侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第二章

39 皇太子妃宮①

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 皇宮に着くと入口は馬車でごった返していた。それぞれの車体にはどれも家紋が刻まれている。皇后陛下のお茶会に招待された貴族の皆様のだろう。

 「行くぞ。」

 殿下はそう言って回廊を歩き出した。
 
 「庭園を突っ切りたいところだが茶会の客と出くわすかもしれない。」

 なるほど。
 確かに私と二人で歩いているところを見られたら、いちいち説明するのも面倒だ。

 「馬鹿かお前は。そんな事が面倒なんじゃない。お前の格好だ。」

 「え?格好?」

 だって“支度はいらない”って手ぶらで来させたのは殿下じゃないの。
 支度しなくていいって事はお茶会も出なくていいって事だと思ってたのに……違うの?

 「いいからついて来い。」

 しかし殿下は何も教えてくれない。
 ひたすらに皇太子宮に向かって歩いて行く。
 そして宮が見えたところで殿下は方向を変えた。どうやら向かう先は皇太子宮の先にあるようだ。
 (……まさか……。)
 皇太子宮より少し斜め後ろに建つそこは、昔私が一人淋しく過ごした場所。
 (……皇太子妃宮だわ……)
 その姿が現れた途端身体に震えが走る。

 「どうした?」

 「いえ……あの殿下?ここは……?」

 「今日からお前が住む場所だ。」

 「ここに私が……」

 予想していなかった訳じゃない。
 けれど久し振りに見る外観はあの頃のままで、思い出すと胸がズキズキと痛んだ。

 「さあ、こっちだ。」

 殿下が案内してくれたのは宮の中心に位置する部屋。
 見なくても知ってる。真っ白で淋しい部屋。
 調度品に至るまですべてが白くて、色の無い空っぽの私達の関係そのもののような部屋だった。

 「どうした?早く入れ。」

 立ち止まる私に殿下は部屋に入るよう促す。
 (今と昔は違うわ。大丈夫……大丈夫……)
 自分に言い聞かせながら足を踏み入れた瞬間、私は自分の目を疑った。

 「うわぁ……!!」

 目の前に広がるのはうっすらと色づくピンク色の壁。カーテンは外側に贅沢な白のレースと
内側は壁よりもくすんだピンクに大輪の花が刺繍してある豪奢なものだ。
 調度品は白で品良くまとめられているがところどころに明るい差し色があり、それが少女と呼ばれる年齢の私にぴったりでとても素敵だった。

 「どうだ、気に入ったか?」

 気に入ったなんてもんじゃない。
 何より元の部屋の面影がまるでない。
 確か内装は彼がすべて決めたと言っていた……。
 (これを全部殿下が……殿下が私のために……)

 「う………」

 「う?」

 「うぅぅ……」

 「うぅぅ?」

 「うぅわぁぁぁぁぁん!!」

 「嘘だろ!?そんなに気に入らなかったのか!?」

 いきなり泣き出したアマリールにルーベルは狼狽うろたえた。
 (違うの……そうじゃないの……ごめんなさい殿下!!)
 けれど溢れ出る涙は止められない。
 だってあの時の私達はもうどこにもいやしない。淋しく泣き震える私はこの世界にはいないのだ。

 「殿下……殿下ぁぁ!!大好きぃぃ!!」

 「お、おお!そうか!」

 そしてルーベルは戸惑いながらも泣きながらタックルしてきたアマリールを優しく抱き止め慰めた。
 “男は言葉より行動”。殿下の言葉にも一理どころか何理もあるわ。
 これは早々に前言撤回かもしれないと、私は殿下の胸で泣きながら考えていた。




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