侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第一章

29 後悔

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    「…ルー……?」

    目覚めると一人だった。ルーベルが寝ていた場所に手を伸ばすとまだ少し温かい。
    (…どこに行ったのかしら……。)
    一緒にいれば緊張ばかりしていた。それなのに全て思い出した今は彼が側にいないと不安になる。
    どんな時もずっと守られていた。けれど私はそれを良いことにとてつもない過ちを犯した。それでもルーは再び私を救い、側に置いてくれた。
    (…許してくれているの…?)
    ううん…そんな筈ない。どんなに彼が度量の大きい人間だったとしても限度がある。
    それでもきちんと話さなければならない。何故ハニエル様に依存したのか…前世の事も全て。

    「……うっ……ひっく………」

    怖い…自分のしたことの愚かさを思うと涙が出る。いくら記憶を失っていたからと言っても許される事じゃない。
    (…正直に話したら嫌われちゃうのかな…)
    それだけじゃない…ハニエル様のように後になって思い出して暴力を振るわれるかも…。
    後悔しても仕方ない…それもこれも全部自分のせいだ…。
    またきっと罰を受けるんだ。今度の罰は一体何なのだろう。

    「アマリール!?」

    「……ルー……」

    部屋へ戻ってきたルーベルは両手で顔を隠すようにして泣くアマリールを見つけ、急いで側へと寄った。

    「どうした!?どこか痛むのか!?」

    慌てた様子で身体を確認するルーベルにまた涙が出る。

    「違う…違うのルー…」

    「なら何故泣いている!?」

    ルーベルはアマリールを自身の胸に引き寄せ、背中を優しく擦りながら問い掛けた。
    頭の上から響く低く優しい声に、涙は止まるどころか更に溢れ出す。

   「…ごめんなさい…!!ごめんなさいルー…!!」

    「何故謝る?」

    「わ、私…ハニエル様と……!!」

    “ハニエル”。その名前がアマリールの口から出た瞬間ルーベルの手に力がこもる。

    「何にもないって嘘をついたわ…でも本当は…!!」

    「…それはもういい…」

    「…え……?」

    今何て…?“もういい”って言った?
    もういいって…どうして…?
    抱き締める腕の力はさっきよりも強い。“もういい”なんて、そんな訳ない。

    「…俺にも反省すべき点は山ほどある。記憶を失っていたお前にあの頃と同じ気持ちのまま迫って怖がらせただろう?他にもっとやりようがあったはずだ。」

    「そんな…そんな事…!」

    ルーは何も悪くない。確かに“血の皇太子”の事はずっと怖かったし、どうして私との結婚にそれほどまで執着するのかわからなかった。でも…

    「あの日…薔薇園へ向かうお前を追い掛けて無理矢理純潔を奪ったのは約束だったからじゃない…本当は俺が我慢出来なかっただけなんだ…。淋しくて…お前が恋しくて恋しくてたまらなかった。」

    「…ルー…。」

    「お前も初めてだったのに…もっと優しくしてやりたかったのに…どうしたらいいのかわからなかったんだ…。」

    幼い少女から大人の女性へと変わっていくアマリールを目にする度に心が、身体がどうしようもなく疼いた。それは日に日に大きくなり、自分でも止める事の出来ない衝動へと姿を変えた。

    「…ハニエルの優しさにお前の心が向くのも当たり前だ…。過去の想い出にばかり囚われて、今のお前自身を何一つ見ていなかった。全て俺のせいだ。だからお前は謝るな。」    

    「ルー!でも…!!」

    「もういいんだ!」

    ルーベルはそれ以上何も言わせまいとアマリールの華奢な身体をきつく抱き締めた。
    今ここでアマリールが懺悔し、許しを乞われれば自分はそれを黙って受け入れるだろう。そうすればアマリールの中にある罪悪感も、消えはしないだろうがそれで楽にはなるはずだ。
    しかしルーベルは一度それを聞いてしまえばこの先一生ハニエルへの嫉妬に自分自身が苛まれる事がわかっていた。そしてそれがいつの日かアマリールを苦しめるだろう事も…。
    聞いてやりたかった。全てを許してやりたかった。けれど今の自分にはそれが出来ない事を誰よりも知っていた。
    …そしてアマリールも、そんなルーベルの心を痛いほどわかっていた。いっそ責めてくれればいいのにそれをしないルーベルの優しさを。アマリールはただ謝る事しか出来なかった。

    「…ごめんなさい…ごめんなさ…ごめ…」

    アマリールは後悔に身を震わせ、何度も何度も謝罪の言葉を口にする。けれど熱く柔らかい唇を押し当てられ、アマリールの懺悔はルーベルの口の中へ消えたのだった。





    

    
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