侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第一章

1 公爵家の息子 ハニエル

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    目が覚めるとベッドに一人だった。
    痛む身体を無理矢理起こし、自分の身体を確認する。
    身体中につけられた紅い痕。
    シーツに付着した破瓜の印が目に入ると再び絶望に襲われる。
    それにしても彼はどこへ行ったのだろう。
    戻ってきてしまったらまた……
    ゾワリと悪寒が走る。
    (逃げなきゃ…何とかして侯爵邸まで帰らなければ。)
    ここにいたらきっと家に帰してもらう事などできないだろう。けれど昨日着ていたドレスは無理矢理脱がされた時に抵抗したせいであちこちが引きちぎられている。そしてどこに落としてしまったのか履いていた靴も見当たらない。仕方なく破れたドレスの上にシーツを巻き付け部屋を出ることにした。
    (廊下から出れば見つかってしまう…)
    幸いな事にここは一階だ。城の庭園へと続く大きな窓から音を立てないように外へ出た。

    裸足で駆けるたび柔い足の裏が擦れて痛む。
    (屋敷までどうやって帰ろう…。)
    門番にルーベル殿下から私を城から出すなと言伝が行っていたら…。

    「痛っ!」

    小石でも踏んだのか痛む足の裏を見ると切れて血が滲み出てきた。
    (どうしよう。これじゃ見つけてくれと言っているようなものだわ。)
    滲む血は石畳に跡を残してしまう。とりあえず血を止めるため、近くの茂みの影へと移動した。    
    (困ったわ…血が止まらない…。)
    圧迫するも血はなかなか止まってくれず、患部にあてたシーツを赤く染めていく。
    早くしなければ私が部屋にいないことに気付かれてしまう。
    (どうしよう…誰か…誰か助けて……!!)

    「アマリール!?」

    その時だった。頭上から驚いた声が聞こえた。

    「どうしたのアマリール!?あぁ…こんなひどい怪我をして…!!」

    「……ハニエル様……」

    ふわふわとした金色の髪に湖面のような美しいエメラルドグリーンの瞳。
    ご自身よりも爵位の下の私を幼い頃から姉のように慕ってくれた可愛い方。

    「…ハニエル様、どうしてここに…?」

    ハニエル様のお父上は現皇帝アヴァロン陛下の弟君であらせられる。皇宮の奥に入る事も容易だろうけれどなぜ……?

    「怖い目に遭ったんだね。泣かないでアマリール。今僕が助けてあげるから!」

    ハニエル様はそう言うと私の姿を隠すようにシーツを目深に被らせた。

    「声を出しちゃダメだよ。」

    そしてまだ少年の面影が残る少し華奢な身体で軽々と私を持ち上げた。

    「ハニエル様!?」

    「しぃっ!いいから僕に任せて。」

    ハニエル様はどんどん道を進んで行く。
    (まさか…このまま城の者に引き渡されたりしないわよね……。)
    しかしハニエル様には私を助ける理由など何もない。胸は緊張で張り裂けそうなほど大きな音を立てた。
    しかし私の心配は杞憂だったようだ。ハニエル様は待たせていた公爵家の馬車に私と共に乗り込む。

    「さすがにその格好で帰す訳にも行かないし、何か大変な理由があるのなら君の家に追手が行くかも知れない。一先ず僕の屋敷で匿ってあげるから安心して?」

    「ハニエル様…でも……」

    相手はあのルーベル殿下だ。私のせいでハニエル様に迷惑をかける事になったら…。

    「大丈夫。アマリールは何も心配しないで。」

    ハニエル様は私を横抱きにして膝の上に乗せ、道中ずっと優しく頭を撫でてくれていた。
    (…あんなに小さかったハニエル様が…もうすっかり大人の男性の仲間入りね……)
    確か先日十六歳の成人の儀を終えられたはず。恐れ多くも弟のように接していた可愛い可愛いハニエル様。
    (いつの間にこんなに時が経っていたのかしら…。)
    ハニエル様の温かい胸に抱かれながら、私はいつしか眠りについていた。





    
    
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