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21.その後
③
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フェリシアンさんは私達を応接間に招き入れると、お茶を出してくれた。カップに注がれた青い紅茶を見て、思わず感嘆の声が漏れる。
「あ、これ!」
「随分変わった色をしているな」
「ベアトリス様の薬草茶ですね! ほら、前にリュシアン様にもお渡しした茶葉のお茶ですよ」
「全然色が違うが」
「ここで淹れたときはこんな風に青色になったんですよ。とても懐かしいです」
青い薬草茶を眺めながら言うと、フェリシアンさんは笑った。
「俺も今まであの薬草の茶葉でお茶を淹れても、ちっともこの青色を再現できませんでした。なのに、このお屋敷に来てからはなぜかできるようになったんです」
「それ、きっとベアトリス様がそばで魔法をかけてくれてるんですよ。私が作ったときもそうでしたもん」
「そうだったら嬉しいです。俺には母の姿が見えないんですけどね」
私が言うと、フェリシアンさんは照れたように笑った。
お屋敷に来ると、ベアトリス様は毎回顔を出してくれるので、まだこのお屋敷にいるのは確かだ。しかし、フェリシアンさんにはやはり姿は見えないらしい。
以前にも思ったけれど、私なんかより息子のフェリシアンさんに姿が見えたほうがベアトリス様も嬉しいだろうになぁと悲しくなってしまう。
そんな考えが顔に出てしまったのか、フェリシアンさんは私の顔を見て言った。
「姿は見えなくても、同じ屋敷に住んでいられるだけで嬉しいです。ジスレーヌ様が母の姿を見られたおかげですね。それに、ときどき風が吹いて、ここにいることを知らせてくれるんですよ」
フェリシアンさんは曇りのない笑顔で言う。
その顔を見たら、少し心が晴れた。
その後、しばらくフェリシアンさんに王宮でのことを聞かれたり、逆に近況を聞いたりした後、フェリシアンさんは言った。
「ジスレーヌ様とリュシアン殿下に食べて欲しくて、料理を用意しておいたんです。ちょっと準備に時間がかかるので待っていてもらえますか」
「えっ、ありがとうございます」
「悪いな」
「よろしければお庭でも見て待っていてください」
フェリシアンさんがそう言うので、遠慮なくお庭を散策させてもらうことにした。玄関の扉を開け外に出ると、以前よりも整えられてすっかり綺麗になったお庭の景色が目の前に広がる。
「あぁ、懐かしいです。ここでベアトリス様と草むしりしたり薬草を摘んだりしたんですよ」
「ベアトリスと……。本当にいたんだな、幽霊が」
リュシアン様は複雑そうな顔をする。以前のように否定するわけではないけれど、やはり実際に姿を見られないと存在を信じきるのは難しいようだった。
その時、懐かしいひんやりとした風が吹いて、ベアトリス様が姿を現した。
「あっ、ベアトリス様!」
「え? いるのか?」
ベアトリス様は木のすぐそばに立ち、じっとこちらを見ている。
相変わらずの無表情だけれど、口元がほんの少し緩んでいるような気がした。私の自惚れでなかったら、遊びに来たことを喜んでくれているのかもしれない。
「あ、これ!」
「随分変わった色をしているな」
「ベアトリス様の薬草茶ですね! ほら、前にリュシアン様にもお渡しした茶葉のお茶ですよ」
「全然色が違うが」
「ここで淹れたときはこんな風に青色になったんですよ。とても懐かしいです」
青い薬草茶を眺めながら言うと、フェリシアンさんは笑った。
「俺も今まであの薬草の茶葉でお茶を淹れても、ちっともこの青色を再現できませんでした。なのに、このお屋敷に来てからはなぜかできるようになったんです」
「それ、きっとベアトリス様がそばで魔法をかけてくれてるんですよ。私が作ったときもそうでしたもん」
「そうだったら嬉しいです。俺には母の姿が見えないんですけどね」
私が言うと、フェリシアンさんは照れたように笑った。
お屋敷に来ると、ベアトリス様は毎回顔を出してくれるので、まだこのお屋敷にいるのは確かだ。しかし、フェリシアンさんにはやはり姿は見えないらしい。
以前にも思ったけれど、私なんかより息子のフェリシアンさんに姿が見えたほうがベアトリス様も嬉しいだろうになぁと悲しくなってしまう。
そんな考えが顔に出てしまったのか、フェリシアンさんは私の顔を見て言った。
「姿は見えなくても、同じ屋敷に住んでいられるだけで嬉しいです。ジスレーヌ様が母の姿を見られたおかげですね。それに、ときどき風が吹いて、ここにいることを知らせてくれるんですよ」
フェリシアンさんは曇りのない笑顔で言う。
その顔を見たら、少し心が晴れた。
その後、しばらくフェリシアンさんに王宮でのことを聞かれたり、逆に近況を聞いたりした後、フェリシアンさんは言った。
「ジスレーヌ様とリュシアン殿下に食べて欲しくて、料理を用意しておいたんです。ちょっと準備に時間がかかるので待っていてもらえますか」
「えっ、ありがとうございます」
「悪いな」
「よろしければお庭でも見て待っていてください」
フェリシアンさんがそう言うので、遠慮なくお庭を散策させてもらうことにした。玄関の扉を開け外に出ると、以前よりも整えられてすっかり綺麗になったお庭の景色が目の前に広がる。
「あぁ、懐かしいです。ここでベアトリス様と草むしりしたり薬草を摘んだりしたんですよ」
「ベアトリスと……。本当にいたんだな、幽霊が」
リュシアン様は複雑そうな顔をする。以前のように否定するわけではないけれど、やはり実際に姿を見られないと存在を信じきるのは難しいようだった。
その時、懐かしいひんやりとした風が吹いて、ベアトリス様が姿を現した。
「あっ、ベアトリス様!」
「え? いるのか?」
ベアトリス様は木のすぐそばに立ち、じっとこちらを見ている。
相変わらずの無表情だけれど、口元がほんの少し緩んでいるような気がした。私の自惚れでなかったら、遊びに来たことを喜んでくれているのかもしれない。
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