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疲れます by マルク
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※ マルク視点、今回で終わりです。
デュラン王子が、ロイドさんから目がはなせなくなっている間に、市場に到着。
いい調子だ!
ぼくの願いは、このまま、さーっとさーっと見学して、無事、今日が、あっという間に終わること。
市場へ入ったとたん、甘い匂いがただよってきた。
心が疲れ果ててるので、匂いだけでも癒される…。
と、デュラン王子が、「食べてみる?」と、提案してくれた。
思わず、いい人と思ってしまいそうになるけど、ユーリ兄様と同類だからね…。
でも、こうやって、他人に気を使うところは、ユーリ兄様にはまるでない。
ユーリ兄様は、完璧な外面をかぶっているけれど、他人に気を使わない。というか、使わせるのみ。
徹底して、アデルにしか気を使わないんだよね。
まあ、その使い方がゆがんでるから、アデルに怖がられるんだけど…。
ここで、ロイドさんの過保護が発動。
アデルがお店に行こうとすると、わずか数メートルの距離なのに、「転んだら大変です」とか言って、かわりに買いに行った。
しかも、動きが驚くほど早く、早回しで見てるみたい。
多分、アデルを守っている今、ほんの少しでも離れていたくないんだろうね…。
「なんか、おもしろいね…」
デュラン王子が、ぼそりとつぶやいた。
完全にロイドさんに、心を持っていかれている。
ロイドさんは、あっという間に買って帰ってきて、お菓子を手渡してくれた。
揚げたてで、いいにおい!
さあ、食べようと思ったら、アデルの「ちょっと、ロイド! なにするの?」という声。
見ると、ロイドさんが、いきなり、アデルの分のお菓子の上をちぎって食べている。
えっ! なに、なに、なにしてるの?
ゆっくりかんでから、やっと飲み込み、
「毒はありません」
って。
まさか、毒味だとはね…。
しかも、毒味部分が、大きすぎない?
心配の気持ちが、毒味の量にあらわれているのか、あまり大きくないお菓子の半分くらいしか残っていない。
ぼくだったら、ありがた迷惑で、ちょっと泣くけど。かわいそう、アデル。
でも、デュラン王子の心をさらにひきつけたみたい。
今、この瞬間も、目の前のお菓子も、アデルのことも忘れて、ロイドさんしか目に入っていない。
このまま、つきすすんで、ロイドさん!
アデルは、少量のお菓子をかみしめるように、ゆっくり食べている。
ロイドさんは、そんなアデルの背後に、ぴたりとくっついて、守っている。
そして、デュラン王子は、そんなロイドさんにくぎ付け。
ぼくは、急いでお菓子を食べ、すぐに、そこらへんのお店で、甘いものを調達してきた。
今日一日、心の非常食としておやつは必需だ。
服のあらゆるポケットに、ぱんぱんに調達できて、やっと、ほっとする。
そして、アデルも食べ終わったので、また、歩きだす。
が、歩いていると、女性たちのざわめく声が。
視線がデュラン王子に集中している。目をひくような、とびきりの美形だもんね。
ほんと、ユーリ兄様の時と同じで、まさにデジャブ。
物語にでてくる悪魔とか魔王って、美形が多いけど、信憑性があるなあ、と改めて思う。
あっ、でも、まずい…。
ロイドさんにくぎ付けだった、デュラン王子が、元に戻ってきた。
まわりにむかって、甘すぎて胸焼けしそうな笑顔をふりまきはじめている。
早く、ロイドさん、なんとかして! 度肝をぬかれるような、過保護を発動して!
と、思ったら、デュラン王子が、アデルに好きな花を聞いて、花屋に入っていった。
もう、嫌な予感しかない。
とりあえず、落ち着け、マルク。
そうだ、甘いもの。さっき買ったばかりの非常用おやつが、早速役立つ時が。
甘いものを食べながら、考える。
そうしているうちに、デュラン王子が、大量のピンクのバラの花束をアデルに買ってきた。
きらきらの本物の王子が、バラの花束を本物の王女に渡すって、まさに童話?!
ぼくは、目の前で何を見せられてるんだろう?
「初めてのデートの記念に」
とか、デュラン王子が言っている。
いやいや、デートじゃないです。ぼくたちもいます。
他人を気づかえる人だと思ったのは、間違いだったかも。
欲望に忠実すぎて、ぼくたち他人が目に入ってないよね。
そして、アデルは、すっかり喜んでるみたい。
大きな花束にうもれて、恥ずかしそうに、お礼を言っている。
ダメだよ、ほだされないで!
ユーリ兄様みたいに、こじれてないぶん、乙女心をつかんでいる。
まずいな、これ。
どうしたら、ユーリ兄様の逆鱗にふれない方向にもっていけるんだろう?
甘いものを食べながら考える。考える。考える…。
そうだ、この状況を見なかったことにしよう!
