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守らなきゃ!
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レーナおばさまに促された王子妃。
さっきの私へのあの態度を思うと、失礼ながら常識的な挨拶ができる人とは思えない。
だって、ミナリアねえさまへしたことを悪いと思うどころか、まるで、恨んでいるようなあの呼び方。
しかも、それを隠そうともせずに、初対面なのに、ミナリアねえさまの親戚である私に言うくらいだもんね。
第二王子同様に、人として、まるで信用できない!
ということで、監視するように、私は王子妃を見る。
すると、王子妃はおもむろにその場に立った。
そして、微笑むこともなく、口を開いた。
「本日は私の主催するお茶会に来てくださり、ありがとうございます。王女様にはいらぬ嫉妬をしてしまい、大変申し訳ありませんでした。謝罪の気持ちをこめたお茶会を楽しんでいってください」
と、すごい棒読みで一気にまくしたてた王子妃。
王女様のほうを警戒したような目でちらっと見たあと、席にすわった。
なんというか想像を超えた挨拶だ……。
もちろん、悪い意味で。
まずもって、全部まるごとお茶会を準備してくれたレーナおばさまへの感謝の気持ちはないの!?
更に、私の主催するお茶会!?
第二王子に続いて、またまた、どの口が言う!?
ふたりとも、主催と言う言葉の意味をきっちり調べて、と声を大にして言いたい! と、心が荒ぶる私。
「まあ、アンヌさん、そんな心配しないで。ガイガー王子は素敵な方だし、友人ではあるけれど、正直、全く私の好みではないの」
王女様が王子妃に向かって、笑いながら言った。
「それは、ひどいな。なら、ラジュ王女はどんな男がいいんだ? 婚約者はいないと聞いているが、ラジュ王女なら選び放題だろう?」
と、テンション高めで話しかける第二王子。
にやけた笑みが胡散臭すぎて、警戒心で全身がぴりぴりする。
「そうね、強くて美しい男性がいいわね」
そう言って、ルーファスに向かって微笑んだ王女様。
小さい頃からさんざん見てきた、ルーファスを狙うその視線。
私は、無意識に、ひざにおいていた手を隣のルーファスのほうへのばした。
テーブルの下で、手のひらをいっぱいにひろげて、王女様のほうへ向ける。
小さい手が壁になるようなイメージだ。
なんとかして、ルーファスをあの視線から守らなきゃ!
本当はいつものようにルーファスの前に私が立ち、ルーファスを狙う邪な視線をさえぎりたいところだけれど、テーブルがあるから物理的に無理。もどかしい!
「なるほど。ラジュ王女の理想の男は、案外この国で見つけられるかもしれんな。ラジュ王女に請われれば、誰もが喜んで、ジャナ国についていくだろう。うらやましい男だ」
と、意味ありげに微笑んで、ルーファスをちらりと見た第二王子。
今の言葉って、第二王子の邪悪な気持ちがもれまくってない?
つまり、優秀なルーファスが邪魔で、国外に追いだしたいっていうことだよね!?
控えめに言って、やはり最低最悪だ。
私はそこで、はっとした。
このお茶会、公爵家のみなさんが私を見守ってくれているけれど、本当に見守るべき存在はルーファスなんじゃない!?
だって、王女は絶対にルーファスを狙って国に連れて帰ろうとしているし、第二王子はルーファスを追い出そうとしてる!
ふたりの利害が一致している!
「そんな男性がいたらいいのだけれど」
と、華やかに微笑んで第二王子のほうをむいて答える王女様。
しかも、胸元のサファイアがついたブローチを触っている。
これは、完全にルーファスにロックオンしてるんじゃない!?
ルーファスが危ない!
私はルーファスのほうをむいた。
すぐに、気づいたルーファスも私を見つめてきた。
(ルーファスのことは私が守るから!)
と、口パクで伝える。
すると、ルーファスのほうも(ララは僕が守るよ)と口パクで返してきた。
しかも、楽しそうに微笑んでいる。
いや、それ違うから、ルーファス!
危ないのはルーファスなんだって!
それに、そんな天使みたいな無邪気な笑顔を見せちゃダメ!
私には過保護なくせに、自分の美貌に無頓着すぎるルーファス。
口パクで更に注意しようとしたその時だ。
テーブルの下でルーファスのほうへとのばしていた私の手がぎゅっとにぎられた。
ルーファスを守るための壁にしようとイメージしていたのに、にぎられたら、できないでしょうが!?
焦る私に、とろけるような甘い笑みを浮かべたルーファス。
ダメだ……。
さっきより、ルーファスの笑みが危険度の増したものになっている。
王女様が見たら、ルーファスにもっと魅了されるじゃない!?
思いっきり、ルーファスの手から自分の手をひっこぬいて、視線を前に戻す。
幸い王女様は第二王子のほうを向いたままだった。
ほっとしたのもつかのま、モリナさんと目があった。
私をにらんでいるが、その視線にぎょっとした。
今までとは比べ物にならないくらい怖い目をしているから。
今までも散々にらまれてきたから、正直、慣れているし怖くはないと思っていた。
でも、今のモリナさんはなんだか知らない人みたい。
そう思うと、なんだか不気味で、ぞわっとした。
さっきの私へのあの態度を思うと、失礼ながら常識的な挨拶ができる人とは思えない。
だって、ミナリアねえさまへしたことを悪いと思うどころか、まるで、恨んでいるようなあの呼び方。
しかも、それを隠そうともせずに、初対面なのに、ミナリアねえさまの親戚である私に言うくらいだもんね。
第二王子同様に、人として、まるで信用できない!
