52 / 125
第二章
4 愛を返すために
しおりを挟む《いいかい?まず起こるべくして起こった事は変えられない。例えば君の事故だ。》
プルマが言うには私の庭園での事故は何の干渉も働かないただの事故なのだそう。そして起こるべくして起こった人生のイベントは絶対にまたやってくるのだと……。
《だから君がこの先変えようと頑張ってるのにもかかわらず、前世と同じ事になってしまったとしたら、それは君の人生にとって必要な事なんだ。だから恨んだりしてはいけないよ。平坦な道だけ歩いて行ける人間なんてこの世にはいないんだからね。》
『わかったわ。』
《それと君の記憶喪失もまた起こるべくして起こった事だからそれを変えてはダメ。やり直しの人生を打ち明けるような事もルール違反だよ。》
『……でもそれじゃいつ記憶が戻った事にすれば良いの?ルーの時は偶然戻ったけど殿下の時はどのタイミングで戻ったフリをすれば?』
《……じゃあやり直しは事故直後からにしよう。君は鍵の色とドレスの色しか憶えていないよね?》
『ええ。でも記憶を失う前の私達はルーの時と同じじゃないの?』
《鍵の色とドレスの色が違うように、ほんの少しのズレがあるんだ。その違いを君がすべて思い出せたら、その時が前世の記憶が戻った時だ。》
『ねえプルマ……さっき私達の間には政治的な悪意も含まれていたって言ってたけど……一体そこに誰が関わっていたのか教えてくれる?』
しかしプルマはその問いに答える事を悩んでいるようだ。
《……ちょっと君は人の心の機微に疎すぎるんだよね……。それにお勉強はちゃんとしてたみたいだけど、実際皇后として政治に関わる事も無かったし、知ろうとしなかったから気付けなかった事もある訳で……》
プルマは顎に手をあてて何やらブツブツと呟いている。漏れ聞こえてくる内容は私の欠点ばかりだ。
《そこは自分で頑張って貰おうかな》
『えっ!?』
《だって陰謀を見抜く力を養わなければルーの元に戻ったって将来絶対同じ目に合うよ?せっかくだから殿下の元で色々鍛え直しておいでよ。》
き、鍛え直すも何も、殿下とうまくやれるかどうかさえも怪しいのに……。
《……じゃあヒントをあげる。アーデン伯爵家。これに気を付けるんだ。》
『アーデン伯爵家?』
《そう。でも未来は変わる。君が変えるんだ。だからこのヒントも役に立つかはわからない。》
『最高に不安だわ……』
“また戻って来たの!?”
盛大に失敗して出戻り、プルマに呆れ顔で言われるような気がする……。
《違う人間だけど、同じ人間だよ。》
『どういう事?』
《“ルー”も“殿下”も、違う人間だけど同じ人間なんだ。君がどう見るかなんだよ。》
“ルー”と“殿下”は同じ……。
同じとは思えない。私には二人が同じだなんてとても……でも……。
骨になってしまった私を抱いて火に包まれて行った殿下。あの姿を思い出すと胸をきつく握り潰されるような痛みを感じる。
殿下も私を愛してくれていた……。そしてルーは何があっても私を信じてくれていた……。
今度は私の番だ。
《覚悟が決まったみたいだね。じゃあそろそろ行こうか。やり直しは一度きり……後悔しないようにね。》
私はプルマに頷き返す。
今度は私が愛を返す番。
救って見せる。彼も、私も。
そして私の身体は眩い光に包まれた。
39
あなたにおすすめの小説
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました
唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」
不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。
どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。
私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。
「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。
身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる