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火焔鳥の背に乗り王城を目指すクレイグは、王都で暴れている魔物と王城を包囲する魔物の目的が違うのではないかと思っていた。
王都の魔物は明らかに興奮状態にあり、黒魔導師が精製を得意とする薬物を使用した状態に似ている。
そして王城を包囲する魔物は、一際高い城の尖塔を中心に集まっている。
興奮状態というより、まるで何かに呼び寄せられているようだ。
──あの尖塔の先に何かあるのか?
クレイグは速度を上げ、尖塔へと急いだ。
しかしそこで目にしたものに言葉を失う。
「何だこれは……!!」
尖塔の上に無残に晒されていたのは瀕死状態の魔物だった。
身体中を鋭利なもので切り裂かれ、中には貫通している傷もある。
「こいつらが集まっていたのはこのせいか」
魔物には仲間意識のようなものが存在している。おそらくその習性を利用して、ここまでおびき寄せたのだ。
魔物についてよく知っていなければできない犯行だ。
だが、一体誰が何のために?
──とにかくこいつらをここから引き離さなければ
クレイグは目くらましの魔法を使い、魔物たちを撹乱させた。
そして瀕死の魔物に近付き、手を伸ばす。
抵抗されることもなく、クレイグは火焔鳥の背に魔物を乗せた。
ここでクレイグは大いに悩んだ。
この魔物はここから引き離さなければならないが、しかし火焔鳥は二体同時には出す事ができない。
ならばクレイグが然るべき場所まで乗せて行き、降ろしてやればいいのだが、既に王城には魔物たちが相当数侵入している。
クレイグは、王城にいるリーリアの事を思う。
──遂に、一度も私の講義に来なかったな
嫌がられてるのは十分わかっていたが、それでも声をかけ続けたアルムガルドの末姫。
八年前、突如アカデミーに顔を出すようになった異質な存在。
最初は王族の暇潰しか、はたまた慈善事業の一環か、高貴な生まれも楽じゃない、ご苦労な事だ……くらいに思っていた。
しかし、一年が経ち、二年が経ってもリーリアの訪いは続いた。
周りから陰口を叩かれても、いつもひとりきりで過ごそうとも、決してアカデミーを休んだりはしなかった。
いつの間にかリーリアを目で追うようになっていたクレイグは、その視線の先にいる人物に気付く。ユーインだ。
“羨ましい”なんていう感情は知らない。
アカデミーにいれば自分は誰よりも優秀で、ここではそれが全てだったから、誰かを羨む必要なんてなかった。
けれど、暖かな眼差しをもらえるユーインが、いつもその背を追いかけてもらえるあの白の魔道師が……どうしようもなく羨ましかった。
リーリアにはユーインが相応しい。
自分のような男よりもずっと。
それはわかってる。邪魔するつもりもない。
けれど今、ユーインは身動きが取れない。
そして火焔鳥はもう出せない。
【……クレイグ様は私を好きな訳じゃないでしょう?】
人の気も知らず、憎たらしいほどに無垢で愛らしい顔で、無邪気に聞くリーリアの顔が脳裏に浮かぶ。
──好きでもない女と誰が相乗りなどするか!本当にあの馬鹿王女は!!
「あ──────っっ、もう!!悩んでるのは性に合わないんだよ!!火焔鳥!!こいつを乗せて魔物を誘導しろ!できるだけ遠くへ!」
クレイグは言い終わると、火焔鳥の背から飛び降りた。
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