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第二章
32 容疑者ルーベル
しおりを挟む「お前、アマリールはまだ七歳だろう!?」
知ってる。
「どうしましょう陛下……クローネ卿に何て説明したらいいのかしら……!」
寝落ちしただけだと説明してくれ。
「何で我慢できないの?せめて婚約してからじゃなきゃダメよって言ったでしょ?」
我慢て何のだ。元はと言えばこれは姉上のせいでもあるんだ。アマリールの訪れを俺に一言知らせてくれればよかったのに。
クロエに連行されたルーベルは現在家族に囲まれ説教を受けていた。
理由はベッドで抱き合って眠る二人を見た侍女が若干騒いでしまったせい。
「……私の宮に来てまだ日の浅い子だったから騒いじゃったのよ。早く何とかしないとアマリールちゃんに傷が付くわ。」
「ちょうどいいじゃないか!クローネ卿も娘の婚約を渋っていたが、こうなってしまったのなら腹を括るだろう。ルーベルもでかしたぞ!」
「陛下ったらもう……!娘を傷物にされた父親の気持ちも少しは考えて差し上げないと……」
………一体これは何の茶番だ………
ルーベルは苦虫を噛み潰したような顔で目の前の家族を見ていた。
あら困った心配だと言いながら全員微笑んでるじゃないか。しかも傷物って。何もしてないだろうが。
父母に至ってはゴリ押してでも結びたかった婚約を、あたかも俺だけのせいにして進められるから最高に気分がいいだろうよ。
「さてルーベル、どうするか。」
(“どうするか”じゃないよまったく……。)
父がこういうニマニマした顔で答えを聞いてくる時は決まってる。俺が自分の望むとおりの行動をとるとわかってる時だ。
「……無理強いはしたくありません。ですがアマリールが望むならすぐにでも国民に向けて婚約を発表します。」
「あらぁ、じゃあもう決まりじゃない。だって模擬戦の日に言ってたもの。ルーベルが好きだって、ね?」
うるさいんだ。だいぶ前から知ってるけどうるさいんだよ姉上。
「まあアマリールったら!それならそうと早く私に言ってくれればよかったのに……!!陛下、すぐにクローネ卿をお呼びしましょう!日取りを相談しなければ!」
母の顔はこれ以上ないほど嬉しそうだ。
クローネ卿がアマリールを溺愛してるのは有名な話。その証拠にアマリールが生まれる前の卿はまるで別人だったと誰もが言う。
そんな卿ならアマリールのためにその財を使う事を惜しまないだろう。
つまりはこういう事だ。アマリールが皇宮に入れば卿の手は届かない。それならば卿はどうやって愛する娘を守る?それは皇宮内でアマリールを庇護する者に託される。
母上の狙いはそこだ。皇宮でアマリールの平穏を脅かす者から守り可愛がる事で卿からの信頼を得られれば、父が死んだ後も母上は絶大な権力を誇れるほどの財を手にできるだろう。
(……あいつを守ってくれるのは有り難いが、その考え方にはうんざりする……)
しかしそううんざりもしていられない。
自分達の婚約は必ずや欲にまみれた人間達の間に争いを起こす。
「アマリールと婚約するにあたっていくつか提案があります。それについて話しをさせて下さい。」
そしてルーベルは口を開く。
自分と共に歩く道を選ぶ事で、これからその身に降りかかるであろう災難からアマリールを守るために。
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