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しおりを挟む「お母様、御前試合の前にアストーリ侯爵家のアラベッラ様にお会いしたいのだけれど……」
「アラベッラ嬢に?でも……会ってどうするの?ドレスのことについてはシルヴィオ殿下が独断でやったことよ。あなたには関係ないわ」
「わかってる……でも同じ女性として、“知らなかった”だけでは済まされないし、済ませたくないの」
「歓迎されないわよ。それ以前に断られるかもしれない」
それでもひと目でいい。会って直接謝りたい。たとえどんなに罵られたとしてもだ。
ルクレツィアが決意を伝えると、母は諦めたようにため息をついた。
「わかったわ。それじゃ好きになさい」
そして、まるで“仕方ない子ね”とでもいうように微笑んだ。
早速自身の名で訪問のお伺いを立てようと思っていたルクレツィアだったが、それには父が口を挟んだ。
「お前個人の名では断られるかもしれない。本気で会って謝りたいというのなら、ガルヴァーニの名で送りなさい」
ガルヴァーニの名で送るということは、今回の謝罪がガルヴァーニ侯爵家の総意であるということ。今回のことはこちらに非はない。すべてはシルヴィオがひとりでやったこと。それなのに弱みを作ることになりかねない真似をするなんて。
「関係ない。一人の女性を傷つけた事実の中にお前もいたのだ。こちらの誠意を示そう」
「お父様……」
素敵だわお父様。でもさっき、お父様が王家に送る手紙の中に、鈍色に光る鋭利ななにかを入れる姿を見た気がしたの。
でも私は信じてるわお父様。なにをって、我が家の優秀な執事がお父様の書いた手紙をまるっと書き換えて、新しい封筒に入れて王宮に届けてくれることを。
*
翌日。アラベッラから届いた返事には、ルクレツィアの謝罪を受け入れる旨が記されていた。
日時もこちら側のわがままを聞き入れてくれて、二日後の昼過ぎとなった。
アラベッラよりも先に袖を通してしまったドレスをどうしようかと、ルクレツィアは悩んだ。しかし品が品だけに、勝手に捨てるわけにもいかなかった。
アラベッラはもう二度とこのドレスを見たくはないかもしれないが、丁寧に包み持参することにした。
王都のアストーリ侯爵邸は、ガルヴァーニ侯爵邸とそう離れていない場所に建っている。
それでも万が一にも遅れることのないよう、時間には十分余裕を持たせて出発した。
時間より早く到着したルクレツィアを出迎えてくれたアストーリ侯爵邸の執事は、心なしか緊張しているように見えた。
【歓迎されないわよ】
母の言葉が脳裏に浮かぶ。
ルクレツィアは大きく息を吸い、背筋を伸ばした。
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