冗談じゃ終わらない恋物語

LiLi

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夏のあと、いつもの午後に

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夏祭りから一週間が過ぎた。
あの夜の花火の音と、悠希の手のぬくもりがまだ胸の奥に残っている。
でもフリースクールの空気は、そんな特別なことがあったとは思えないほど、いつも通りののんびりした午後を送っていた。壁際の机では、相変わらず誰かが絵を描き、奥ではUNOのカードがパタパタとめくられている。
凛斗は笑い声を聞きながら、自分のノートにペンを走らせていた。
夏の終わりを感じさせる少し涼しい風が窓から入り、ページの角を揺らす。「なあ、こないだの金魚、まだ生きてるか?」
横から悠希が声をかける。
凛斗はびくりと肩を揺らし、ペン先を止めた。「お前……いきなり話しかけんなって!」
「どした? 図星か?」
悠希がにやりと笑って凛斗の机にもたれかかる。
その距離が、またやけに近い。「……生きてるよ。めちゃくちゃ元気」
「そうか。俺のはもう死にかけてる」
「えっ、ちゃんと水替えてるのかよ」
「そういうのは得意じゃねえんだよな~。代わりに、お前見に来いよ」凛斗は呆れたようにため息をつきながらも、少し笑う。
「お前、ほんとに俺様だな」
「今さらだろ。けど、嫌そうにも見えねえけど?」悠希の言葉に、凛斗の顔が一瞬赤くなる。
ごまかすように、視線を窓の外へ向けた。
「……別に、嫌いじゃないし」
「へえ。それならまたデートすっか」
「誰が行くか!」
「今、拒否しながらちょっと期待した顔したぞ」
「してねぇよ!」周囲でUNOをしていた子たちが、二人の漫才のようなやりとりに笑い声をあげる。
「お似合い~!」という声がまた飛んできて、凛斗の耳が真っ赤に染まった。悠希はそんな様子を見ながら、少しだけ優しい声で言った。
「まあ、焦る必要ねえだろ。俺ら、ゆっくりでいい」
「……なに急に真面目なこと言ってんだ」
「真面目にしてやんねえと、たまにはお前に負けそうになるからな」その言葉に、凛斗はふっと笑った。
「負けるのは、そっちのほうだって」窓から入る風が、ページを一枚めくる。
静かで穏やかな午後。
冗談と本気のあいだを行き来しながら、それでも二人の関係は確かに進んでいた。
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