王女は魔道師団長の愛に溺れる

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 もうすぐアカデミーを出なければならない。
 そう覚悟していたのに。こんなタイミングってあるだろうか。
 あまりにも私に都合よく話が進みすぎている。
 まさか──
 リーリアの頭の中に、あるひとつの疑問が浮かび上がる。
 でもそんな事、あるわけがない。
 自惚れてはだめだ。
 だけど、自分を戒める気持ちが湧きながらも、どうしても胸に引っかかる。 
 口に出してしまったら取り返しのつかないことになるかもしれない。
 それでも黙ってはいられなかった。
 
 「ユーイン様……もしかして……もしかしてこのお話は、私のために……?」

 どうか、そうであってほしい。
 リーリアは、ありったけの勇気を振り絞り、震える唇から祈るような気持ちで問いかけた。
 
 「その通りです……。このことは、もうずっと前から頭の中で考えていました。早く実行に移さなければ、遅かれ早かれ殿下がここを去る日が来てしまうと。……私は、どうしても殿下にはここに残っていただきたかった。けれど、殿下がこの場所に残るには、必要な資格を満たす必要がありました。そしてその資格こそが、あなたの意思なのだと確認する必要も」

 おそらく必要な資格とは、上の人間を納得させられるだけの知識。
 それは、生半可な気持ちでは到底身につけることのできないものだ。
 実際リーリアも、寝る間も惜しんでひたすらに学んだ。それでも尚、まだまだ自分には足りないものが多いと痛感する。
 費やした時間と努力は、すなわちこの場所で生きる心づもりがあるのかどうかという覚悟そのもの。
 そしてユーインはリーリアの中にある強い意思を感じ取ってくれた。
 
 ──ユーイン様は、私のために新しい道を作ってくれたんだ……!

 こんな幸せなことがあっていいのだろうか。
 その瞬間、胸の奥から熱いものが眦に向かってせり上がってきた。
 いっそこのまま長年の想いを打ち明けてしまおうか。
 幼い頃に命を救い、成長を見守ってきた王女に、家族のような情を感じてくれているだけかもしれないが、それでも構わない。
 例えこの想いが叶わなくても、ユーインへの気持ちはきっと生涯変わらないだろう。

 「ユーイン様!私──」
 
 しかし、意を決したリーリアが、熱き胸の内を口にしようとしたその時だった。

 「ですが……私は間違っていたのもしれません……」

 「……え?」

 ──間違っていた?今、間違っていたと言いましたか?

 「……私はこれまで、自分の事を理性的な人間だと思っていました」

 「は、はい」

 こんな低いユーインの声は聞いたことがない。
 それに声だけじゃない。
 目が据わっている。

 「昨日殿下があの悪童に抱かれ火焔鳥の背に乗ったのを見た時、暴力的で攻撃的な精神状態を抑えることができなかった……」

 「あ……あれは火焔鳥と言うのですね……」

 言いながら、リーリアの背中を嫌な汗が伝う。
 なぜなら白魔道師であるユーインの背後に、どす黒く燃える炎のような何かが見える気がしたからだ。





 
 
 

 
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