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終章
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しおりを挟む「誰にもわからないわエリシア。」
「…?」
キョトンとした顔の娘が可愛くてマリーは微笑む。
「人の気持ちがどうなるかなんて誰にもわからないのよ。」
「それは…シャルル様が誰を好きになるかわからないって事?」
「うーん…ちょっと違うわね。エリシア、シャルル様はあなたの事をとっても大切に思ってくれているわ。それはわかる?」
わかる。家族以外でこんなにも自分に心を砕いてくれるのはシャルル様だけ。そしてシャルル様の腕は生まれた時から私の指定席だ。
「シャルル様はまだお若いわ。お父様だって私と結婚したのは二十歳の頃よ。焦らなくてもゆっくりシャルル様への気持ちを育てて行けば、シャルル様も応えてくれるかもしれないわ。」
「でもそれじゃ…あと五年もすればシャルル様は結婚しちゃうかも…。」
シャルル様だって初代アイビン公として子孫を残していかなきゃならない。きっと今だって山のように縁談が届いているはずだわ。けれど私は五年経ったところでまだ十歳。せいぜい婚約のお話しくらいしか出来ない…。
「エリシア、シャルル様は間違えないわ。」
「どういう事?」
「シャルル様は将来の伴侶となるべき運命の人を決して間違えたりしない。だからエリシア、あなたがシャルル様の運命の相手なら、どんなに年が離れていようが絶対にシャルル様は待っていてくれる。周りにどんなに何を言われようとね。」
マリーはシャルルが自分に捧げてくれた気持ちが間違いだとは思わない。お互いみっともない姿をさらけ出して泣いた時もあった。そしてマリーもシャルルへ少なからず恋をする気持ちがあった。
けれど二人は運命の相手では無かった。
『君はとても綺麗だよ』
幼いあの日、暗闇を抱えた心ごと救い出してくれた愛しい人。私が見つける前に私達の運命を見つけてくれたユーリ。
そしてエリシアも見つけた。さすが親子としか言いようがない。
「あなたはお父様そっくりよエリシア。」
エリシアはまたしてもキョトンとする。
「それ、さっきお父様にも同じ事を言われたわ。私はお母様そっくりだって。」
「ユーリが!?うふふっ。」
確かに見た目はそっくりだがエリシアは自分とは全然違う。この子は自分で見つけて手を伸ばしたんだもの。運命を…愛する人を必死に捕まえるために。
「さぁエリシア、もう音楽が終わる頃よ?勇気を出さなきゃ!ね?」
マリーに背を押されエリシアは歩き出す。
一歩ずつだがその足は確かにシャルルの方を向いていた。
「…複雑すぎる気分だよ…。」
いつの間にか側に来ていたユリシスはこの世の終わりのような表情をしている。
「あら、私だけじゃ駄目なの?」
いたずらっぽく覗き込むマリーにユリシスは苦笑した。
「君だけだよマリー。シャルルめ…不幸にしたら本気で後悔させてやる。」
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