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第三章
6 不確かな未来
しおりを挟むそして皇宮に帰る日が来た。
「じゃあアマリール、次に会うのは殿下の成人の儀だね。」
この四年で私を見送る事に少しだけ慣れた父だったが、やはりこの瞬間だけは駄目なようだ。
「そんな顔しないでお父様。お嫁に行くまで時間はまだたくさんあるわ。すぐまた帰ってくるわよ。」
しかしそこですかさずアドラー公子が口を挟む。
「お言葉ですが……気軽に帰って来れるのももしかしたら今回が最後かもしれませんよ?」
「どうしてですか公子?」
「殿下はもう成人だ。これでいつでも妃殿下を妃に迎える事が出来る。」
「でも私まだ十一歳ですよ!?」
「いやいや、年齢なんて関係ないさ。」
そりゃあなたなら年齢差で生じる障害を……例えそれがあっち方面の事でも何とか埋める事が出来る色んな技をお持ちなんでしょうけど殿下はそんな……
「殿下も男ですからね。男ってやつは独占欲の強い生き物なんですよ?例え形だけでも自分のものにしておきたいもんなんです。」
「やめて下さい公子。雰囲気読んで。」
お父様は涙目だ。
世話になっておいてこの仕打ちは何だ。
「あはは。でもまあ本当に、無い話しじゃないから。クローネ卿も覚悟が必要ですね。」
「ええ……」
お父様はメソメソグスグスしながら頷いた。
「大丈夫よお父様。殿下だって私が成人するくらいまでは待っていてくれるわ!」
明るく言ってみるがアマリールの心の中は複雑だった。
(……殿下は本当に記憶の無い私と結婚する気があるのかしら……)
『俺は絶対にお前を逃がすつもりはない。』
七歳のあの日、殿下は私にはっきりとそう言った。
(キスだってしたわ……たった一度だけど……)
けれどそれ以降二人の唇が重なった事は一度もない。
そういう雰囲気をわざと避けてるようなフシも感じられる。
アマリールはここのところ少しだけ不安を感じていた。
前世と違う事が起きている今、彼と私も以前とは違う道を辿る可能性が無いとは言い切れない。
(殿下が私を選ばない可能性だって……)
もしそれで皆が幸せになれるというのなら……あの悲惨な結末を辿らずに済むと言うのなら自分には何も言う事は出来ない。
(でも私は……今の私は殿下を……)
もしかしたら彼が他の女性と幸せに生きる姿を見る事になるかもしれない。
プルマは彼を救ってあげてと言ったが、彼を救う事が私と結ばれる事だとは言わなかった。
私達が結ばれる運命だとも……
もし……もし彼が私じゃない誰かを選んだら?
そんな事になってしまったら私は耐えられるのだろうか。
アマリールは沈む心を隠しながら父親に別れの挨拶を告げたのだった。
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