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7章
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しおりを挟む「それにしてもまさかユリシス殿下がこんなところまでいらっしゃるとは…そんな価値があるようには見えませんでしたけどねぇ…。」
マリーの事を言っているのかリュカは理解出来ないと言うような表情だ。
「お前に人の価値がわかるとは到底思えないがな。」
ユリシスの言葉にリュカは眉を上げる。
「これは随分な事を仰る。だって己が生き残るためにあなたからすんなり鞍替えしてジョエル様にすり寄るような女ですよ?腹の子も殿下の本当のお子か怪しいものです。」
リュカはまるで挑発するようにクスクスと嘲笑う。しかしユリシスの顔からはゆっくりと表情が抜け落ちた。
「黙れ。お前に私達の何がわかる。」
「…へぇ……怒らないんだ。それは意外だったな。」
さっきまで無邪気で残酷な子供のように嗤っていたリュカからも表情が抜ける。
「お前ごときの言葉に惑わされるほど私達は希薄な関係ではない。心の飢えたお前には一生わからないだろうがな。」
「僕の心が飢えてるって……?あなたに僕の何がわかるって言うの?」
リュカの目付きが変わる。ユリシスを睨め上げ、次の瞬間一気に踏み込んできた。
速い!!
ユリシスがそう思った瞬間、目の前でリュカが剣を振り下ろしていた。しかし空気を切り裂くような音は途中で止まる。
「この方には指一本触れさせない。」
リュカの華奢な身体から軽やかに振り下ろされた斬擊は信じられない程に重い。アランはビリビリと指先にまで伝わる衝撃に僅かに顔を歪ませた。
「僕の間合いに入ってくるなんてなかなかやるね。君、軍人?違うよね。どちらかといえばこっち寄りの人間だ。」
「ふざけるな。お前と俺は違う。」
アランは力で押し返すようにリュカの剣を薙ぎ払う。
「ふふ…久しぶりに楽しめそうで嬉しいなぁ。ここのところずっと退屈してたんだよ。皆本当に弱くってさ。王宮の護衛もたいした事無くてもうがっかり。」
「王宮の護衛…?」
クリストフはリュカの言葉にいち早く反応する。
「そう。だって何にもしないで首斬られて終わりだよ?なんのために王子妃の部屋の前に立ってたんだろうね?呆気なさ過ぎてつまんなかったよ。」
「クリストフ!挑発に乗るな!」
ユリシスの言葉も今のクリストフには届かない。
「最後なんて血が吹き出る首を押さえて金魚みたいに口をパクパクしてたよ。何か言い残したかったのかな?まぁどうでもいいけど。」
「ふざけるな!!」
クリストフはリュカ目掛けて走り出す。
「ははっ。何?あの護衛、君の知り合いだったの?そりゃ悪いことしたね。」
リュカはクリストフが繰り出す剣技を笑いながら受け止める。怒りに身を任せひたすらに剣を振るクリストフには、もはや目の前の敵以外何も映っていない。
「君は型通りの良い子だねぇ。…でもそれじゃ子供の遊びと一緒だ。」
その瞬間、クリストフの脇腹をリュカの剣が掠めた。
「うっっ!!!」
切り裂かれた衣服に血が滲む。
クリストフは痛みに声を上げた。
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