王女は魔道師団長の愛に溺れる

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 リーリアは魔法は使えないが、薬草学に精通していた。
 それもこれも魔力を使えない分、何か自分にできることはないかと必死で考え、努力して身につけた知識だ。
 リーリアの調合する薬は評判がよく、これに関しては他の生徒たちも彼女に一目置いていた。
 リーリアは、薬棚に並ぶ膨大な数のガラス瓶の中から小ぶりな緑の葉が詰められたものを手に取った。
 そして蓋を開け、中から取り出した葉を乳鉢に入れて丁寧に擦っていく。
 やがてドロドロとした形状に変わると、それをスパチュラに取り、厚手の布に均等に塗布した。

 「布とお薬を多めにお渡ししますから、また痛みがでたらお家でもこうやって使ってください。それからこれは今お貼りしますね」

 リーリアは男性に向かって使い方の見本を見せてやり、作ったばかりの湿布を尻に貼ってやろうとした。

 「お、王女様が俺の尻に!?」

 すると男性は、さっきまでとはうって変わって期待に瞳を輝かせ始めた。 
 だが弾力を失いつつある尻にリーリアの手が近づいた瞬間、大きな手のひらが、まるで遮るようにして尻と手の間に割って入ってきた。
 驚いて顔を上げると、大きな手の主はユーインだった。

 「ユ、ユーイン様!?」

 見ればユーインは何やら難しい顔をしていて、眉間に皺が寄っていた。
 何かまずいことをしてしまっただろうか。

 ──もしかして、薬草を間違えた?

 しかし湿布薬に使う薬草は一種類だけ。
 薬草の瓶に目をやると、やはり間違えてはいない。
 ではなぜユーインはこんな表情をしているのか。
 悩むリーリアをよそに、ユーインは無言で湿布を手放すよう自身の手で促した。
 渡す時、そっとユーインの手が触れ、リーリアは心の中で小さな悲鳴を上げた。
 触れた場所が、まるで熱を持ったように熱い。

 ユーインは湿布を手に、近くにいた男子生徒の名を呼んだ。

 「カミル、お前がやりなさい」

 「えっ!?俺がですか」

 名前を呼ばれた青年は、明らかに動揺している。
 当たり前だ、だって相手は中年男性……の尻。
 しかしがっかりしているのはカミルだけではない。
 美しく優しい王女様に貼ってもらえるのだと思っていた男性もまた、カミル同様沈んだ表情をしている。
 
 「あ、あの、ユーイン様?やっぱり私が貼ります」

 「いけません」

 なぜだろう。さすがに男性の尻というのは初めてだが、これまでだって何度も患者にしてきた行為なのに。
 カミルがユーインから湿布を受け取り、微妙な表情で男性に湿布を貼ったところで終了のベルが鳴った。

 
 

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