ということで、監視するように、私は王子妃を見る。
すると、王子妃はおもむろにその場に立った。
そして、微笑むこともなく、口を開いた。
「本日は私の主催するお茶会に来てくださり、ありがとうございます。王女様にはいらぬ嫉妬をしてしまい、大変申し訳ありませんでした。謝罪の気持ちをこめたお茶会を楽しんでいってください」
と、すごい棒読みで一気にまくしたてた王子妃。
王女様のほうを警戒したような目でちらっと見たあと、席にすわった。
なんというか想像を超えた挨拶だ……。
もちろん、悪い意味で。
まずもって、全部まるごとお茶会を準備してくれたレーナおばさまへの感謝の気持ちはないの!?
更に、私の主催するお茶会!?
第二王子に続いて、またまた、どの口が言う!?
ふたりとも、主催と言う言葉の意味をきっちり調べて、と声を大にして言いたい! と、心が荒ぶる私。
「まあ、アンヌさん、そんな心配しないで。ガイガー王子は素敵な方だし、友人ではあるけれど、正直、全く私の好みではないの」
王女様が王子妃に向かって、笑いながら言った。
「それは、ひどいな。なら、ラジュ王女はどんな男がいいんだ? 婚約者はいないと聞いているが、ラジュ王女なら選び放題だろう?」
と、テンション高めで話しかける第二王子。
にやけた笑みが胡散臭すぎて、警戒心で全身がぴりぴりする。
「そうね、強くて美しい男性がいいわね」
そう言って、ルーファスに向かって微笑んだ王女様。
小さい頃からさんざん見てきた、ルーファスを狙うその視線。
私は、無意識に、ひざにおいていた手を隣のルーファスのほうへのばした。
テーブルの下で、手のひらをいっぱいにひろげて、王女様のほうへ向ける。
小さい手が壁になるようなイメージだ。
なんとかして、ルーファスをあの視線から守らなきゃ!
本当はいつものようにルーファスの前に私が立ち、ルーファスを狙う邪な視線をさえぎりたいところだけれど、テーブルがあるから物理的に無理。もどかしい!
「なるほど。ラジュ王女の理想の男は、案外この国で見つけられるかもしれんな。ラジュ王女に請われれば、誰もが喜んで、ジャナ国についていくだろう。うらやましい男だ」
と、意味ありげに微笑んで、ルーファスをちらりと見た第二王子。
今の言葉って、第二王子の邪悪な気持ちがもれまくってない?
つまり、優秀なルーファスが邪魔で、国外に追いだしたいっていうことだよね!?
控えめに言って、やはり最低最悪だ。
私はそこで、はっとした。
このお茶会、公爵家のみなさんが私を見守ってくれているけれど、本当に見守るべき存在はルーファスなんじゃない!?
だって、王女は絶対にルーファスを狙って国に連れて帰ろうとしているし、第二王子はルーファスを追い出そうとしてる!
ふたりの利害が一致している!
「そんな男性がいたらいいのだけれど」
と、華やかに微笑んで第二王子のほうをむいて答える王女様。
しかも、胸元のサファイアがついたブローチを触っている。
これは、完全にルーファスにロックオンしてるんじゃない!?
ルーファスが危ない!
私はルーファスのほうをむいた。
すぐに、気づいたルーファスも私を見つめてきた。
(ルーファスのことは私が守るから!)
と、口パクで伝える。
すると、ルーファスのほうも(ララは僕が守るよ)と口パクで返してきた。
しかも、楽しそうに微笑んでいる。
いや、それ違うから、ルーファス!
危ないのはルーファスなんだって!
それに、そんな天使みたいな無邪気な笑顔を見せちゃダメ!
私には過保護なくせに、自分の美貌に無頓着すぎるルーファス。
口パクで更に注意しようとしたその時だ。
テーブルの下でルーファスのほうへとのばしていた私の手がぎゅっとにぎられた。
ルーファスを守るための壁にしようとイメージしていたのに、にぎられたら、できないでしょうが!?
焦る私に、とろけるような甘い笑みを浮かべたルーファス。
ダメだ……。
さっきより、ルーファスの笑みが危険度の増したものになっている。
王女様が見たら、ルーファスにもっと魅了されるじゃない!?
思いっきり、ルーファスの手から自分の手をひっこぬいて、視線を前に戻す。
幸い王女様は第二王子のほうを向いたままだった。
ほっとしたのもつかのま、モリナさんと目があった。
私をにらんでいるが、その視線にぎょっとした。
今までとは比べ物にならないくらい怖い目をしているから。
今までも散々にらまれてきたから、正直、慣れているし怖くはないと思っていた。
でも、今のモリナさんはなんだか知らない人みたい。
そう思うと、なんだか不気味で、ぞわっとした。
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