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第二章
21 初めての感情②
しおりを挟むいきなり立ち上がった皇太子に周囲がざわめき一斉にその視線を追う。
瞬時に自分達に注目が集まった事に気付きアマリールは慌てた。
「こ、公子!?何だか凄く見られています!!」
「うん、そうだね。しかしこれは凄いなー。殿下、俺の事射殺すような目で見てるよ。」
「えっ!?」
公子の言葉に皇族の方々の席を見ると……
(……こ、怖いっっ……!!)
何と殿下が皇族席で一人立ち上がりこちらを睨み付けている。
「公子!下ります!!下ろして下さい!!」
このまま公子の腕の中にいたらお互いに絶対マズい。かつてない命の危機を感じる。
「いや、面白いからこのまま君の席まで連れて行ってあげるよ。」
「は!?」
(正気!?正気なのこの人!?)
少し離れた所では父の青い顔が見える。
(ごめんなさいお父様!悪気はないの!事故よ!そう、事故なの!!)
アマリールは心の中でひたすら謝っていた。
**
「ルーベル、何をそうカッカしているのだ。みっともないから座りなさい。」
未だ血が上ったままの頭を何とか落ち着けてルーベルは着席したが、視線はアマリール達から離れてはいなかった。
注目を浴びる二人を見て周りからヒソヒソと声が聞こえる。
「あの御令嬢は誰だ?見た事がないな……?」
「アドラー殿の御子息と一緒のようだが……おい見ろ!クローネ卿の御令嬢だ!」
「何と……まだ幼いがあれは将来美しくなるぞ……これは週明けにもクローネ卿の元に縁談が殺到するのではないか!?」
しかし騒ぎ出す周りを牽制するようにルーベルはダンッ!!と肘置きを拳で打ち付けた。
(……噂の令嬢ってあの子なのね……。エクセルったら、面白がってわざとやってるわね!もう、本当に仕方の無い人……)
普通なら将来主君となる弟の形相に怯えるところだがそれを楽しんでいるのだ。まったくあの幼馴染みの肝の座ったところには脱帽する。
クロエは溜め息をつきながら笑った。
「とっても可愛い子ね、ルーベル。」
けれど返事はない。そしてルーベルはわかりやすくふくれっ面だ。
自分の周りにはどうしようもない男が本当に多い。クロエは心の中でまた笑ったのだった。
**
「お久しぶりですねクローネ卿!途中偶然お嬢さんとお会いしまして。入り口はあの通り危ないので失礼ながら抱き上げてお連れしました。」
「い、いやアドラー公子。娘がとんだご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありません。ほら、アマリールもお礼を言いなさい。」
いや、ご迷惑はかけてないと思います。どちらかと言えば公序良俗に反する行為をがっつり見せられた私のほうが迷惑かと。
しかしそんな事はとても言えないので素直にお礼を言う事にした。
「アドラー公子、ここまで送って下さって本当にありがとうございました。模擬戦、ご武運をお祈りしています。」
熱くは言ってないから茂みに連れ込まれる事はないだろう。いや、ない。……多分。
「ありがとう。今度ゆっくりお茶でもしよう!ではまた!」
そう言って公子は颯爽と騎士の控え室へと戻って行った。
周りの視線はまだ痛かったが、一番痛いのがまだこちらを見ている。
(……どうしよう……)
クローネ親子は今絶望の淵に立っていた。
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