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第二章
4 愛を返すために
しおりを挟む《いいかい?まず起こるべくして起こった事は変えられない。例えば君の事故だ。》
プルマが言うには私の庭園での事故は何の干渉も働かないただの事故なのだそう。そして起こるべくして起こった人生のイベントは絶対にまたやってくるのだと……。
《だから君がこの先変えようと頑張ってるのにもかかわらず、前世と同じ事になってしまったとしたら、それは君の人生にとって必要な事なんだ。だから恨んだりしてはいけないよ。平坦な道だけ歩いて行ける人間なんてこの世にはいないんだからね。》
『わかったわ。』
《それと君の記憶喪失もまた起こるべくして起こった事だからそれを変えてはダメ。やり直しの人生を打ち明けるような事もルール違反だよ。》
『……でもそれじゃいつ記憶が戻った事にすれば良いの?ルーの時は偶然戻ったけど殿下の時はどのタイミングで戻ったフリをすれば?』
《……じゃあやり直しは事故直後からにしよう。君は鍵の色とドレスの色しか憶えていないよね?》
『ええ。でも記憶を失う前の私達はルーの時と同じじゃないの?』
《鍵の色とドレスの色が違うように、ほんの少しのズレがあるんだ。その違いを君がすべて思い出せたら、その時が前世の記憶が戻った時だ。》
『ねえプルマ……さっき私達の間には政治的な悪意も含まれていたって言ってたけど……一体そこに誰が関わっていたのか教えてくれる?』
しかしプルマはその問いに答える事を悩んでいるようだ。
《……ちょっと君は人の心の機微に疎すぎるんだよね……。それにお勉強はちゃんとしてたみたいだけど、実際皇后として政治に関わる事も無かったし、知ろうとしなかったから気付けなかった事もある訳で……》
プルマは顎に手をあてて何やらブツブツと呟いている。漏れ聞こえてくる内容は私の欠点ばかりだ。
《そこは自分で頑張って貰おうかな》
『えっ!?』
《だって陰謀を見抜く力を養わなければルーの元に戻ったって将来絶対同じ目に合うよ?せっかくだから殿下の元で色々鍛え直しておいでよ。》
き、鍛え直すも何も、殿下とうまくやれるかどうかさえも怪しいのに……。
《……じゃあヒントをあげる。アーデン伯爵家。これに気を付けるんだ。》
『アーデン伯爵家?』
《そう。でも未来は変わる。君が変えるんだ。だからこのヒントも役に立つかはわからない。》
『最高に不安だわ……』
“また戻って来たの!?”
盛大に失敗して出戻り、プルマに呆れ顔で言われるような気がする……。
《違う人間だけど、同じ人間だよ。》
『どういう事?』
《“ルー”も“殿下”も、違う人間だけど同じ人間なんだ。君がどう見るかなんだよ。》
“ルー”と“殿下”は同じ……。
同じとは思えない。私には二人が同じだなんてとても……でも……。
骨になってしまった私を抱いて火に包まれて行った殿下。あの姿を思い出すと胸をきつく握り潰されるような痛みを感じる。
殿下も私を愛してくれていた……。そしてルーは何があっても私を信じてくれていた……。
今度は私の番だ。
《覚悟が決まったみたいだね。じゃあそろそろ行こうか。やり直しは一度きり……後悔しないようにね。》
私はプルマに頷き返す。
今度は私が愛を返す番。
救って見せる。彼も、私も。
そして私の身体は眩い光に包まれた。
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