侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第二章

29 雨の庭

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 小降りになってきたものの雨は夜が更けても止む気配が無かった。
 緊張のせいなのかベッドに入ってもう随分経つが、アマリールはなかなか眠れずにいた。

 クロエ様……本当に凄いわ……。
 あんなにおっとりしてるように見えてきちんと人を……現勢を見ている。 
 男には男の、女には女の戦い方があるのだと教えられたような気がして身が引き締まる思いだった。

 「……それにしても……何だか思い出してしまうわね……。」

 クロエ様のこの宮は、私が前世で殿下に嫁いでから離宮へ移るまで暮らした宮とよく似ている。
 そう。たった一度だけ殿下に抱かれたあの宮に……

 暗く沈み始めた気持ちを紛らわそうと、庭園に繋がる大きな窓を開ける。小さくなってきた雨粒がポツ、ポツと薔薇の葉にあたっているのだろう。可愛い音を立てていた。

 あの頃殿下は何を思って過ごしていたんだろう。
 私に忘れられ、身内に嘘を吹き込まれ、ただでさえ疲弊している心と身体を抱えながらどんな気持ちで……。 
 ……どんな気持ちで私を抱いたんだろう……

 辛いのは自分だけだと思っていた。
 でも違う……。私よりも殿下の方が辛かったはずだ。
 たった一人でリルを待ち続けたのだ。それはどれほどの孤独だっただろう。
 もっと話せばよかった。嫌われても避けられても諦めずにまとわりついて“愛している”と伝えればよかった。
 例え彼が求めているのがリルであったとしても、私の気持ちを伝え続ける事で彼の孤独をほんの少しだけでも拭ってあげる事は出来たはず。それなのに……
 それなのに私は彼に一言も告げなかった。何で言えなかったんだろう……『あなたが好きです』と。『愛し愛されたい』と。
 そう……私は殿下が好きだったんだ……。
 それなのに何もせず振り向いてくれるのを待って……。
 馬鹿だ……本当に大馬鹿だ……。
 呼んであげたかった。この声で何度でもあなたの名前を。

 「ルー……!!」

 今更後悔なんてしても仕方ないのに。
 それなのに涙は勝手に流れ出て行く。
 会いたい。置いて来てしまったルーにも、もう会えないあの頃の殿下にも……

 「……会いたいよ……ルー……」




 「……今……何て言った……?」




 「……………え…………?」

 「今何て言った!?アマリール!!」


 雨音しか聞こえない深夜の庭。
 いるはずのないその人が立っていた。


 「………殿下………!」






 
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