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5章
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しおりを挟む逆に目立つんじゃないだろうか……。
そう思ったが皆さんさすがに王宮内の事をよくわかってらっしゃるようで、時に道のない芝の上を歩きもしたが何とか王妃様の宮までたどり着いた。
「マリエル様。我々はここで失礼致します。」
案内してくれた4人の男性は深々と礼を取り、足早に戻って行った。
「マリエル様、お待ちしておりました。どうぞ中に………」
外で待機してくれていた侍女に促され、王妃様の宮へ足を踏み入れる。開かれた扉の中で待っていたのは王妃様ではなかった。
銀色の……長い髪。
「ユリシス様……………」
私の声に振り向いたのは、会いたかったその人。なのに足が動かない。駆け寄りたいのに、その腕の中に飛び込みたいのに………躊躇してしまう。
どうしよう、目が見れない。
聞きたい事はたくさんある。どうして何も連絡をくれなかったの?あの噂は本当なの?本当に………私以外の方とも婚姻を結ぶの?
怖くて何も言い出せない。
「マリー……来てくれないの?」
両手を差し出してそう言う彼に、胸が詰まって苦しくなる。
しばらくそうしていたらゆっくりとこちらに向かう足音がして、すぐそばで止まる。
「マリー」
聞きたかった声。でも聞くと切なくて逃げたくなる。
大理石の美しい床に、私の目から零れ落ちた大粒の涙が空から降り注ぐ雨のようにポツリと響く。
何でこんなに弱虫なの。胸の前で両手を強く握り締めて泣く事しかできない自分が嫌になる。
泣いて、叫んで、責めればいいのに。どうしてと。………でも出来ない。嫌われたくない。わがままな女と思われたくない。
「ごめんなさい………。」
何故かわからない。だけど口から出たのはそんな言葉だった。
「どうしてマリーが謝るの?謝るのは私の方だ。不安にさせてしまったよね。本当にごめん。」
そう言って彼は優しく腕の中に私をしまう。
でも私の身体は強張ったままだ。何でだろう。彼の温もりが欲しいのに、欲しくない。
心が彼の事を拒否してる。
「マリー……顔を見せて?」
嫌だ。顔なんて見たくない。見たら何も言えなくなってしまう。
私は今あなたの事が信じられないんだって。
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