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打ち合わせ
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※ アデル視点に戻ります。
色々あった昨日の疲れも、ぐっすり眠ってすっきり。
いつものように、メイドのアンに髪を結ってもらっていると、
「アデル王女様、そのチョーカー、本当に美しいですね!」
アンが、鏡越しに見ながら、うっとりと言った。
「…まあ、きれいだよね…」
チョーカーではなく、首輪だけどね…。
「ユーリ様からのプレゼントですか?」
「え、なんでわかるの?」
「そりゃあ、ユーリ様の瞳の色と同じじゃないですか。誰でもわかりますよ!」
えっ、そうなの?! そんなもんなの?
やっぱり、今日はつけたくないなあ。
だって、今日は、これから私のブルージュ国訪問の打ち合わせがある。
打ち合わせでつけるのって、すごーく恥ずかしいんじゃない?
…が、残念なことに、つけないといけない理由があるのです。
というのも、昨日、ユーリと食事をしてた時のこと。
「ねえ、アデル。これ、明日の打ち合わせにつけてきてね」
「え、でも、打ち合わせには、シンプルな服でいくから。別の時につけるよ」
そう答えると、
「アデルは、気に入らなかったんだね。じゃあ、もっと大きいサイズのを作るね」
憂いをおびた表情で、ユーリが言う。
私はあわてて言った。
「いえいえ、大変気に入ってます! すごくきれいだし。もう、これで、十分すぎる大きさだからね」
「じゃあ、明日、つけてきてね。約束だからね」
結局、私は負け、うなずいた。
すると、ユーリは、
「絶対だよ、アデル。もしも、約束をやぶったら…」
「やぶったら、なに?」
「そうだねえ、…お仕置きでもしようかな? それはそれで、楽しいかも。ねえ、アデル」
と、怪しげな笑みをみせた。
今、思い出しても、ぶるっとふるえるわ。
そもそも、お仕置きって、なに?!
とにかく、なにがなんでも、つけていかないと!
なので、TPOとかは無視。
首回りだけ豪華で目立ってますが、打ち合わせに行ってきます!
応接室に入ると、王太子のルイ兄様、ユーリ、オパール国の騎士団長、そして、デュラン王子と、ブルージュ国の方が一人いた。
私ぬきで、先に打ち合わせをしていたようね。
「ああ、アデル。ここへ座って」
ルイ兄様が、私に隣の席を手でしめした。うながされるままに座る。
横長のテーブルに、ルイ兄様、私、ユーリ、騎士団長が横並びに座り、向かい側に、ブルージュ国のお二人が座っている状況だ。
座るなり、隣のユーリが、
「つけてくれたんだ、うれしい。すごく似合ってる。きれいだよ、アデル」
と、ささやき、とろけるように微笑んできた。
ちょっと! やめて! みんな見てるから。
はずかしすぎて、一気に顔があつくなる。
すると、今度は、前の席のデュラン王子が、
「アデル王女、昨日はありがとう。ご一緒できて、楽しかったよ! ブルージュ国は、ぼくがずっと案内するからね。楽しみにしてて」
と、軽くウインク。
えっと、打ち合わせですよ? ほんと、やめて!
ほら、隣から冷気がながれてきたじゃない。
「はい。楽しみにしてますね…」
一応、答えたものの、隣の席からの圧が強すぎて、消え入りそうな声になってしまった。
場が微妙な空気になった。
が、デュラン王子は、気にすることもなく、
「そうだ、アデル王女に、ぼくの側近を紹介しておくよ」
と、にこやかに言うと、隣の席の男性を見た。
デュラン王子と同じくらいの年齢にみえるその人は、まっすぐな黒髪に眼鏡をかけている。
整った顔つきで、怜悧な印象。まさに、きれものって感じだわね。
側近の方は、その場で立ちあがり、一礼すると、
「ジリム・オルブライトと申します。デュラン王子の側近という名の雑用係です。いつものごとく、デュラン王子の急で無茶な思いつき、…いえ、要望がありまして、仕事を徹夜で済まして、今朝、この国に到着しました。どうぞ、よろしくお願いいたします」
と、私にむかって、真顔で、苦労がうかがえる挨拶をした。目の下にはクマができている。
デュラン王子が、ははっと笑った。
えっ、これ、笑っていいところ?! 笑ってはいけないところではないの?!
