侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第一章

9 苺

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    「ルーベル殿下より“今回は不問に処す”との事でございます。公爵邸へは皇宮の馬車でお送り致しますのでご安心下さい。」

    よく見知った顔の皇太子の側近は事も無げにハニエルに告げた。

    「人を無理矢理牢に繋いでおいて随分な言い種だなゲイル…!」

    ゲイルと呼ばれた男はにこりとハニエルに微笑んだかと思うとモノクルの奥から鋭い眼光を放った。

    「今回あなた様は殿下の逆鱗に触れられたのです。五体満足でお帰りになれる事を幸運に思って下さいませんと…ねぇ?」

    「逆鱗だと!?アマリールが奴にとって何だと言うんだ!?何の関係もない!!」

    しかしゲイルは激昂するハニエルに取り合わず、騎士達に出口まで連れて行くよう命じた。

    「待て!!アマリールはどこだ!?」

    「ごきげんよう、ハニエル様。」

    ゲイルは踵を返した。



   *****





    「……んっ……ぁ…………」

    殿下との交わりが痛く辛かったのは、ただ乱暴なせいだけじゃなかった。

    「痛いのかアマリール?」

    きっとこれでは十分に濡れていたとしても痛かっただろう。あの時は絶望と混乱で頭がいっぱいだった。でも今なら殿下の形がはっきりとわかる。入り口にあてがわれた瞬間恐怖で身震いした。

    「…っ殿下ぁ……!大…き……っ……!!」

    どくどくと脈打つそれは華奢な女の手首ほどもあろうかというほどの質量を持ち、根元まで飲み込む頃には息をするのも苦しいほどだった。
    行為は無理矢理ではなかった。けれど蜜壺は無理矢理押し広げられて悲鳴をあげる。

    「こればかりは俺にもどうしようもない。だから…俺の形に馴染むまでずっとこうしていよう。」

    ずっと…こうして……?

    「もう一度抜くと挿入る時にまた痛むだろう?だから…お前が痛くなくなるまでこうしている。」

    何を言っているのだろうこの人は。こんな大きさいつまで経ったところで馴染むなどと到底思えない。その証拠にもうかなりの時間が経つが状態は変わらず辛いままだ。
    しかし殿下は本気だったようだ。

    「誰かいるか!?」

    私の上にいる彼が突然入り口の扉の方へ向かって叫んだ。

    「殿下、お呼びでございますか?」

    そしてすぐに侍女がやってきたのだが声のする方…つまり私達が繋がったままの状態のベッドへ視線を向けるなり口を押さえた。しかしさすが厳しい教育を修了した皇太子付きの侍女だ。真っ赤な顔をしてはいるが悲鳴は上げなかった。

    「何か飲み物を…幾つか酒も持て。あと手で食べられるものも。」

    侍女は顔を下に向けたまま“かしこまりました”とだけ言い、足早に部屋を出て行った。

    きっと彼女は見てしまっただろう。殿下の逞しい熱杭で穿たれている私の蜜壺を。私だけじゃない殿下だって……

    「顔が赤い…どうした?」

    「どうしたって…殿下…こんな姿を見られれば誰だって…」

    しかし彼は眉間に皺を寄せ、まったくわからないとでも言いたげだ。

    「お前はこんなに美しいのに何故恥ずかしがる必要がある?恥ずかしいのはお前の美しい身体を見たあの侍女の方だろう。」

    「…?殿下、仰る意味がわかりません。」

    「あの者はこの先湯殿や着替えで鏡を見るたびにお前の美しい身体と自分を比べて自己嫌悪に陥るだろうと言っている。」

    「…殿下…冗談はお止め下さい…。」

    「冗談ではない。ずっとそう思っていた…昔からずっとな……。」

    そう言いながら彼は私の首筋に顔を埋め悩ましい溜め息をついた。

    「…殿下?」

    「…辛いな…」

    腹の底から絞り出すような声で囁かれて腰に甘い痺れが走る。この体勢が辛いのだろうか。言われてみれば殿下はずっと横になっていないし張り詰めた欲望を放つ事さえ出来ないのだ。

