侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第一章

47 止められぬ憎しみ

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 なんで……?なんであんたが一緒にいるの……?
 その人は私の夫となる人なのに。

 「ルーベル殿下は……アマリール様を大切にして下さいますか……?」

 なんでそんな事がロウ公爵に関係あるの?
 ローザは理解に苦しんだ。
 宴席で彼は私に何も話し掛けては来なかった。お母様が振った話題に一言二言答えたくらいだ。  
 二人が知り合いなどとは聞いていない。それならばなぜ……なぜそんな顔で目でその女を見るの……?

 「……初めて殿下にお会いしたのはもう十年以上も前の事になります。幼い私は殿下の宮を厠と間違えてしまって……ふふ。」

 (……何ですって……?)
 急に頭の中が真っ白になった。
 お義兄様と幼い頃会っていた……?
 
 「……けれど殿下はそんな私を叱らずに本当の厠へ案内してくれました。それから私は殿下に会いたくて…また間違えたフリをして会いに行ったんです。」

 何……一体さっきから何を言っているの……?

 「殿下は優しい人だから…幼い私のお喋りに嫌な顔一つせず付き合ってくれました。私は殿下の事が大好きで大好きで……だからお願いしたのです……“私をお嫁さんにして”って……。」

 お義兄様と……幼い頃から会っていた……?
 そんな……そんなの嘘だ……大嘘だ!! 
 だってあの女がお義兄様と一緒にいるところなど見た事が無い。むしろ避けているようにさえ見えた。
 それなのにお義兄様は一向にあの女との婚約の話しを取り下げようとしない。それはクローネ侯爵領の持つ財力のせいだと皆が口を揃えて言った。財力……後ろ盾……お母様と私に足りない唯一のものが私とお義兄様の障害となった。そうよ……お義兄様は本当はあんたなんか愛してないのよ……あんたなんか……!!

 「……殿下は……優しい人なのですか……?」

 「……はい。誰よりも強く、そして優しい人です。」

 違う……違う……違う!!!
 お義兄様は私に……私だけに優しかった!!
 あんたじゃない!! 

「……とてもいいお話が聞けました……。私もローザ殿下とお二人のような関係を築けたら……素直にそう思います。」

 「いいえそんな!……何だか恥ずかしい話をお聞かせしてしまって……でもありがとうございます。……ロウ公爵、ローザ様をどうか幸せにして差し上げて下さいね。」

 “幸せにして差し上げて下さい”?
 ローザの未来をアマリールなりに気遣って出た言葉だったが、それはローザの神経をこれ以上無く逆撫でした。
 (……何でこの私があんたなんかに蔑まれないといけないのよ……!!)  

 「…努力してみます。愛を育めるかはわかりませんが、決して不幸にはしない……お約束します。」

 ……努力してみます……?“努力”ですって?
 ……ふざけるんじゃないわよ……努力するのはあんたじゃなくて私の方じゃない……!!愛してもいない男に身体を開いて喜ばせるように声を上げ、そして子を産まなければならない私の方よ!!

 満足気に微笑むアマリールの笑顔にローザの頭は憎しみで埋め尽くされ、もはやそれは止める事の出来ない大きな波となりローザ自身を飲み込んで行く。

 「……許さない……」

 その顔に表情はない。
 ローザは再び歩き出す。
 (……あの女さえいなければ幸せになれるあの女さえいなければすべて元通りになるあの女さえいなければお義兄様は……!!)

 「ローザ殿下!?」

 カツカツと異様なほどに音を立ててローザが向かってくる事に気付いたロウ公爵は、アマリールと二人でいた事の後ろめたさと酔いも手伝いその目的に気付くのが遅れた。
 ローザの目は激しい憎悪に燃えている。そしてその目はアマリールしか映していない。

 「……ローザ様……?」

 ローザは躊躇うことなく真っ直ぐにアマリールへと向かって行った。最後は走るようにして。

 「待ちなさい!!」

 ロウ公爵はローザを止めようとしたが一歩遅かった。
 
 「っっ!?」

 ローザはアマリールの首に手を掛け、強い力でバルコニーの端まで引きずった。

 (……すごい力……!!怖い……ルー!!)

 「……もっと早くこうしていれば良かったわ……」

 そしてローザは醜く嗤う。
 アマリールには今のローザの顔に見覚えがあった。
 (……この顔……ハニエル様も……)
 そしてアマリールの恐怖に歪む顔でローザの狂気は完成された。
 信じられない力でアマリールの背を手すりに押し付けさらなる力を加えた。足が浮き、ルーベルの選んでくれた華奢な靴がその場にコトンと転がった。

 「いや……やめて……やめてローザ様!!」

 しかしローザはもう一度嗤い、唯一アマリールの身体を支えていた自分の手を放した。

 「いやーーーーーっっ!!!」


 逆さに落ちるアマリールの目には、あの日のように自分を救おうと伸びる手は見えなかった……。
 

  






 
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