侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第二章

14 跡を辿る

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 驚いた。
 二度の人生でこれほど驚いたのは初めてではないだろうか。

 殿下の宮まで走った私の足元はやはり土埃で汚れていたが、すぐ後にやってきた人を見て私もタミヤも目を見開いた。

 「「で、殿下……!?」」

 「……ああ……」

 息を切らしてやってきた殿下の靴は土埃にまみれ、しかも頭には葉っぱまで付けている。
 そして殿下は私を上から下まで見た後に呟いた。

 「……ルートが違ったか……」

 ルート?ルートって何ですか?
 
 「いや……待たせたな。さあ中へ。」

 「は、はい。」

 (全然待ってないんだけど……。)

 殿下の部屋の前に着くと彼は胸元から銀色の鍵を取り出した。
 (銀色の鍵……それに石の色が違うわ……)
 今生でルーがくれた金の鍵。それにはめられていたのは光を受けて七色に輝く透明な石だった。でもこの石は……
 (私の……私の瞳の色だわ……)
 まさか殿下が私の瞳の色を選んでくれたのだろうか。信じられない思いが頭の中を駆け巡る。
 (でもこの鍵を決められるのは殿下だけだわ……本当に殿下は私を……)
 
 「……アマリール……!?」 

 銀色の鍵に視線を向けたまま、アマリールの顔は前世に戻って初めてルーベルを目にしたあの日のようにくしゃくしゃに歪んだ。
 (殿下がびっくりしてる……でも止められないの……本当にどうしちゃったんだろう、私……)
 辛い記憶しか無かった。それがずっと後ろから私の足を引っ張るようにして付いてきた。
 でも本当は違っていた……。目の前の鍵も証拠の一つだ。
 不遇を嘆く前にもっと何か出来たのではないだろうか。そうすれば殿下をあんな目に遭わせる事は……。
 後悔なのか同情なのか……それとも愛情なのかも自分でわからない。
 でも一つ一つ、彼の気持ちが残した跡を辿るように目にするたびに、胸の奥からとめどない感情が湧き上がる。
 けれどポタポタと足元を涙で濡らす私を殿下は何と……最上の笑みで抱き締めたのだ。

 「……殿……下……?」

 「……あの時は俺を……今度はこの鍵を見て悲しくなったの……?」

 正確には違うのだが間違ってもいない。
 殿下の胸の中でコクンと頷くと、抱きしめる手は少しだけ強くなった。

 「……いいんだ……それでいい……」

 そして殿下は私の肩を抱き、部屋の扉を開けた。

 「……さあ、中へ入ろう。タミヤ、茶の用意を頼む。」

 私達の一部始終を見ていたタミヤの口はポカンと開いていた。まるで幻覚でもみたような顔をしてる。
 しかしルーベルの言葉で我に返ると急ぎ足で準備をしに戻った。



 
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