侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第三章

5 贈り物

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 一週間の滞在期間はアドラー公子のお陰もあってワイワイ楽しくあっという間に過ぎた。
 最終日、公子が領内にある市場に行きたいと言うので一緒について行く事にした。

 「付き合わせてしまって申し訳ない。けれど妃殿下が一緒だと商人も“とっておき”を出してくれるんですよ。」

 “とっておき”。
 公爵家出身の彼が言うとっておきならそれは相当な品物だろう。
 この市場では商会に卸す基準に満たない品を格安で売っている。言われなければ気付かないようなほんの少しの粗や傷があるだけで、正規の値段の十分の一ほどで売られる物もある。
 目利きの人間が目の色を変えて集まる場所だ。
 そしてアドラーが向かったのは陶磁器の店。
 店主はアドラーを見つけるなり叫んだ。

 「やあ色男!探してたやつ入荷してるよ!」

 「探してたやつ?」

 アマリールはアドラーの顔を見た。

 「中に入りましょう。“とっておき”がみれますよ。」

 店主が案内したのは店の奥。
 出店の形を取っているこの店の中に人が出入りする事はまずない。
 (……という事は、公子はお得意様なのね。)
 きっと特別な注文……値の張る物などを頼んだ客だけが奥へ通されるのだろう。

 「さあ見て下さい。苦労したんだから!」

 そう言って店主が出して来たのは大輪の白い花が絵付けされた美しいティーセット。
 しかもとても軽くて堅い。

 「綺麗……すっごく素敵だわ!!」

 「お嬢さんさすが!目が肥えてるねぇ!これは最近開発された技法で作った物でね。まだどこにも出回ってないんだよ。」

 「そんな物をいいの!?」

 万が一公子が製造法ごと横流ししたらえらいことになる。
 しかもこの市場はバッチリお父様の監視下だ。領主の娘にバラしちゃって大丈夫なのか。アマリールは慌てた。
 しかし店主はガハハと笑う。

 「この色男にはたくさん恩があるからね!大丈夫さ。悪い男じゃない。」

 店主が言うには公子がこの市場に立ち寄るようになってから、困っている人を助けたり物騒な輩を退治してくれたりして大変助かったそうなのだ。

 「恩がある割に高いんだよ。妃殿下からも何とか言ってくれません?」

 「まあ!公爵家のご長男ならこれくらい余裕でしょ?」

 「ははっ。まあね。」

 公子は何だかんだ言って店主の提示した値段を支払っていた。
 それでも多分店主も大分値引きしてあげたのだろう。
 恩がどうこうというより公子の人柄を気に入っている様子だった。
 (老若男女を虜にする男……さすがだわ。殿下も少し見習ったらいいのに……)
 しかしそんな事を言おうものなら倍返しどころか明日も見えないくらいに叱られる。だからアマリールはいつもアドラー関連の話はむやみやたらにしない事にしているのだ。

 「どなたかに贈り物なのですか?」

 店主がティーセットを包んでいる間にこっそり聞いてみる。すると

 「ええ。特別な人だから、ありきたりなものじゃ駄目なんです。」

 「公子にそんな人いるんですか!?」

 アドラーの口から出たあまりに衝撃的な一言。食い気味に叫んだアマリールにアドラーは笑う。

 「あのね、俺を何だと思ってるの?」

 「何でも来い誰でも来いどんと来いな人だと思ってます。」

 「……それは光栄です。」

 それは一体誰への贈り物なのか。
 アマリールはとても気になったが、聞いても答えてくれなそうな雰囲気だったため諦めたのだった。

 



 

 
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