した。    
    (困ったわ…血が止まらない…。)
    圧迫するも血はなかなか止まってくれず、患部にあてたシーツを赤く染めていく。
    早くしなければ私が部屋にいないことに気付かれてしまう。
    (どうしよう…誰か…誰か助けて……!!)

    「アマリール!?」

    その時だった。頭上から驚いた声が聞こえた。

    「どうしたのアマリール!?あぁ…こんなひどい怪我をして…!!」

    「……ハニエル様……」

    ふわふわとした金色の髪に湖面のような美しいエメラルドグリーンの瞳。
    ご自身よりも爵位の下の私を幼い頃から姉のように慕ってくれた可愛い方。

    「…ハニエル様、どうしてここに…?」

    ハニエル様のお父上は現皇帝アヴァロン陛下の弟君であらせられる。皇宮の奥に入る事も容易だろうけれどなぜ……?

    「怖い目に遭ったんだね。泣かないでアマリール。今僕が助けてあげるから!」

    ハニエル様はそう言うと私の姿を隠すようにシーツを目深に被らせた。

    「声を出しちゃダメだよ。」

    そしてまだ少年の面影が残る少し華奢な身体で軽々と私を持ち上げた。

    「ハニエル様!?」

    「しぃっ!いいから僕に任せて。」

    ハニエル様はどんどん道を進んで行く。
    (まさか…このまま城の者に引き渡されたりしないわよね……。)
    しかしハニエル様には私を助ける理由など何もない。胸は緊張で張り裂けそうなほど大きな音を立てた。
    しかし私の心配は杞憂だったようだ。ハニエル様は待たせていた公爵家の馬車に私と共に乗り込む。

    「さすがにその格好で帰す訳にも行かないし、何か大変な理由があるのなら君の家に追手が行くかも知れない。一先ず僕の屋敷で匿ってあげるから安心して?」

    「ハニエル様…でも……」

    相手はあのルーベル殿下だ。私のせいでハニエル様に迷惑をかける事になったら…。

    「大丈夫。アマリールは何も心配しないで。」

    ハニエル様は私を横抱きにして膝の上に乗せ、道中ずっと優しく頭を撫でてくれていた。
    (…あんなに小さかったハニエル様が…もうすっかり大人の男性の仲間入りね……)
    確か先日十六歳の成人の儀を終えられたはず。恐れ多くも弟のように接していた可愛い可愛いハニエル様。
    (いつの間にこんなに時が経っていたのかしら…。)
    ハニエル様の温かい胸に抱かれながら、私はいつしか眠りについていた。





    
    
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました

唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」 不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。 どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。 私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。 「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。 身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...