    「…私なら大丈夫ですから、どうぞ殿下の思うようになさって下さい。」

    また痛く辛いのだろうが、挿入たままずっとこのままでなんて土台無理な話なのだ。

    「それじゃ意味がない。…アマリール、早く俺を受け入れろ。」

    「…きゃっっ!や…!殿下…やぁっ!!」

    耳孔を奥深くまでなぞるように舐められて腰が弓なりになる。そして彼をきつく締め付ける蜜壺はしなる腰につられて更に彼を締め上げた。

    「アマリール…っ!!そんなに締め付けるな…!!」

    「ご、ごめんなさ…あっ…ひっ…あぁん!!」

    ぎゅうぎゅうに締め付ける肉壁を自分で制御する事が出来ない。締め付けるたびに彼の形を覚えさせられているような錯覚さえする。

    「アマリール…口を開けろ…。」

    恐る恐る唇を開けると彼はその長い指で私の舌に触れた。そして私の唾液をたっぷりと指に纏わせるとそれを自身の口に運ぶ。
    指の一本一本についた私の唾液を丁寧に舐め取るその姿はまるで捕食の前の儀式のようで胸が騒ぐ。
    

    「失礼致します。」

    何も考えられなくなりそうなほどの熱が身体を襲いそうになったその時、先ほどの侍女が彼に言い付けられたものを持って戻ってきた。
    一度目の当たりにした事で彼女なりの対処法を見付けたのだろう。さっきの初な様子とは打って変わって完璧に仕事をこなしている。

    「…来たか。アマリール、つかまれ。」

    「えっ…?」

    彼は上半身を屈めるようにして私につかまれと促す。
    (つ、つかまるって…どこに?)
    まごまごとする私に痺れを切らしたのか

    「首に手を回してつかまれ。行くぞ。」

    そう言うなり彼は私の膝裏に両腕を差し入れ持ち上げた。

    「あぁん!!」

    彼は軽々と私を持ち上げ料理の並べられたテーブルへと歩いて行く。繋がった場所が進むたびに擦れて、私は声を上げながら必死に彼にしがみついた。

    「…ぁっ…ぁっ…ん……」

    「大丈夫か?もっとしっかりつかまれ。」

    しかしどんなにきつく抱き付いても歩くたびに身体は揺れて彼の熱く滾る昂りが奥を刺激する。
    向い合わせに抱き合ったままソファーに座ると、彼は色鮮やかな柑橘類が浮かべられた果実水を手に取り口に含んだ。
    そして自分の首にきつく腕を回す私の髪を一撫でして顔を上げさせ口移しで飲ませる。ほんのり甘い冷えた水が少しずつ喉を下るとほうっと安堵に似た吐息が漏れる。

    「少し何か食べろ。これはどうだ?」

    彼はハムやレタスを挟んで小さくカットされたサンドウィッチの乗る皿を差し出すが、こんな状況でムシャムシャと食べれるご令嬢がいるのなら教えて貰いたい。小さく首を横に振ると彼は再びテーブルに目を向けた。

    「あぁ…これなら食べれるだろう。お前はこれが好きだったな。」

    そう言って彼が手に取ったのは、美しい硝子の器に乗せられた苺の山だった。
    (…苺は大好きだけど…どうして彼がそんな事を知ってるの……?)
    共に食事をしたこともない。せいぜい皇后陛下のお膳立てでお茶を一緒に飲んだ事があるくらいだ。それなのになんで……?

    「…赤い薔薇の小さな蕾を苺と間違えてがっかりしていたな…。」

    (……微笑んだ………!?)
    ほんの僅かだが、彼の口元が緩やかに弧を描いた。いつも冷たく人を見据える彼が笑うところなど初めて見た。そして今の話は一体誰の話なのだろう。私にそんな記憶はない。では彼は誰の話を……?

    「…ほら…。」

    小ぶりな赤い苺を私の唇にトントンと押し当てる。唇を開くと優しく苺を口の中に運んで指を離した。
    まだ少し時期が早いのか甘酸っぱい味が口の中に広がる。

    「美味いか?」

    まだ苺は口の中に残っていたのでコクンと頷くと彼はまた少し微笑んだ。

    「そうか…。」

    そんなはずないのに。彼のこんな顔は見た事ないはずなのに…なのに何故だか懐かしいような気分になる。
    これは何なのだろう…恋だとか愛だとかいうものじゃない。急に正体のわからない胸騒ぎに襲われた。

    

    

    

    
    
    

    
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