侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第一章

37 出立

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 「あっ…あんっ♡…あ…♡」

 ゴトゴトと上下に揺れる馬車に合わせるように、車内からは甘い声が響いていた。

 「リル、そんなにいい声で啼くと外に漏れる。誰にも聞かせたくないから少し抑えろ。」

 そんな事言うならこんな所でどうしてこんな事するんだろう。

 「“離さないで”と言ったのはお前だろう?」

 「あ…だからってこんな…あん♡…やぁ…♡」

 ルーは律儀で真面目な人なのだろうか。約束は必ず守る人だ。でもだからってこんな風にしてくれなくてもいいのに。

 
 出立の朝、保養地の前には第一騎士団の錚々たる顔ぶれが立ち並んでいた。
 
 「皇宮まで頼んだぞアドラー。」

 アドラーと呼ばれた男性は、エレンディールでは知らぬ者などいない。
 第一騎士団長エクセル・ディ・アドラー公爵。強く優しく逞しく、帝国一の精鋭揃い第一騎士団を束ねる百戦錬磨の男。涼やかな目元に少し厚みのある唇がセクシーと評判の、貴族の女性にだけではなく、一般市民からも非常に人気の高い方だ。
 (アドラー公爵がわざわざこんな所まで?)
 この近辺で諍いが起こった訳でも何でもない。ただ私達が皇宮に帰ると言うだけで?

 「どうしたリル?」

 どうした?じゃない。ルーにとっては大した事ないのかもしれないが、私にとっては一大事だ。すぐさま繋いでいたルーの手を離し、アドラー公爵に礼を取ると、下げた頭の先に誰かのつま先が見えた。

 「どうぞ顔をお上げ下さいアマリール様」

 低く響く声に驚いて顔を上げるとそこには美しいグレーの瞳。アドラー公爵は私の手を取って跪いた。
 優雅な仕草で手の甲に口付けられ、そのあまりの自然さに思わず口が開いてしまう。 

 「あなたのような美しい方をお守りする事が出来るなんて光栄です。私はエクセル・ディ・アドラー。どうぞエクセルとお呼び下さい。」

 顔面からキラキラした何かを放ちながらアドラー公爵は微笑んだ。ルーも凄い美形だけど、何ていうか種類の違う美形。そしてやり手のオーラがビシビシ伝わって来る。
 しかし次の瞬間殺気の籠もった手刀がアドラー公爵の腕にめり込んだ。

 「アドラー…気安くリルに触るんじゃない…!!」

 メリッて骨から音がしそうなくらいめり込んでいるけどアドラー公爵スマイルはびくともしない。

 「殿下、忙しい私を呼び出したんですからこのくらいの役得は許していただきませんと。」

 「死にたいのかお前…リルは俺の婚約者だぞ…!」

 「あーやだやだ、これだから初恋拗らせお坊ちゃまは。で?無事に童貞は貰ってもらえたんですか?」

 ルーベルのこめかみにくっきりと青筋が浮き上がるがアドラーは無視して再びアマリールの方を向いた。

 「アマリール様、我が主はこの通りまだまだお子ちゃま…大人の男を知りたくなったらいつでも私のところへいらして下さい。」

 眼力とでも言うのだろうか。人の心の奥底まで入り込むような強い眼差しから目が離せない。しばらくじっと見つめ合う形になってしまったのがルーの気に障り、この後非常に恥ずかしい事態を招く事になってしまうとは、この時の私は思いもしなかった。

