男爵令嬢アデリナの仇討ち

ぴぴみ

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契機

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──・・・

『アデリナ、よくお聞き。獣人には──』

私は、ハッと目を覚ました。何か夢を見ていた気がするが、覚えていない。懐かしい夢。あの声は誰のものだったか…思い出せない。

最近、眠りが浅いのか、すぐに起きてしまう。隣で寝ている母を横目で見やった。
ゆっくりと背中が上下している。よく眠れているようだと胸を撫で下ろす。

相も変わらず、母の体調は思わしくなく、顔も蒼白い。お医者様に診せたらと言うも母は首を縦に振らない。何もできない自分を不甲斐ふがいなく思う日々が、続いていた。

(母さん、一体何をしているの?)



─その問いに答えが出る前に、母の容態は急変した。


いきなり、倒れた、という。
その知らせを聞いたとき、私の背筋に冷たいものが走った。

慌てて駆けつけるも、母は、ちょっとドジっちゃったと言うだけ。心配しないでと笑っていた。

この時点では、やはり疲れがとれていなかったのだと、納得こそすれ、寝れば治るものだと思っていた。
どこか、楽観視していた。

しかし、それは間違いだった。
お金をかき集めて、かかった町医者は、嫌そうに母を見ながら言った。

「こりゃ、もうダメだな」

なんとかならないんですかと詰め寄ると、
手遅れだねと冷たい声で言われた。

「魔のモノに触れすぎたんだろう…。
普通ここまで酷くならねぇよ」





「なっ!!ちょっと止まりなさい!!」

同僚のメイドが腕をつかもうとするのをすり抜けて、私は奥様の前に飛び出した。

「奥様っ!!」

まろび出た私に奥様の冷たい視線が刺さる。
それに構わず口に出した。

「母に一体何をさせたんですか?」

「……」

無言で虫けらをみるような瞳で見られても黙ってはいられなかった。

「医者は、魔のモノに触れすぎたと言っていました。危険なことをさせていたのは分かっているんです…!」

「…それが?」

凍えるように冷たい声。奥様は言った。

「獣人を住まわせてやっている私たちに対して、よくそんな口の利き方ができたものね…」

「後でいくらでも罰を受けます。
ですから、どうか、教えてください!」

奥様付きの使用人に腕をひねり上げながらも、私は黙っていられなかった。

「…勝手に調べればいいでしょう」

結局無理やり引きずられ、離される。
最後に見えたのは、ほくそ笑むような顔をした奥様だった。




調べるにも限度があった。誰に聞いても答えてはくれない。知っている者も少ないかもしれなかった。

「母さん母さん!私を置いていかないでっ!」

「……」

最期は笑顔さえ浮かべられず、母はひっそりと逝った。
誰に顧みられることもなく。

母の墓とも言えない土くれを見て、私は誓った。手は痛いほどに握りしめられていた。

─復讐してやる







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