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終章
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しおりを挟む間男と浮気男の合せ技って感じかなー…
シャルルは遠くを見つめながらそんな事を考えていた。
愛しいシャルルの浮気現場(?)を目の前で目撃したエリシアはショックで逃げ出し、これまた愛しい妻を目の前で口説かれた夫(ユリシス)は妻を連れて踊りに行ってしまった。
中央ではマリーを必要以上に抱き寄せ踊る兄の姿。もはやあれはダンスと言う名のマーキングである。
「…あの、シャルル殿下。お久しぶりでございます。私の事憶えていらっしゃいますか?」
ふいに声を掛けられ振り向くと、まだ王子だった頃によく話した事のある令嬢が立っていた。確か名前は…
「あぁ、久し振りだねフェリシア。それと殿下はやめて。それなら…嫌だけどせめて“閣下”かな?もう僕はアイビン公爵だよ。」
「す、すみませんつい昔のように…!!あの…シャルル様?」
「ん?」
「良かったら私と一曲踊っていただけませんか…?」
「……いいよ。行こうか。」
シャルルは悩んだものの、俯き両手を前で握り締めて返事を待つフェリシアが不憫に思えて承諾したのだった。
「どうしたの?エリシア。」
マリーは優しく声を掛けた。怒って離れたものの、やはり気になってフロアの隅からシャルルを見ていたエリシアが目に入ったのだ。
「………。」
しかしエリシアは黙ったまま、踊るシャルルとフェリシアをじっと見ている。
こうして離れて見るとシャルルがどれほど素敵な男性なのかが良くわかる。フロア中の女性の視線を釘付けにする美しい容貌は、少年と青年の狭間の何とも言えぬ危うい色香を放っている。シャルルの手を取る女性の顔はうっとりと夢の中にいるかのよう。エリシアの小さな胸は張り裂けんばかりにズキズキと痛んだ。
「シャルル様…とっても素敵ね。」
エリシアはマリーの言葉にこくんと頷いた。
こんな素敵な人、世界中どこを探したっていやしない。その証拠にここにいる皆がシャルル様に見とれてる。
(…私なんて…こんな子供の私なんてとても敵いやしない…。)
お化粧も、胸の膨らみも、背の高さも、どれを取っても勝てるものなど何一つない。あるとするならばこの王女という地位だけ。しかしそれは私のものじゃない。この父と母の元に生まれたから与えられただけのもの。
独り占めしたい。でもできない。だって子供だから…。どうして私はシャルル様と十歳も離れて生まれたんだろう。これじゃ大人になる前にシャルル様を誰かに取られてしまう。
何も聞かなくてもマリーにはエリシアの考えている事が手に取るようにわかっていた。何故ならそれは幼き日のシャルルが抱き続けた悩みそのものだったから。
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