 「アドラー!!」

 ルーベルの怒号にやれやれとアドラーは腰を上げた。

 「私に目くじら立ててる場合じゃありませんよ殿下。」

 「何だ?」

 「檻に入れていたが逃げました。」

 アドラーの言葉にルーベルの表情が曇る。

 「足取りは?」

 「…なかなかすばしっこい子狐で…今部下が必死こいて探してます。」

 「必ず捕まえろ。それと俺達の周囲にいつも以上に気を配れ。」

 「わかってます。殿下は今大事なお姫様に夢中で他に気を配る余裕がありませんからね。」

 初々しい二人を見守る大人の余裕たっぷりといった風にアドラーは微笑むが、ルーベルは限りなく不愉快そうだ。 

 「狐……ルー、狐が好きなの?」

 ふと、アマリールは感じた疑問を口にしてみた。あどけない表情でルーベルを瞳に映すアマリールは少女のように可憐で可愛らしい。アドラーは思わず吹き出した。

 「あはははは!!これはこれは、殿下が夢中になる訳だ!」

 「?」

 アマリールは何がそんなにおかしいのだろうと不思議顔。

 「アドラー!!出るぞ!!」

 笑い転けるアドラーを無視してルーベルはアマリールの手を引いた。

 「ルー!?」

 ルーベルは振り返りもせず馬車へ向かって進んで行く。そしてアマリールを先に乗らせバタン!!と大きな音を立てて扉を閉めた。

 騎士団の出立の号令が響き馬車が動き出すと、ルーベルはアマリールを引き寄せ膝の上に座らせた。

 「…ああいうのが好みなのか…?」

 「え?」

 って、まさかアドラー公爵の事を言ってるのかしら。

 「ルー、何か怒ってる?」

 元々喜怒哀楽の少ない人だけど、何だか不機嫌そうなのはわかる。

 「…もしかしてルー、やきもち妬いてるの?」

 確かに手の甲にキスはされたけど、あれは挨拶だし…あ!もしかして…その…童貞って皆の前で言われたのが恥ずかしかったのかしら?ルーはパッと見た感じ色々経験してそうな雰囲気あるし…。
 アマリールが不機嫌の原因は何かと頭の中で考えを巡らしていると、ルーベルはいきなりアマリールの胸元を下げ、桃色の頂を口に含んだ。

 「きゃっ!ル、ルー!!何してるの!?」

 「何って…見てわからないか?お前の胸を味わっている。」

 そそそそんなの見たらわかりますけど今ここ馬車の中で、その周りには騎士団の方々が大勢取り囲んで進んでるんですよ!?

 「…あん…♡♡噛んじゃ…やぁ…♡♡」

 突起を舐められながら前歯の先で優しくカリカリと甘噛みされて、アマリールは甘い声を上げながら身体をよじる。
 保養地に来てからというもの昼も夜もなくルーベルの愛を受けていた身体は喜んでその愛撫に応えようとする。

 「…すごいなリル…出る前に少ししてやれば良かったか?」

 ぐぢゅうっとルーベルの指がはしたない音を立てて奥深くへと沈み、アマリールは力いっぱいしがみついた。
 馬車の中に響く淫猥な音が外に漏れ聞こえたらどうしよう。アマリールは羞恥に震えたが、そんな心とは裏腹に柔らかくとろけた果肉はたっぷりと甘い果汁をルーベルの指に滴らせ、彼の奥で燻る欲を誘い出す。
 ルーベルはアマリールの中に何度も指を沈ませながら、自身の昂りを取り出した。

 「リル…おいで…」

 甘く低い声が耳から伝わり腰を痺れさせる。
 逞しくそそり勃ち、ドクドクと脈打ちながら私を待っている彼に心が高鳴る。

 「…んっ…んぅ♡…っぁぁん♡♡♡」

 ゆっくり、ゆっくりと腰を沈めると、待ち侘びた果肉は愛おしそうに彼の熱く硬い昂りに吸い付いていく。

 「もうすっかり俺の形だな。わかるか?」

 「…うん…」

 わかる。隙間なんてどこにもない。自分のナカがまるでルーの形になってしまったかのようにぴったりと合わさっている。

 「…他の男によそ見なんてするなよ。わかったな?」

 「ひゃうっ♡♡♡」

 思い切り下から突き上げられ、堪えきれずに大きな声が出てしまう。
 
 「ルー…ダメ…!!声が……!!」

 けれどルーベルは馬車の揺れに合わせるようにアマリールを揺さぶった。

 「あっ…あんっ♡…あ…♡」

 「リル、そんなにいい声で啼くと外に漏れる。誰にも聞かせたくないから少し抑えろ。」

 そんな事言われたってこんな事されたらどうしても声が出ちゃうのに…!
 
 「“離さないで”と言ったのはお前だろう?」

 「あ…だからってこんな…あん♡やぁ♡♡」 

 「声が我慢できないなら俺の肩を噛んでいろ。」

 そう言うとルーベルは激しくアマリールを突き始めた。揺れる車体の中で更に揺さぶられ、まるで宙に浮いているかのようだ。アマリールは必死にルーベルに掴まりながら、言われた通りその肩を噛んだ。

 「んんっっ♡♡んーーーっっ♡♡♡」

 アマリールの蕩けきった果肉がぐねぐねとした大きなうねりを連れてルーベルを翻弄する。

 「…は……っっ!! 」

 噛まれた肩の痛みなど気にならないほどの快感にルーベルは恍惚とした。
 
 「大丈夫か…?」

 力の抜けた身体はくたりとルーベルに寄りかかっている。荒い息のアマリールの髪に口付け、二人はしばらくの間繋がったままでいた。




 ***



 「狙うのは黒髪の男だ。頼んだよ。」

 鬱蒼と茂る木々に紛れ、男達は潜んでいた。
 全身武装した集団は全員顔を布で覆い隠している。

 「周りの奴らはどうする?」

 リーダーと思しき大柄な男の問いに答えたのは、この群れに似つかわしくない風体の違う男。

 「皆殺しにして構わない…でも手強いよ?何て言ったって第一騎士団だ。ただ女の子だけは殺さないで。金色の髪の美しい子だ。すぐわかる。」

 そう答えた男の髪色もまた金色に輝いていた…。



 
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