侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第二章

18 ばったり

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 殿下が誘って下さった模擬戦とは、エレンディール帝国で開かれる皇帝主催の武芸試合の事である。騎士団に所属する者達が磨き抜かれた技を競い、その勝者には皇帝より直々に褒美が下賜される。
 (そんな場所に私が……?)
 しかも一緒に観ると言う事は、私に皇族の皆様の観戦席に参列しろと……?

 「これは……ちょっと……」

 殿下からの手紙を読んだお父様も頭を抱えてしまった。
 それもそのはず。せっかくのお誘いを断るのは不敬にあたるし、かと言ってお受けすれば私は殿下の“特別”として帝国内外から注視される事になる。

 「まだ身体も本調子じゃないし、別席での観覧にさせてもらえるようお手紙を書いてみる?」

 「そうだなあ……途中退席するかもしれないからとお願い申し上げてみようか……」

 駄目元で手紙を出すと、殿下は案外すんなりと納得してくれたようだ。
 しかし必ず皇族席に顔を出すようにとの事。
 ご挨拶で済むのなら随分気が楽だ。
 私は能天気にも初めて参加する模擬戦の日を楽しみにしていた。


 ***


 そして模擬戦当日。
 快晴に恵まれてとても気持ちのいい朝だ。
 私はいつもより早起きしてお父様と会場である皇宮の広場へと向かった。

 「わあ……凄い人!」

 今日だけは皇宮の広場も一般開放される。皇宮の周囲には出店も出て美味しそうな匂いが辺りに漂っている。まるでお祭りのような雰囲気に心が弾む。

 「私達の席は……ああ、あそこだね。」

 お父様が指差したのは貴族専用の観戦席。 
 自分で言うのも何だがクローネ侯爵家は一応名門。案内されたのは試合の様子がよく見える前列の席だった。
 皇族席を見るとまだ誰もお見えになっていないようだ。

 「お父様?少しだけ周りを見て来ても良い
?」

 「ええ!?」

 「お願い少しだけ!すぐ戻るから!」

 「……あまり遠くへ行ってはいけないよ。それと決して走らない事。守れるかい?」

 「はいお父様!」

 こんなに賑やかな皇宮は初めてだ。
 ここにはあまりいい思い出がなかったが、何だか今日はとても良い日になりそうな予感がする。

 そう思っていたのだが……



 「あっ♡あぁん♡♡あん♡♡」 

 (!?)
 
 広場の混雑に紛れると迷子になりそうだったので、貴族席の近くを歩いていたらいきなり聞こえてきたとんでもない声に足が止まる。
 (……女の人の泣き声……?)
 何かあったのだろうかと耳をすますと……

 「やぁぁん♡♡そこ……そこはダメぇ♡♡」

 (こっ、この声は……!!)
 何て事だ!騎士達が誇りをかけて競う神聖なる模擬戦の日に、こんな所でこんな事を致しているなんて!!
 (と、とんでもない不届き者だわ!!)
 辺りには肌と肌がぶつかり合う音が派手に響き、女性の声もどんどんと間隔なく大きくなって行く。
 (早くあっちに行かなきゃ!!)
 覗きでもしてると思われたらたまらない。
 くるりと向きを変えたその時だった。

 「あっ♡♡そんな…そんな格好いやぁ♡♡エクセル様ぁ♡♡」


 (………………?)

 
    
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