【本編完結】マリーの憂鬱

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7章

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    「…本当に…兄弟揃ってろくなもんじゃないわね…。」

    ブツブツと文句を言いながらオデットは持ち帰った書類を机の上に並べて行く。
    この数分前、オデットはマリーの懐妊を告げられ更に激怒し火の粉は弟の第二王子にまで飛んだ。しかもかなりド派手に。
    未だ怒りは収まる気配はないがいかんせんマリーの救出が最優先事項である。オデットはぐっと堪えて堪えて…堪えきれずぼやく。

    「これだけ長く忠義を尽くしてきた公爵家の令嬢を兄弟で取り合って押し倒して舐め回して挙げ句妊娠させるなんて…どういう育てられ方してんのかしら本当に…!」

    兄弟はうつろな目で下を向き、育てた両親は申し訳なさで閉口していた。

    「…では、こちらからご覧ください。」

最初にオデットが見せたのはヘルマン侯爵領の地図。

    「何故二枚あるんだ?」

    ユリシスの問いにオデットは答える。

    「一枚は王宮へ提出されたものと同じです。もう一枚は同じように見えますが…ここを見て下さい。」

    オデットが指差した先には“プレル地域”とある。

    「王宮に提出されたものはこのプレル地域が一部削られた状態です。」

    「ただの間違いと言う事は?」

    「……違う気がします。勘としか言いようがありませんが。そしてこれもご覧ください。」

    「領内の管理者名簿?」

    「はい。どこの領主も親戚を要職に就かせるもので、ヘルマン侯爵もそれは同じでした。しかしここが少し気になって…まぁそれも勘なのですが…。」

    ユリシスはオデットの指し示した箇所を見て声を上げる。

    「…プレル地域管理者……医師ギヨーム・ヘルマン!?」

    聞き覚えのあるその名前に全員が驚く。

    「オデット!!君って人は…やっぱりシモンの娘だ!!」

    オデットは何で褒められてるのかさっぱりわからず眉間にシワを寄せた。

    「詳しい事は今から説明する!それと今は一刻でも惜しい。シモン!プレル地域の調査に人を向かわせてくれ!!」    

    「わかりました。オデット、他には?」

    シモンの言葉にオデットは分厚い一冊のノートを机の上に置いた。ノートには鍵が付いている。

    「これは処刑されたマチルドの部屋の机に隠されていました。中はまだ確認していません。しかし日記などであれば何か重要な事が書かれているのではないかと……。」

    「わかった。誰か鍵を外してくれ。これだけの量を読むのは時間がかかるな…オデット、気になるところをすべて拾ってくれるか?私達はマリーを救出する作戦を詰める。」

    「わかりました。」





    ガチッという音と共に鍵は壊された。

    「同じ女だから勝手に読まれるのが嫌なのはよくわかる。でも許してね。」

    今でも鮮明に思い出す。あのストロベリーブロンドの華やかな令嬢マチルド。

    「嫌いだったけど今は感謝してる。あんたが遺してくれた物が私達を救うかもしれない。」


    オデットは大切にノートに触れた。


    


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