王女は魔道師団長の愛に溺れる

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 ユーインは講堂に入るでもなく、明らかにリーリアの方を見ていた。
 もしかしたら、昨日のことで色々物申したいことがあるのかもしれない。
 当たり前だ。逆の立場なら、リーリアだってそうするだろう。

 ──よし、女は度胸よ……!!

 ユーインとイゾルデの事はもう気にしない。
 いつものように自分から、笑顔で挨拶をしよう。
 そう決めたリーリアは、ユーインのところへ向かう短い間、一生懸命自分の心に言い聞かせた。

 「おはようございます、ユーイン様。昨日はご心配をおかけして申し訳ありませんでした」

 ユーインは少しだけ驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの表情に戻った。

 「……おはようございます、殿下。お身体は大丈夫ですか?」

 「身体……ですか?ええ、何ともありませんけど……」

 ──何で身体の心配???

 もしかして、クレイグに変な魔法でもかけられたのではないかと疑っているのだろうか。
 恐るべしクレイグ・シズリー。
 いったい何をどれくらいやらかしたら、これほどまでに団長たちの頭を悩ませる事ができるのか。

 「殿下。本日の講義の後、少しお話させていただきたい事があるのですが……お時間をいただくことは可能でしょうか?」

 話とは何だろう。
 昨日の事と何か関係があるのだろうか。
 リーリアはとても気になったが、ちょうど始まりのベルが鳴ってしまい、「はい」とだけ返事をして頷いた。


 *


 アカデミーで講義を担当する魔道師には、それぞれ専用の個室が割り当てられている。
 長い廊下にずらりと並ぶ扉。
 その向こう側にはそれはそれは個性的な講師たちが控えているため、誰に言われた訳ではないのだが、自然と忍び足になってしまう。

 「ユーイン様のお部屋は……あった、ここだわ」

 ユーインの名が書かれた銀のドアプレートを見つけ、リーリアは胸に手を当てて深呼吸をした。
 トントン、トントンと四回ノックをすると、一拍おいて中から「どうぞ」と返事が返ってきた。

 「失礼いたします」

 ドアを開けた瞬間、ユーインの香りが優しくリーリアの鼻腔をくすぐった。
 どうやら仕事をしていたらしいユーインは、すぐさま手に持っていた書類を机の上に置き、立ち上がってリーリアを迎えた。
 
 「お手間を取らせてしまい、申し訳ありませんでした。どうぞこちらへ」

 促され、部屋の中央に置いてある応接用のソファに腰掛ける。
 しかし、てっきり向かい側に座ると思っていたユーインは、今しがたリーリアが腰掛けたソファの横に立ったままだ。
 そして、力ない表情でリーリアを見つめている。
 
 「あの、ユーイン様……?それで、お話とは何でしょうか」

 「……………………」

 「ユーイン様?」

 「………………………………」

 黙り込むユーイン。
 その不可解な様子を訝しんだリーリアの眉間に皺が寄った。
 
 




 
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