侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第二章

1 真実(前編)

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 《あれぇっ!?君、また戻って来ちゃったの!?》

 目を開けるとそこは真っ白な雲の上だった。
 そして私の目の前で素っ頓狂な声を上げたのは……天使?
 子供の頃に読んだ絵本に出てきたような、羽根の生えた金色の髪の少年がそこにいた。

 《君達の世界じゃそう呼ぶのかい?僕の名はプルマ。君を見届ける者だよ。》

 私を見届ける……?

 《そう。以前君の頭に直接声を掛けたのを憶えているかい?》

 頭に……?あっ!ハニエル様の所から保養地に来た時の事?

 《そう。あの後無事に思い出したみたいだから、今生を終えてからと思ってたのに……何てこった……こりゃ大変だ……!》

 戻す?どういう事?何を言ってるの?
 それに私……私はどうなったの……?
 確かローザ様にバルコニーから突き落とされて………。

 《……君のいた場所、今大変な事になってるみたいだ……見てみようか……。》

 プルマは真剣な顔で手をかざした。
 すると足元の雲が透け、映像が映し出される。

 『……ルー……!!』

 《………。》


 ルーベルはベッドで眠るアマリールの手を握り締め泣いていた。

 「リル……!!リル……頼むから俺を置いて逝かないでくれ……!!」

 目の下にひどい隈ができている。
 顔色もとても悪いわ……きっと全然眠っていないのね……。

 『ルー!!私はここよ!!』

 アマリールはルーベルに向かって叫ぶがその声は届かない。

 《いくら叫んでも君の声は聞こえないよ……。だってここに来てしまったから……。》

 『ここ?ここってどこなの!?』

 《ここは君達が言うところのだよ。君は死んだんだ……いや、正しくはもうすぐ死ぬ。今は昏睡状態みたいだけどね……。》

 『死ぬ!?嘘でしょう!?だってあなた前世での私の生涯に同情したからこそ、もう一度やり直す機会を与えてくれたんじゃないの!?』

 《確かに。君の前世は人の悪意に晒されすぎた。だからここで本来辿るべきだった人生を取り戻して貰って、それからまた前世に帰してあげるつもりだったんだ。》

 『……前世に……帰す……?』

 《そう。》

 『なんで?なんでよ……前世になんか戻りたくない。私は今の……私を愛してくれた今のルーの側にいたい!!』

 《……君を愛しているのはそこに見える彼だけじゃないよ……。》

 『……え……?』

 “見てごらん”そう言ってプルマは再び手をかざす。そして足元に見えたのは……

 『あれは……私……?』

 
 ベッドの上に横たわる私は今よりもだいぶ年をとっている。でも間違いない。あれは私。離宮で命を落とした前世の私だ……。
 でも問題はそこじゃない。ベッドの横に誰かがいる。
 (……嘘でしょ……)
 孤独の中一人死んだはずの私。けれどその手を握っているのは黒い髪に金色の瞳……殿下だった……。


 「……殿下、どうかアマリール様を天に返して差し上げて下さい!!このままでは……!!」

 (……ゲイル様……)
 しかしルーベルは聞こえているのかいないのか、ゲイルの方を向きはしない。
 邪気のない……まるで病気の子を心配そうに見守る親のような顔でずっと私を見つめている。

 「殿下!!」 

 「うるさい!!出て行けゲイル!!もう二度とこの部屋には入るな!!」

 尚も食い下がるゲイルを一喝したその時でさえ、ルーベルの目がアマリールから逸れる事はない。
 やがてゲイルが諦めたように部屋を出て行くと、ルーベルはアマリールに向かって優しく語り掛けた。

 「ごめんなリル……うるさかっただろう?もう誰もここには入れないから……これからはずっと二人きりだから……」

 (……何なの……これは一体どういう事……?)

 ここは皇太子宮なの……?
 なぜ?なぜ離宮で死んだはずの私の遺体が殿下の宮の殿下のベッドの上に?……それに今殿下……私の事をって……って呼んだ……!?

 《……彼が君を離さないんだ……もう身体は腐り始めてるというのに……》 

 『……何で……?私を離宮へ追いやったのは殿下でしょう……?』

 しかしプルマの顔は悲しげだ。

 《本当に君を離宮へやったのは彼かい?》

 『そうよ……だって言われたもの……』

 《……誰に?》

 誰にって………

 【残念だったわねぇ、お義姉様?】
   
 (……ローザ様……!!)
 そうだ……離宮の話を持ち掛けて来たのはローザ様だ。確かに殿下には何も言われてはいない……けど……。

 『でもローザ様は殿下に言われたから来たのでしょう……?』

 離宮の使用許可がローザ様の勝手で下りるとは考えられない。皇族の誰かでなければ……。だとすればやはり殿下が許可したと考えるのが妥当だろう。だって私は彼の妃だったのだ。私の処分を彼以外が決められる訳がない。

 《許可したのは確かに彼だよ。でもね……君がそうしたいと強く願ったと……彼はそう聞かされたんだ……。》
 
 『そんな!……でも彼だって厄介払いが出来て嬉しかったはずよ!!だってあんなに私の事を疎んで……』

 言いながらアマリールの瞳からは涙が零れ落ちる。
 何故ならその時、ルーベルがに口付けて微笑んだからだ。
 (……お願いやめて……そんな汚い唇にキスしないで……!)
 死んでからどれくらいの時間が経過しているのだろう。皮膚は変色し……ルーベルがたった今口付けたかつて赤く柔らかだった唇の周りには、水疱のようなものが破れ体液が染み出ている。
 (もう腐ってるのよ……それなのに……それなのに何で……?どうしてそんなに幸せそうな顔をするの……?)
 ルーベルはとろけるような微笑みを浮かべ、頬を薔薇色に染める。
 
 
 《……君も少しだけ気付いたんだよね?前世の君達の間には、自分達も知らない何かがあったんじゃないかって……。》

 確かに気付いた。でももういいじゃない。
 終わった事……全部終わった事なのよ?

 《……この後エレンディールは滅亡への道を辿る事になる……皇帝ルーベルの元でね……》

 『………え………?』


    
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