よくわからないので、
「それは、大変でしたね。お疲れ様です。こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
と、無難に答えてみる。
「ジリムはね、ぼくの乳兄弟で、同じ年。頼りになるから、なんでも言ってね」
と、気軽に言うデュラン王子。隣のジリムさんは、真顔のまま。
温度差を感じるわ…。
そして、うちのルイ兄様とデュラン王子が即決した、私の急なブルージュ国訪問は、ジリムさんに一番迷惑をかけているということね。
ほんと、ごめんなさい…。
色々あった昨日の疲れも、ぐっすり眠ってすっきり。
いつものように、メイドのアンに髪を結ってもらっていると、
「アデル王女様、そのチョーカー、本当に美しいですね!」
アンが、鏡越しに見ながら、うっとりと言った。
「…まあ、きれいだよね…」
チョーカーではなく、首輪だけどね…。
「ユーリ様からのプレゼントですか?」
「え、なんでわかるの?」
「そりゃあ、ユーリ様の瞳の色と同じじゃないですか。誰でもわかりますよ!」
えっ、そうなの?! そんなもんなの?
やっぱり、今日はつけたくないなあ。
だって、今日は、これから私のブルージュ国訪問の打ち合わせがある。
打ち合わせでつけるのって、すごーく恥ずかしいんじゃない?
…が、残念なことに、つけないといけない理由があるのです。
というのも、昨日、ユーリと食事をしてた時のこと。
「ねえ、アデル。これ、明日の打ち合わせにつけてきてね」
「え、でも、打ち合わせには、シンプルな服でいくから。別の時につけるよ」
そう答えると、
「アデルは、気に入らなかったんだね。じゃあ、もっと大きいサイズのを作るね」
憂いをおびた表情で、ユーリが言う。
私はあわてて言った。
「いえいえ、大変気に入ってます! すごくきれいだし。もう、これで、十分すぎる大きさだからね」
「じゃあ、明日、つけてきてね。約束だからね」
結局、私は負け、うなずいた。
すると、ユーリは、
「絶対だよ、アデル。もしも、約束をやぶったら…」
「やぶったら、なに?」
「そうだねえ、…お仕置きでもしようかな? それはそれで、楽しいかも。ねえ、アデル」
と、怪しげな笑みをみせた。
今、思い出しても、ぶるっとふるえるわ。
そもそも、お仕置きって、なに?!
とにかく、なにがなんでも、つけていかないと!
なので、TPOとかは無視。
首回りだけ豪華で目立ってますが、打ち合わせに行ってきます!
応接室に入ると、王太子のルイ兄様、ユーリ、オパール国の騎士団長、そして、デュラン王子と、ブルージュ国の方が一人いた。
私ぬきで、先に打ち合わせをしていたようね。
「ああ、アデル。ここへ座って」
ルイ兄様が、私に隣の席を手でしめした。うながされるままに座る。
横長のテーブルに、ルイ兄様、私、ユーリ、騎士団長が横並びに座り、向かい側に、ブルージュ国のお二人が座っている状況だ。
座るなり、隣のユーリが、
「つけてくれたんだ、うれしい。すごく似合ってる。きれいだよ、アデル」
と、ささやき、とろけるように微笑んできた。
ちょっと! やめて! みんな見てるから。
はずかしすぎて、一気に顔があつくなる。
すると、今度は、前の席のデュラン王子が、
「アデル王女、昨日はありがとう。ご一緒できて、楽しかったよ! ブルージュ国は、ぼくがずっと案内するからね。楽しみにしてて」
と、軽くウインク。
えっと、打ち合わせですよ? ほんと、やめて!
ほら、隣から冷気がながれてきたじゃない。
「はい。楽しみにしてますね…」
一応、答えたものの、隣の席からの圧が強すぎて、消え入りそうな声になってしまった。
場が微妙な空気になった。
が、デュラン王子は、気にすることもなく、
「そうだ、アデル王女に、ぼくの側近を紹介しておくよ」
と、にこやかに言うと、隣の席の男性を見た。
デュラン王子と同じくらいの年齢にみえるその人は、まっすぐな黒髪に眼鏡をかけている。
整った顔つきで、怜悧な印象。まさに、きれものって感じだわね。
側近の方は、その場で立ちあがり、一礼すると、
「ジリム・オルブライトと申します。デュラン王子の側近という名の雑用係です。いつものごとく、デュラン王子の急で無茶な思いつき、…いえ、要望がありまして、仕事を徹夜で済まして、今朝、この国に到着しました。どうぞ、よろしくお願いいたします」
と、私にむかって、真顔で、苦労がうかがえる挨拶をした。目の下にはクマができている。
デュラン王子が、ははっと笑った。
えっ、これ、笑っていいところ?! 笑ってはいけないところではないの?!
よくわからないので、
「それは、大変でしたね。お疲れ様です。こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします」
と、無難に答えてみる。
「ジリムはね、ぼくの乳兄弟で、同じ年。頼りになるから、なんでも言ってね」
と、気軽に言うデュラン王子。隣のジリムさんは、真顔のまま。
温度差を感じるわ…。
そして、うちのルイ兄様とデュラン王子が即決した、私の急なブルージュ国訪問は、ジリムさんに一番迷惑をかけているということね。
ほんと、ごめんなさい…。
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