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3章
16
しおりを挟む私が寝込んでいる間、公爵邸に色んな物が届いていた。
まずは王妃様から。上品な木箱に入って届いたそれの中身は外見とは相反する物だった。
「王妃様……これは………しかもこんなに……」
中は怪しい液体の入った透明な小瓶が山ほど敷き詰められ、用法・用量が記された説明書も同封されている。
【避妊薬
用法 事後48時間以内に飲むこと
用量 一瓶 】
王妃様………………。
こんなのお父様に見られたら泣かれるどころじゃ済まないんですけど……。
そしてユリシス様からはお見舞いの品が。
【マリー。シモンから体調を崩したと聞いたよ。
夜会に向けて少し無理をしていたのかもしれないね。滋養に良い物を贈るから、しっかりと休むんだよ。次に会える日を心待ちにしてる。】
箱の中には身体に良い貴重な食材が詰められていた。
問題はこれからだ。いや、王妃様からの贈り物もだいぶ問題アリだったが。
やはりユリシス様の言う通り届いていた。
貴族の皆さまからお茶会の招待状だ。
それにしても数がすごい。挨拶した覚えのない家からも届いていて文箱に入りきらないほどだ。
この中からお友達になる方を選ばないといけないのね……。
これはお二人の力を借りなければ無理だわ。
お返事をお待たせする訳にも行かないから、次のお茶会を早めにしていただこう。
私はお見舞いのお礼と次回のお茶会の日時について、お伺いの手紙をユリシス様に宛てる。
そして、シャルル様へは碧色の糸でシャルル様のイニシャルを刺繍したハンカチを包む。
本当は会ってお礼を言いたいけれど、それは病み上がりのこの身体では叶わないから。
何でだろう……寂しい。
六歳も離れているのに、いつの間にかシャルル様をとても頼りにしている自分がいる。
あの天使のような笑顔に会いたいと思っている自分がいる。
そうだ……もうすぐシャルル様、お誕生日なのよね。何か欲しいものとかあるかしら……でも王子様だから何でもお持ちよね………。
私の用意出来るものなんてたかがしれているけれど、お祝いの気持ちはお届けしたいわ。今度聞いてみよう。
そして数日後、ユリシス様より返信が届いた。
手紙には次の休日に、疲れた私の身体を癒す事と招待客の相談も兼ねて、王都から近い王家の静養地でゆっくりと過ごしたいがどうかと書かれていた。
二人きりなのかしら………。
しかも静養地に行くって事は泊まりがけよね、絶対に。それに……そういう事するっていう意味よね。
王妃様からの小瓶につい目が行ってしまう。
とりあえず、お父様に相談してみよう。さすがにあの父の事だからそう簡単に首を縦には振らないだろう。
そう思っていたのにその日の夜、お父様はいとも簡単に首を縦に振ったのだった。
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