侯爵令嬢は前世で冷酷夫だった皇太子に挿入られている最中に思い出す

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第四章

4 お誘い

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 ルーベルとアマリールがホールの中央へ向かうと、踊っていた人々は端によけた。

 「緊張しているか?」

 「……少し」

 会場中の視線が注がれている。この八年、ルーベルの婚約者としてありとあらゆる場に出席してきたが、場慣れはできてもダンスだけは緊張してしまう。それは相手がルーベルだからだ。
 二十歳を迎えたルーベルの身体はすっかり大人の男性のそれであり、密着するたびに胸板のたくましさや、支えてくれる腕の力強さを感じてどうしようもなく胸が高鳴る。
 それに、いつからかルーベルの美しい金の瞳に宿るようになった熱。
 それは人生が巻き戻る前、もう一人の彼から何度も向けられた熱と同じだ。
 彼は私を欲している。
 そう思うとどうにも気持ちが落ち着かなくなってしまう。

 「俺だけ見ていろ」

 だから、あなたを見ると緊張してしまうの。
 そう言えたらどんなにいいか。けれど、口にすれば彼はきっと喜んで、アマリールに可愛い意地悪を仕掛けてくるから今は言えない。
 ルーベルがステップを踏み出すと、人々は動きを止めて見入った。
 毎日息つく暇もないほど忙しい人なのに、こんなに優雅なステップが踏めるなんて。一体いつ、どこで練習しているのだろう。

 「なにを考えてる?」

 「殿下のことを」

 素直に答えたのが意外だったのか、ルーベルは微笑みながらぐっとアマリールの腰を引き寄せた。二人を見ている令嬢たちから黄色い声が上がる。

 「今夜は寝所に誘ってくれないのか?」

 耳元で囁かれ、腰から下に痺れるような甘い疼きが広がっていく。
 そういえば、最後に二人で眠ったのは去年の誕生日だった。
 幼い頃は『一緒に眠りませんか?』と気軽に誘えた。本当にただ隣り合って眠るだけだったから。
 けれどこの頃は……ルーベルの求めているものがわかるようになってからは、今までのように彼を寝所には誘えなくなっていた。
 だがルーベルはアマリールの考えなどお見通しだ。

 「……嫌ならなにもしない。それでも駄目なのか?」

 「今夜は遅くまで皆様と飲まれるのでは?」

 「お前の方が優先だ。今日はお前の誕生日だしな」

 朝まで一緒にいてくれるつもりなのだろうか。“嫌ならなにもしない”ということは、嫌でなければどうするつもりなのだろう。
 踊りながら悩めるほどアマリールは器用ではない。思わずルーベルの足を豪快に踏みつけてしまった。
 
 「も、申し訳ありません殿下!」

 「……そんなに身構えるな。大丈夫だ、なにもしないから。以前のように話しをして寝るだけだ」

 ああ、またこんな顔をさせてしまった。
 悪いのは殿下じゃなく、身体のことがあって踏み切れないアマリールの方なのに。

 「部屋に戻ったらタミヤに殿下の分の毛布を用意して貰いますね」

 「アマリール……ああ、そうだな。お前は寝相が悪いから、五枚くらい用意しておいた方がいい」

 「殿下ったらもう!」

 白い歯を見せて笑うルーベルの顔が、アマリールにはとても眩しかった。
 



 

 
 
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