侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第一章

7 惑う

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    「ハニエルを牢から出せ。今回の事は不問にする。」

    ルーベル殿下はすぐに約束を守ってくれた。
    父も拘束などはされておらず、無事侯爵邸に帰して貰えた。

    「お前は今日からここで暮らす…いいな?」

    「はい…仰せのままに…。」

    “誓い”とはこの命が終わるまで永遠のもの。
    生涯この人を愛さなければ……あれ……?

    ……愛す?

     【誓え。生涯私だけを愛すると。ハニエルとはもう会わないと。】

    さっき…確かにそう言った。
    “ハニエル様と会うな”まではわかる。皇太子妃が公爵家の嫡男と密会だなんて知れたら社交界を賑わす大スキャンダルだ。でも“生涯私だけを愛する”ってどうして…?
    彼は父親の命令で私と婚姻を結んだだけで…愛するのはローザ様だけだったはず…なのになぜそんな事を言ったのだろう。

    「行くぞ。」

    「きゃっっ!!」

    彼はいきなり私を横抱きにして歩きだした。

    「で、殿下!一人で歩けます!」

    「うるさい。黙っていろ。」

    苛々した様子で私を一瞥し、また視線を前へ戻す。
    (…まさか…私の足を気遣って…?)
    そんなはずはない。お腹の子を失った時でさえ一度も見舞ってくれなかったような人だ…。
    期待なんかしちゃいけない。期待したらしただけまた自分が傷付くのよ。前世で何度も経験したじゃないの…。
    これから一生心を空っぽにしたまま彼の言う通り生きていればいい。そうすれば誰も悲しい思いをせずに済む。ハニエル様はシャロン様と愛し合い子を二人も成す。クローネ侯爵家も皇家との繋がりのお陰でこの先領地経営も順風満帆。
    …そうか…最初から私がこの人の言う事を聞いていれば良かっただけの話なのだ。私が足掻けば足掻くほど皆に迷惑をかけるだけで…。
    そう思ったら何かストンと腑に落ちた。
    強張った身体から力が抜けたのがわかったのかルーベル殿下は少しだけ不思議そうな顔をした。
    諦めるという事は難しそうで簡単だ。ただ執着を手放せばいいだけなのだ。私が何も欲しがらず、あるがままを受け入れるだけで皆が幸せになれる。素晴らしい事だわ…。

    乱暴に投げられるかと思ったが、意外にも彼は優しく私をベッドの上に下ろした。そして私を見つめたまま微動だにしない。
    (…どうしたのかしら…この前みたいに乱暴にしないのかしら…あ…そうか確か前世では…)

     【脱げよ。】   

    そうか…。脱がすのも面倒だと言っていた。
    でも今はあの時着ていた夜着と違う。一人で脱ぐのは少し大変だ。

    「…少しだけお待ち下さい…今脱ぎますから…」

    そう言ってドレスに手を掛けると殿下の眉間の皺は更に深くなった。

    「なぜそんな事をお前がする?」

    「…え?」

    彼はおもむろに私の背中に手を伸ばし、スルスルと紐を解いていく。前回は無理矢理引きちぎっていたのに。
    紐がベッドの上に落ちると同時に背中がひんやりとする。けれど彼が露になった私の背を見ているのだと思うと恥ずかしくて顔は火を噴いたように熱くなった。
    
    「…美しいな……。」

    大きく骨張った手が背中を滑り落ちる。
    肌はゾワリと粟立ち、思わず両腕で身体を守るようにして抱いた。
    彼は後ろから私のうなじに口付け、私の両腕に自身の両腕を重ねるようにして抱いた。驚いて顔だけ振り向くと、金色の瞳と目が合う。
    こんなのおかしい。こんなのは彼じゃない。
    頭の中で激しく警鐘が鳴る。

    「アマリール…。」

    そして彼は私の名を呼んで口付けた。

    

     ***



    服をすべて脱がされた後、四つん這いにさせられ後ろから一気に貫かれた瞬間涙が出た。やっぱり優しくなんてして貰えないんだ。どこまでも甘く優しいハニエル様との情事を知ってしまった後だったから、余計に心は痛んで辛かった。
    けれどシーツに顔を押し付け見えないように泣く私に気付いた彼は動きを止めた。
    (……?)
    何か気に入らなかったのだろうか。これ以上酷くされてしまうのだろうか。怖い…痛いよ…ハニエル様…ハニエル様……!!

    「…なぜ泣く?」

    この人は何を言っているのだろう。
    こんなに酷く痛くされて泣かない女などいないだろうに。

    「…こうすれば女は悦ぶものだと…そう教わった。」

    教わった?閨の指導での事を言っているのだろうか。けれど閨の指導ならば細かく教えて貰うだろう。特に殿方は実践込みだ。 噂でしか聞かないが、女性を蕩けさせるための前戯から、終わった後の作法まで。 

    「それは…書物で終わらせた…。」

    「書物で…?では殿下はもしかして…」

    「…触れたのはお前が初めてだ。まさか逃げられるほど嫌だったとは思わなかったが……何だその顔は。」

    何だその顔はと言われても、驚いて口も聞けなかった。
    私が…初めて?でも確かにそう言った。触れるのは私が初めてだと。
    何故だろう…ローザ様の事は?二人は密かに愛し合っていたはず。今生でもローザ様の私への態度は前世とまるで変わらない。

    「殿下は…ローザ様と」

    「   ?     ローザが何だ?」

    これはどういう事なの?
    混乱する私を不思議そうに殿下は見つめている。だが後ろ向きの私の身体から自身を引き抜き彼は言った。


    「アマリール、お前が俺に教えてくれ。お前がどうすれば悦ぶのか。」

    

    
     
    
    
    





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