234 / 331
7章
23
しおりを挟む「…本当に…兄弟揃ってろくなもんじゃないわね…。」
ブツブツと文句を言いながらオデットは持ち帰った書類を机の上に並べて行く。
この数分前、オデットはマリーの懐妊を告げられ更に激怒し火の粉は弟の第二王子にまで飛んだ。しかもかなりド派手に。
未だ怒りは収まる気配はないがいかんせんマリーの救出が最優先事項である。オデットはぐっと堪えて堪えて…堪えきれずぼやく。
「これだけ長く忠義を尽くしてきた公爵家の令嬢を兄弟で取り合って押し倒して舐め回して挙げ句妊娠させるなんて…どういう育てられ方してんのかしら本当に…!」
兄弟はうつろな目で下を向き、育てた両親は申し訳なさで閉口していた。
「…では、こちらからご覧ください。」
最初にオデットが見せたのはヘルマン侯爵領の地図。
「何故二枚あるんだ?」
ユリシスの問いにオデットは答える。
「一枚は王宮へ提出されたものと同じです。もう一枚は同じように見えますが…ここを見て下さい。」
オデットが指差した先には“プレル地域”とある。
「王宮に提出されたものはこのプレル地域が一部削られた状態です。」
「ただの間違いと言う事は?」
「……違う気がします。勘としか言いようがありませんが。そしてこれもご覧ください。」
「領内の管理者名簿?」
「はい。どこの領主も親戚を要職に就かせるもので、ヘルマン侯爵もそれは同じでした。しかしここが少し気になって…まぁそれも勘なのですが…。」
ユリシスはオデットの指し示した箇所を見て声を上げる。
「…プレル地域管理者……医師ギヨーム・ヘルマン!?」
聞き覚えのあるその名前に全員が驚く。
「オデット!!君って人は…やっぱりシモンの娘だ!!」
オデットは何で褒められてるのかさっぱりわからず眉間にシワを寄せた。
「詳しい事は今から説明する!それと今は一刻でも惜しい。シモン!プレル地域の調査に人を向かわせてくれ!!」
「わかりました。オデット、他には?」
シモンの言葉にオデットは分厚い一冊のノートを机の上に置いた。ノートには鍵が付いている。
「これは処刑されたマチルドの部屋の机に隠されていました。中はまだ確認していません。しかし日記などであれば何か重要な事が書かれているのではないかと……。」
「わかった。誰か鍵を外してくれ。これだけの量を読むのは時間がかかるな…オデット、気になるところをすべて拾ってくれるか?私達はマリーを救出する作戦を詰める。」
「わかりました。」
ガチッという音と共に鍵は壊された。
「同じ女だから勝手に読まれるのが嫌なのはよくわかる。でも許してね。」
今でも鮮明に思い出す。あのストロベリーブロンドの華やかな令嬢マチルド。
「嫌いだったけど今は感謝してる。あんたが遺してくれた物が私達を救うかもしれない。」
オデットは大切にノートに触れた。
24
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
2度目の結婚は貴方と
朧霧
恋愛
前世では冷たい夫と結婚してしまい子供を幸せにしたい一心で結婚生活を耐えていた私。気がついたときには異世界で「リオナ」という女性に生まれ変わっていた。6歳で記憶が蘇り悲惨な結婚生活を思い出すと今世では結婚願望すらなくなってしまうが騎士団長のレオナードに出会うことで運命が変わっていく。過去のトラウマを乗り越えて無事にリオナは前世から数えて2度目の結婚をすることになるのか?
魔法、魔術、妖精など全くありません。基本的に日常感溢れるほのぼの系作品になります。
重複投稿作品です。(小説家になろう)
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
行動あるのみです!
棗
恋愛
※一部タイトル修正しました。
シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。
自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。
これが実は勘違いだと、シェリは知らない。
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
塔に住むのは諸事情からで、住み込みで父と暮らしてます
ちより
恋愛
魔法のある世界。
母親の病を治す研究のため、かつて賢者が住んでいたとされる古塔で、父と住み込みで暮らすことになった下級貴族のアリシア。
同じ敷地に設立された国内トップクラスの学園に、父は昼間は助教授として勤めることになる。
目立たないように暮らしたいアリシアだが、1人の生徒との出会いで生活が大きく変わる。
身分差があることが分かっていても、お互い想いは強くなり、学園を巻き込んだ事件が次々と起こる。
彼、エドルドとの距離が近くなるにつれ、アリシアにも塔にも変化が起こる。賢者の遺した塔、そこに保有される数々のトラップや魔法陣、そして貴重な文献に、1つの意思を導きだす。
身分差意識の強い世界において、アリシアを守るため、エドルドを守るため、共にいられるよう2人が起こす行動に、新たな時代が動きだす。
ハッピーエンドな異世界恋愛ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる