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第三章
16 破廉恥アドラー捕獲大作戦①
しおりを挟む「いない!!」
ドレスをまくり上げて皇宮内を走り回り、アマリールはゼエゼエと息を切らしながら怒っていた。
会いたくない時は嫌というほど出くわすのに(もちろんあちらは情事中)会いたい時には一向に会えない男それがアドラー公子。
皇宮内にいないとなるとあとは首都にある第一騎士団の屯所かアドラー公爵邸のどちらかだ。
(どうしよう……外出するには殿下の許可がいるしそれに……)
何より外出目的が“アドラー公子に会いたい”となると、ルーベルは怒るだけでなく拗ねに拗ねて向こう一ヶ月は口を聞いてくれなくなるだろう。
しかし事態は一刻の猶予も許さない。
こうしている間にもクロエの縁談は進んでしまっている。
(こうなったらもうあの人に頼むしかないわ!)
そしてアマリールは最後の手段として考えていたある人物の元へと再び激走したのだった。
*
決して見つかる訳には行かない。しかしここは見つかってはいけないその人の言わば本拠地である。行動には細心の注意を払わなければならない。
アマリールは隠密行動に向かない色味が派手な自分の容姿を恨みつつ柱の陰に隠れ、ある人が回廊を通るのをひたすらに待った。
待ち続ける事数十分。ようやくその時はやって来る。余計なおまけ付きで。
「ではこちらについては陛下の判断を仰ぎます。」
「ああ、頼んだ。」
声が聞こえてきた瞬間全身の毛が逆立つ。
(で、殿下!)
これはまずい。アマリールは慌てて息を思い切り吸い込み、身体を縮こめるようにしてドレスの裾をかき寄せ小さく潰した。
そう。ここは絶対に見つかってはいけないルーベルの執務室がある回廊近く。しかしそれなのに何故アマリールはここに来なければならなかったのか。その理由は今ルーベルの隣に立つ男性にある。今回の……題して“破廉恥アドラー公子捕獲大作戦”の成功を握る鍵であり、現在進行中の隠密作戦のターゲットであるモノクル男ゲイルだ。
アドラーと幼馴染みのゲイルなら、彼が今どこで何をしているのかもきっと把握しているはず。そしてアマリールを誰にもバレずに皇宮から出す事が出来るのも、今の所彼以外には考えられない。
(お願い殿下!早く執務室へ戻って!)
祈るような気持ちで待っているとやがて会話は途切れ、扉の閉まる音が辺りに響いた。
聞こえてくるのは神経質そうな音を立てる一人分の靴音。
アマリールが恐る恐る柱の陰から顔を出してみると……
(やった!!)
先程の話から推測するに、ゲイルはおそらくこれから陛下の元へ向かうのだろう。一人執務室に背を向け歩き出したのだ。
アマリールはもう一度執務室の様子を伺い、誰も出て来ない事を確認するとゲイル目掛けて一目散に走った。
「ゲイル様!」
「え?アマリール様!?」
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