侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中

文字の大きさ
53 / 125
第二章

5 始まる

しおりを挟む





 「アマリール!!」

 「……お……父様……?」

 ぼんやりとした視界が開けてくると、そこにはまだ若々しい父がいた。

 「医者だ!医者を呼べ!!ああアマリール!!……良かった……!!」

 頭には包帯が巻かれている。そして痛い。プルマの言った通り、無事に事故の直後に戻ったようだ。

 「……お父様……私……」

 「無理に喋らなくていい。頭を打った事は憶えているか?」

 えっと……私は事故の記憶も無かったのよね……。

 「わからないわお父様……ごめんなさい……」

 「いや、いいんだ。お前が目を覚ましてくれただけでいい……!」

 お父様は涙を流して私の手を握る。
 今更ながらにとても愛されていたのだなと感じて胸が熱くなる。
 でも感傷に浸っている場合じゃない。もうすでにやり直しは始まっている。
 とりあえずどうすればいいかしら。傷が治るまで大人しく……してるしかないわねこれは……。
 私はやけに軽い頭を触って溜め息をついた。
 傷を縫うためなのだろうが……髪の毛が一部大量に刈られている。
 こんな頭じゃ殿下に会える訳がない。
 どうしよう……。こうしてる間にお父様が事故の事実を無かった事にしてしまうかも……。

 「……ねえお父様?私は事故に遭ったの?」

 「あ、ああそうだよ。事故というかその……」

 勝手にすっ転んだのよね。わかるわ。言いにくいわよね。

 「……誰かにご迷惑をかけてしまったかしら……?」

 人を呼んでくれたのは一緒にいた殿下以外に考えられない。それならお礼を言うという口実で会いに行かなければ。
 たとえ記憶を失くした状態だったとしても、彼との繋がりを消してはいけない。

 「あ、ああ……結構たくさんの方にご迷惑をおかけしたよ。」

 「髪の毛が元に戻ったら皆さんにお礼を言いたいの。」

 「いや、それは私がしておくからアマリールは何も気にしなくていい。」

 お父様の目が泳いでる。これはマズい!

 「お父様……アマリールは自分でご挨拶したいの。だってこんなひどい怪我を助けて下さったのよ?お願い……!!」

 お父様の手をぎゅーっと握ってお願いする。泳ぎまくってる目も逃がしてなるものか。“うん”と言うまで見つめてやるんだから。
 しばらくそうしていると降参したのかお父様はようやく首を縦に振った。

 「……わかったよ。でもまずは怪我を治すのが先だからね。」

 「ありがとうお父様……。」

 そして私は髪が生えるまでの数ヶ月、今後の計画を練りながら過ごしたのだった。

しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました

唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」 不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。 どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。 私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。 「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。 身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...