侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中

文字の大きさ
111 / 125
第三章

18 破廉恥アドラー捕獲大作戦③

しおりを挟む







 起きると既にルーベルの姿は無く、アマリールはこんな日に寝坊してしまったかと慌てた。しかし寝坊というほど寝過ごしてはいなかったようだ。

 「大丈夫ですよアマリール様。殿下も先程出られたばかりです。」

 事情を知るタミヤが笑顔で教えてくれる。

 「良かったわ。じゃあ早速支度をお願い。」

 「お任せ下さい!」

 昨日タミヤと相談し、今日は“お忍びで街に遊びに来た貴族のお嬢様スタイル”にする事にした。
 久し振りの動きやすいワンピースに心も弾むようだ。

 「よくお似合いですわ。」

 「ふふ、ありがとうタミヤ。」

 誰にも見つからないようこのワンピースを手配してくれたのも彼女だ。
 (タミヤは本当に優秀な侍女だわ)
 きっと以前の生でもそうだったのだろう。
 何だか急に胸が締め付けられるような懐かしさでいっぱいになった。

 「……あなたにも殿下に秘密を作らせてしまってごめんなさい。でも何かあっても必ずタミヤは私が守るから!」

 タミヤは己の手を両手で握る少女を見て目を細めた。
 側に仕えて四年。目の前の少女は随分成長したが、何事にもひたむきで一生懸命なところはぜんぜん変わらない。きっとこの先もそれは変わらないだろう。

 「はい。タミヤはずっとアマリール様にお仕えしたいのです。ですから今日の事がうまくいくようにここから祈っております。」

 
 **


 アマリールが朝食を終えて少しした頃、皇太子妃宮に一人の男がやって来た。

 「ゲイル様から遣わされました。サンと申します。」

 サンと名乗ったその青年はゲイルの実家オーブリー宰相家に仕える者だと言う。
 
 「それじゃサン、どうやってバレずに皇宮の外へ出るの?」

 金髪菫目のド派手な自分を一体どんな手を使って外に出すのだろうか。アマリールはドキドキしながらサンの答えを待つ。

 「何て事はありません。担いで出ます。」

 「……は?」

 今この子(いや青年だけど)何て言った?
 担ぐ?担ぐって何よ。よいしょって肩に担いで皇宮出るって?バカ?サンはバカなの?
 もはや絶望的な予感しかしないアマリールの目の前に、サンはバサッと音を立てて麻袋を広げた。
 
 「これに入って貰います。」

 「サン……」

 「はい。」

 「これでバレないって本当に思ってるの?」

 「はい。」

 「一応聞くけどあなた本当にゲイル様のところから来たのよね?」

 「はい。」

 あ、頭が痛い。でもあのゲイル様が寄越したからには信頼に足る人物であるのは間違いない。
 (ええぃ!女は度胸よ!!)
 
 「わかった!任せたわよサン!」

 こうしてアマリールは覚悟を決めて麻袋の中へと入ったのだった。

 *


 「あれは……」

 回廊を歩くルーベルは見知らぬ男に目を留める。

 「ど、どうしました殿下?(あれはサンじゃないか!!何でこんなとこ堂々と……それであの麻袋は何だ!?)」

 「いや……随分活きがいい麻袋だ……」

 「活きがいい?」

 ルーベルは担がれて行く麻袋を遠い目をして見つめている。
 (まさか……まさかあの麻袋は……アマリール様!?)
 サンは一番腕は確かだが人間的には癖が強すぎる。しかし必ず無事に殿下の元へ返すためには奴しかいないと送り込んだのが間違いだったかもしれない。
 (まさか気付かれてないよな……ん!?)
 背筋に悪寒が走り振り向くと、何と目が据わったルーベルが自分を見ていた。

 「で……殿下?」

 「ゲイル……今日は楽しい一日になりそうだ。」

 「は?」

 「昨夜はアマリールの宮で過ごした。」

 「そ、それはよろしかったですね!仲がよろしいのは何よりです!」

 「よく眠れてな……」

 「ええ!隈も取れてます!」 

 「なので今日も早目にあれの宮へ行こうと思う。」

 「早目にですか!?しかし今日も政務は山積みで……(早くはダメ早くはダメ!!)」

 「だが安心しろ。政務はいつもより多めに終わらせてやる。あれの驚く顔が見れるよう頑張るさ。」

 「……(早く捕獲されろエクセル。私の命が危ない……)」

 ゲイルは幼馴染みが速攻お縄に掛かる事を祈りながら瞑目めいもくした。

 
 **


 「……本当にこんな簡単に出れるなんて……」

 「だから言ったじゃないですか。あ、もうすぐアドラー様のお屋敷ですから。」

 サンは麻袋のアマリールを待っていた馬車に乗せ、スルリと皇宮の門をくぐってしまった。
 きっと身分証と通行証が相当しっかりしたものなのだとアマリールは推測した。
 しかし本当の目的はこれからだ。何が何でもアドラーを捕獲して帰らなければならない。そして捕獲するだけでは不十分。クロエと共に歩く決意をして貰わなければ。
 けれどアマリールにはずっと不思議に思っていた事がある。なぜアドラーはクロエに想いを告げずにここまで来たのかと言う事だ。
 模擬戦での女神のキス。高価な贈り物。一つ一つ拾い集めると想いを告げてるのと同じようなものなのに、肝心の事は何も伝えていないのだ。
 考えられるとしたらクロエからの反応を待っているのか……相手の幸せを第一に考えて何も出来ないのか……多分どちらかだろう。
 
 「お嬢、着きましたよ。」

 「えっ!?もう?」

 (まだ考え途中だったけど……でもこれ以上考えたって仕方ないわ。当たって砕けろよ!)

 「サン!いざと言う時はアドラー公子を力ずくで連れて行くからね!」

 「……この国最強の男ですよ……そこはあんまり俺に期待しないで下さい。」
 


 


しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる

狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。 しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で……… こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

処理中です...