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しおりを挟むまったく予想もしていなかった言葉に開いた口が塞がらなかった。
今、彼はなんと言った?ビビアナのお腹の子がシルヴィオの子?
「ああ、驚かせてしまったね。すまないルクレツィア」
「いえ……あの……」
謝るのはそこじゃないだろう。だがそんなこと言えるわけがない。
「話というのは私と君の結婚のことについてなんだ。実は子ができたことをずっと彼女は黙っていて……私も知ったのは最近なんだ。既に周りにも勘付かれてしまっているから、もうどうすることもできなくてね」
ルクレツィアは自身の顔から血の気が引くのがわかった。シルヴィオは自分に隠れて浮気をしていたのだ。その結果子供ができた。そしてそれが隠し立てできないところまで来てしまったから、ルクレツィアとの婚約を解消してビビアナを妃に迎えるつもりなのだ。
「ルクレツィア、顔色が悪い。大丈夫かい?」
シルヴィオが立ち上がり、そばまでやって来ると心配そうにルクレツィアの顔をのぞき込む。
信じられなかった。この優しい人が。今までなによりもルクレツィアを大切にし、愛を囁いてくれた人が。ルクレツィアにするのと同じように……いや、それ以上の愛をビビアナに注いでいたなんて。
浮気をしたからと言ってすぐに子どもができるわけではない。膨らみの大きさから考えて、少なくとも二人は半年以上前には関係を持っていたのだ。もしかしたら初めて関係を持った日からはもう何年も経っているのかもしれない。
ぽたぽたと、瞳からあふれ出た涙がドレスに染みを作る。
「ああ、泣かないでルクレツィア!悲しい思いをさせて本当に済まない」
シルヴィオは両手を広げ、屈むようにしてルクレツィアを抱きしめた。しかしルクレツィアはそれを嬉しいと思うどころかむしろ不快に感じた。それと同時に彼の行動がまったく理解できなかった。なぜならすぐそばでシルヴィオの子をお腹に宿したビビアナが見ているのだ。それにルクレツィアを捨てるつもりなら、これ以上優しくなんてしないで欲しい。
しかしシルヴィオの腕の隙間からビビアナを盗み見ると、彼女は冷えた顔で淡々と給仕に専念していた。湯気にのって蜂蜜の甘い香りがルクレツィアの鼻に届く。これはどういう状況なのだろう。自分たちの周囲に漂う空気が薄気味悪かった。
「安心してルクレツィア。ビビアナと腹の子のことは、私たちの結婚にはなんの支障もない」
シルヴィオは、まるで子供をあやすようにルクレツィアの頭を優しく撫でた。
────なんの支障もない?
「ビビアナは僕たちの結婚後も、侍女として君に仕えると言ってくれたんだ」
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