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第二章
6 皇宮へ
しおりを挟む「髪って……なかなか伸びないのね……」
ふうっと溜め息をつくと侍女のララが心配そうに聞いてきた。
「お嬢様、浮かない顔でどうされましたか?もしかして具合が悪いとか……?」
「ううん、具合は大丈夫なのだけれど……」
頭に手をやると、ようやく坊主から顎下あたりまで伸びてくれた髪がサラサラと揺れる。
坊主よりマシだが、まだ少し短すぎる。このためだけにもう半年はかかってしまった。これ以上時間を無駄にしたくない。
すると私が髪を気にしているのがわかったのか、ララが奥からなにやら小さな箱を持ってきた。
「何かの役に立つかと思って取っておいたんです!」
そう言って取り出したのは金色の髪の毛の束。
「これ……切り落とした私の髪の毛……?」
はい!と元気にララは答えた。
「坊主頭にはつけられませんが、今の長さなら結い上げたようにすれば何とかごまかせますわ!」
「ララ!ありがとう!!凄いわ!!」
これで殿下に会いに行ける!
……でも会えても記憶が無いフリをしなければならないのよね……。
それが元で殿下は辛い心を抱えて生きて行く事になってしまうのだ。それを思うととても切ない。
(でも、たとえ違う形でも側にいる事はできるわ……)
慰めになるかはわからない。でも側にいればきっと違う未来が始まるはず。今はそう信じるしかない。
(それに……私も会いたい……)
この半年、ルーに会えない淋しさで幾度も眠れない夜を過ごした。
殿下がルーじゃないのはわかってる。でも会いたかったのだ。あの艷やかな黒髪と美しい金色の瞳に……。
***
それから一月後、再びお父様を説き伏せて実現したお詫びとお礼行脚に私は皇宮へと向かっていた。
「いいかいアマリール。事故は皇后陛下のお茶会の最中に起きたんだ。お前が厠に行くと言って出て行ったきり戻らなくてね。」
厠ではなく殿下に会いに行っていたのだ。
殿下もお茶会のある日は私が来る日だと待っていてくれたはず。
「……道に迷ってしまったのかお前は殿下の宮の近くで倒れていたんだ。それを殿下が見つけて下さったのだ。だからきちんとお礼をしないといけないよ。」
「はい、お父様。」
皇宮が近付くにつれ胸の音がうるさくなる。
前世の私の気持ちと今の私の気持ちが綯い交ぜになって暴れてる。
前世では彼の愛を必死で求めていたけれど、私はどうだったのだろう。彼を心から愛していたのだろうか……。今思うと彼を孤独の中に追いやったのは、記憶を失った事だけが原因じゃないような気がする。
(……今度は間違えないわ……。)
ルーが教えてくれた愛する事と信じる事。今度はそれを私が殿下に伝えよう。
そう意気込んだはずだった。だったのに……
「……っ……うぅっっ……ぅぅぅ……!!」
私ときたら殿下を目の前にした途端号泣してしまったのである。
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