侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第二章

7 大号泣

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 皇宮へ着くと案内されたのは陛下への謁見の間だった。

 「お、お父様!?」

 陛下にお会いするなんて聞いてませんけど!?
 しかしこれにはお父様も驚いている。その慌てぶりを見るにお父様も知らされていなかったのだろう。
 扉の前で待っていたのは若かりし頃のゲイル様のお父上であるエメレンス・ド・オーブリー宰相閣下だった。

 「急に申し訳ありませんね。クローネ卿がお嬢様をお連れになると聞いた陛下がぜひお会いしたいと言い出しまして……。アマリール嬢でしたね。もうお身体は大丈夫なのですか?」

 さすがあのゲイル様のお父上だ。優しげに微笑みながらもその瞳は鋭い。この先やってくる殿下のお妃選びの事も考え、頭を打った傷物の私を品定めしておこうといったところだろう。
 (ここで対応を間違えたらきっとこの先殿下に近付く事すら許されないわ……!)
 アマリールは姿勢を正し、臆する事なくゆっくりと優雅に礼をした。

 「お心遣いを賜りまして恐縮ですオーブリー閣下。ですがこの通りもうすっかり回復いたしました。唯一心配だった事と言えば、傷口を縫うために刈り上げた髪が元に戻ってくれるかどうかという事でした。」

 言い終わり、にっこり微笑むアマリールにエメレンスは驚いたように眉を上げた。

 「これはこれは……聡明なお嬢さんだ。なるほど皇后陛下が可愛がってらっしゃるのも頷けますな。」

 何とかうまくやれたかしら……。
 自信はないが、閣下のその表情を見るに及第点は取れたのであろう。

 「さあ、中で皆様がお待ちです。こちらへ……」

 閣下の指示で扉が開き、私とお父様は頭を下げつつ入場した。

 「面を上げよ。」

 恐る恐る顔を上げるとそこには皇帝陛下、そして隣には皇后陛下と……
 (殿下……!!)
 殿下は無表情で私を見ていた。
 何を思っているのか読み取る事は出来ないが、その金色の瞳にはしっかりと私を映している。

 「ご苦労だったなクローネ卿。それとアマリール……アマリール!?」

 皇帝アヴァロンは目を見開き慌てた。
 何故なら今声を掛けたアマリールが突然顔をくしゃくしゃに歪めて泣き出したからだ。

 「………ぅっ……ぅぅう……うぇぇぇん……!!」

 アマリールはルーベルと見つめ合ったまま泣き出してしまった。
 あまりに突然の事で周りは一様に慌て、アマリールに声を掛けた。

 「こっこれアマリール!どうしたんだ?頭が痛いのか!?」

 違う…違うのお父様……

 「まあ……無理をさせてしまったかしら……ごめんなさいねアマリール……!」

 皇后陛下…違うんです……!
 あぁ……殿下も眉間に皺を寄せてる……!
 駄目だこれは……早くちゃんと言わないと……!!

 「クローネ卿、早くアマリールを医務室に……」 「違うんです…!!」

 陛下の言葉を遮ってしまったがこの際仕方無い。

 「アマリール?どうした?」

 「陛下のお言葉を遮ってしまい申し訳ありません……!ですが違うのです……頭は痛くありませんし具合も悪くありません。ただ……」

 「ただ?」

 嘘をついても相手は海千山千の強者ばかり。きっとバレてしまう。ここは正直に言うしかない。

 「……どうしてかはわからないのですが……殿下のお顔を見たら急に胸がぎゅうっと締め付けられて、悲しくなってしまったのです……申し訳ありません……!!」

 正直に言ってみたがよく考えるとこれは殿下にとっても失礼なのでは……。
 ち、違うの殿下!!どうしようきっと怒ってるに違いな………え………?

 慌てて謝ろうと殿下を見ると殿下は目を細め、その口元は緩やかに弧を描いていた。
 



 
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