侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第二章

17 誘い

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 高熱のせいで週に一度の殿下とのお茶会を休んだ私に、衝撃の出来事が起こった。
 何と……殿下から見舞いの花と手紙が届いたのだ。
 (……こんなの噓だ……でも間違い無い……)
 真っ白い封筒に書かれていた文字は、まだ完成されてはいないが殿下の筆跡だった。
 彼が私宛に手紙を寄越したのは初めての事。あのルーでさえ私に手紙なんてくれた事はない。
 封を開けようとする手が震える。心臓までおかしなリズムを刻み出した。

 “アマリールへ”

 神経質そうな美しい字体。
 前世は書類でしか見た事はない。
 彼の愛を欲しがっていたあの頃……彼の書くこの文字にさえときめいていたのを思い出す……。

 “熱を出したと聞いた。
 身体は大丈夫か?
 その症状が以前起きた事故と関係ない事を願っている。   ルーベル”

 手紙には花が添えられていた。

 「皇太子殿下の贈る花にしては……何だかその……」

 ララが言うのも無理はない。
 添えられていたのは小さく赤い蕾の薔薇。
 きっと開く前のものをわざと贈ったのだろう。
 苺にそっくりなこの状態を私に見せるために……。

 嬉しいとは思う。でも彼の本心を知ってしまった後ではとても複雑な気持ちだ。
 あの冷酷な彼が“リル”のためならばここまで心を砕くのだと……。
 
 「熱が下がったらお返事を書かなきゃね……」

 私はララが生けてくれた薔薇を見つめながら、返事はどんな事を書こうかとぼんやり考えていた。


 **


 すぐに下がるとたかくくっていたら、何と高熱は五日も続いてしまった。
 すっかり身体も弱ってしまい、ベッドから降りれるようになってもふらふらとよろめいてしまう。それを見かねたお父様が、“今週も殿下のお茶会はお断りする”と言ってきた。
 二度のお断りは失礼だと思いつつもこの状態では仕方がない。私は大人しくそれに従う事にした。
 確かにこれでは皇宮へ行っても迷惑をかけるだけだ。
 殿下にはお見舞いのお礼と再びお茶会をお断りする謝罪の手紙を送った……のだが……
 
 人生は小説よりも奇なり。
 何と二度の人生で彼から一度も貰えなかった直筆の手紙。それを二度も貰う事になるとは。

 “アマリールへ”

 一度目の衝撃に比べるとやや落ち着いたが、やはり彼の筆跡を見ると胸が騒ぐ。何故なのだろう。本人を目の前にするよりも緊張してしまうのは……。

 “やっと熱が下がって良かった。
 来週なのだが皇宮で騎士達による公開の模擬戦が行われる。一緒に観よう。待っている。  ルーベル”

 手紙にはそう書かれていた。
 模擬戦……騎士団の皆様の年に一度の見せ場でもあるそれに私が……?
 “一緒に観よう”とは一体どういう事なのか。
 私はまたしても手紙を前に悩むのだった。



 

 





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