【本編完結】マリーの憂鬱

クマ三郎@書籍&コミカライズ3作配信中

文字の大きさ
328 / 331
終章

しおりを挟む






 間男と浮気男の合せ技って感じかなー…

 シャルルは遠くを見つめながらそんな事を考えていた。
 愛しいシャルルの浮気現場(?)を目の前で目撃したエリシアはショックで逃げ出し、これまた愛しい妻を目の前で口説かれた夫(ユリシス)は妻を連れて踊りに行ってしまった。
 中央ではマリーを必要以上に抱き寄せ踊る兄の姿。もはやあれはダンスと言う名のマーキングである。

 「…あの、シャルル殿下。お久しぶりでございます。私の事憶えていらっしゃいますか?」

 ふいに声を掛けられ振り向くと、まだ王子だった頃によく話した事のある令嬢が立っていた。確か名前は…

 「あぁ、久し振りだねフェリシア。それと殿下はやめて。それなら…嫌だけどせめて“閣下”かな?もう僕はアイビン公爵だよ。」

 「す、すみませんつい昔のように…!!あの…シャルル様?」

 「ん?」

 「良かったら私と一曲踊っていただけませんか…?」

 「……いいよ。行こうか。」

 シャルルは悩んだものの、俯き両手を前で握り締めて返事を待つフェリシアが不憫に思えて承諾したのだった。



 「どうしたの?エリシア。」

 マリーは優しく声を掛けた。怒って離れたものの、やはり気になってフロアの隅からシャルルを見ていたエリシアが目に入ったのだ。

 「………。」

 しかしエリシアは黙ったまま、踊るシャルルとフェリシアをじっと見ている。
 こうして離れて見るとシャルルがどれほど素敵な男性なのかが良くわかる。フロア中の女性の視線を釘付けにする美しい容貌は、少年と青年の狭間の何とも言えぬ危うい色香を放っている。シャルルの手を取る女性の顔はうっとりと夢の中にいるかのよう。エリシアの小さな胸は張り裂けんばかりにズキズキと痛んだ。

 「シャルル様…とっても素敵ね。」

 エリシアはマリーの言葉にこくんと頷いた。
 こんな素敵な人、世界中どこを探したっていやしない。その証拠にここにいる皆がシャルル様に見とれてる。
 (…私なんて…こんな子供の私なんてとても敵いやしない…。)

 お化粧も、胸の膨らみも、背の高さも、どれを取っても勝てるものなど何一つない。あるとするならばこの王女という地位だけ。しかしそれは私のものじゃない。この父と母の元に生まれたから与えられただけのもの。

 独り占めしたい。でもできない。だって子供だから…。どうして私はシャルル様と十歳も離れて生まれたんだろう。これじゃ大人になる前にシャルル様を誰かに取られてしまう。

 何も聞かなくてもマリーにはエリシアの考えている事が手に取るようにわかっていた。何故ならそれは幼き日のシャルルが抱き続けた悩みそのものだったから。

しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」 新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。 1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。 2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。 そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー… 別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

塔に住むのは諸事情からで、住み込みで父と暮らしてます

ちより
恋愛
魔法のある世界。 母親の病を治す研究のため、かつて賢者が住んでいたとされる古塔で、父と住み込みで暮らすことになった下級貴族のアリシア。 同じ敷地に設立された国内トップクラスの学園に、父は昼間は助教授として勤めることになる。 目立たないように暮らしたいアリシアだが、1人の生徒との出会いで生活が大きく変わる。   身分差があることが分かっていても、お互い想いは強くなり、学園を巻き込んだ事件が次々と起こる。 彼、エドルドとの距離が近くなるにつれ、アリシアにも塔にも変化が起こる。賢者の遺した塔、そこに保有される数々のトラップや魔法陣、そして貴重な文献に、1つの意思を導きだす。 身分差意識の強い世界において、アリシアを守るため、エドルドを守るため、共にいられるよう2人が起こす行動に、新たな時代が動きだす。 ハッピーエンドな異世界恋愛ものです。

処理中です...