侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第二章

23 いざ、皇族席へ

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 「ご観戦の最中大変失礼致します。お久しぶりですねアマリール様。」

 なんと私を迎えに来たのは宰相閣下だった。
 側近のどなたかが迎えに来るだろうとは思っていたが、まさかの大物の登場に私達は慌てた。

 「オーブリー閣下自ら……お手を煩わせてしまい申し訳ございません……!」

 しかし閣下は優しく微笑まれた。

 「いえいえ。殿下がもう大変でして……ふふ。アマリール様、どうか私と一緒に来ていただけますか?」
  
 「あの……私だけですか?」

 お父様は一緒ではないのだろうか。

 「ええ。クローネ卿、申し訳ありませんがアマリール様をお預かりさせていただきますよ。大切にお守り致しますからご心配なさらずに。」

 心配するなと言ってもあの殿下の様子を見てしまったらそれは無理だろう。お父様は何か言いたげな顔をしていたが、それを飲み込むようにして最後には閣下に頭を下げた。

 「では参りましょう。」

 閣下の言葉に私はドクドクとうるさい胸を押さえながら殿下の元へと向かったのだった。


 **


 皇族の皆様の席は他の席よりも高い位置にあり、私は閣下に手を引かれながらまだ子供の短い足で一生懸命階段を上った。
 パッと視界が開けたかと思うと目の前に皇族の皆様方の座る椅子の背もたれが見える。
 (……ついに来てしまった……)
 今日は皇帝陛下と皇后陛下、そしてお二人のお子である殿下と姉のクロエ様だけではない。第二皇妃トリシア様とそのお子の皇女殿下お二人も同席されている。
 (……倒れそう……ダメかもしれない……でも……)
 でもクロエ様はとてもお優しい方だったのは憶えている。隣国ローランの第一王子の元へ嫁がれるまでの僅かな時間しかご一緒できなかったけど、殿下に放ったらかしにされて皇宮でひとりぼっちだった私にいつも良くして下さった。
 (……だからきっと大丈夫。大丈夫よ……!)
 女は度胸だ。私はぐっと覚悟を決めた。

 「殿下、アマリール様をお連れいたしました。」

 閣下の呼び掛けに皆様が振り返る。

 「おお、アマリールか!よく来たな。」

 陛下が機嫌の良い声で私を呼んだ。
 続いて皇后マデリーン様も

 「アマリール、もう身体は大丈夫なの?」

 殿下とのお約束を二週連続で休んでしまったのをご存知なのだろう。けれど笑顔で迎えて下さった。

 「はい。流行り風邪でも引いたのか、なかなか熱が下がらなくて……でももうすっかり良くなりました。」
 
 うぅ……視線が痛いわ……。
 一番痛い方はとりあえず置いといて、第二皇妃トリシア様は扇で口元を隠し、目だけで微笑んでいる。そして隣の皇女殿下お二人は好奇心丸出しの顔で私を見ている。
 とにかく観戦の邪魔をしてしまった事を侘び、頭を下げると頭上から明るい声が降ってきた。

 「アマリールちゃんね。とっても可愛らしいわぁ。さあ、こっちにいらっしゃい。」

 そう言って手招きしてくれたのはクロエ様だった。
 殿下は相変わらず不機嫌そうだしどうしたら良いのかわからず戸惑っていると

 「……座れ……」

 殿下が自分の隣……より少し後ろに置かれた椅子を顎で示した。
 (えっ……。ご挨拶だけじゃないの……!?)
 一緒に観戦なんて聞いていない。ここは皇帝陛下とその親族のみに許された場所である。
 しかしまごまごしている私に殿下は尚も座るよう促す。
  
 「さあ、アマリール様。お座り下さい。」

 (そう言えばいつの間にか宰相閣下の私に対する敬称が“様”になってる……どういう意図なんだろう……)
 閣下に椅子まで引かせてしまったらもう断る事など出来はしない。

 「ありがとうございます。」

 私は殿下の斜め後ろへと腰を下ろしたのだった。


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