※ 次回からアデル視点に戻ります。
デュラン王子が、ロイドさんから目がはなせなくなっている間に、市場に到着。
いい調子だ!
ぼくの願いは、このまま、さーっとさーっと見学して、無事、今日が、あっという間に終わること。
市場へ入ったとたん、甘い匂いがただよってきた。
心が疲れ果ててるので、匂いだけでも癒される…。
と、デュラン王子が、「食べてみる?」と、提案してくれた。
思わず、いい人と思ってしまいそうになるけど、ユーリ兄様と同類だからね…。
でも、こうやって、他人に気を使うところは、ユーリ兄様にはまるでない。
ユーリ兄様は、完璧な外面をかぶっているけれど、他人に気を使わない。というか、使わせるのみ。
徹底して、アデルにしか気を使わないんだよね。
まあ、その使い方がゆがんでるから、アデルに怖がられるんだけど…。
ここで、ロイドさんの過保護が発動。
アデルがお店に行こうとすると、わずか数メートルの距離なのに、「転んだら大変です」とか言って、かわりに買いに行った。
しかも、動きが驚くほど早く、早回しで見てるみたい。
多分、アデルを守っている今、ほんの少しでも離れていたくないんだろうね…。
「なんか、おもしろいね…」
デュラン王子が、ぼそりとつぶやいた。
完全にロイドさんに、心を持っていかれている。
ロイドさんは、あっという間に買って帰ってきて、お菓子を手渡してくれた。
揚げたてで、いいにおい!
さあ、食べようと思ったら、アデルの「ちょっと、ロイド! なにするの?」という声。
見ると、ロイドさんが、いきなり、アデルの分のお菓子の上をちぎって食べている。
えっ! なに、なに、なにしてるの?
ゆっくりかんでから、やっと飲み込み、
「毒はありません」
って。
まさか、毒味だとはね…。
しかも、毒味部分が、大きすぎない?
心配の気持ちが、毒味の量にあらわれているのか、あまり大きくないお菓子の半分くらいしか残っていない。
ぼくだったら、ありがた迷惑で、ちょっと泣くけど。かわいそう、アデル。
でも、デュラン王子の心をさらにひきつけたみたい。
今、この瞬間も、目の前のお菓子も、アデルのことも忘れて、ロイドさんしか目に入っていない。
このまま、つきすすんで、ロイドさん!
アデルは、少量のお菓子をかみしめるように、ゆっくり食べている。
ロイドさんは、そんなアデルの背後に、ぴたりとくっついて、守っている。
そして、デュラン王子は、そんなロイドさんにくぎ付け。
ぼくは、急いでお菓子を食べ、すぐに、そこらへんのお店で、甘いものを調達してきた。
今日一日、心の非常食としておやつは必需だ。
服のあらゆるポケットに、ぱんぱんに調達できて、やっと、ほっとする。
そして、アデルも食べ終わったので、また、歩きだす。
が、歩いていると、女性たちのざわめく声が。
視線がデュラン王子に集中している。目をひくような、とびきりの美形だもんね。
ほんと、ユーリ兄様の時と同じで、まさにデジャブ。
物語にでてくる悪魔とか魔王って、美形が多いけど、信憑性があるなあ、と改めて思う。
あっ、でも、まずい…。
ロイドさんにくぎ付けだった、デュラン王子が、元に戻ってきた。
まわりにむかって、甘すぎて胸焼けしそうな笑顔をふりまきはじめている。
早く、ロイドさん、なんとかして! 度肝をぬかれるような、過保護を発動して!
と、思ったら、デュラン王子が、アデルに好きな花を聞いて、花屋に入っていった。
もう、嫌な予感しかない。
とりあえず、落ち着け、マルク。
そうだ、甘いもの。さっき買ったばかりの非常用おやつが、早速役立つ時が。
甘いものを食べながら、考える。
そうしているうちに、デュラン王子が、大量のピンクのバラの花束をアデルに買ってきた。
きらきらの本物の王子が、バラの花束を本物の王女に渡すって、まさに童話?!
ぼくは、目の前で何を見せられてるんだろう?
「初めてのデートの記念に」
とか、デュラン王子が言っている。
いやいや、デートじゃないです。ぼくたちもいます。
他人を気づかえる人だと思ったのは、間違いだったかも。
欲望に忠実すぎて、ぼくたち他人が目に入ってないよね。
そして、アデルは、すっかり喜んでるみたい。
大きな花束にうもれて、恥ずかしそうに、お礼を言っている。
ダメだよ、ほだされないで!
ユーリ兄様みたいに、こじれてないぶん、乙女心をつかんでいる。
まずいな、これ。
どうしたら、ユーリ兄様の逆鱗にふれない方向にもっていけるんだろう?
甘いものを食べながら考える。考える。考える…。
そうだ、この状況を見なかったことにしよう!
※ 次回からアデル視点に戻ります。
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