天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

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ついに晩餐会

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そして、ついに晩餐会の時間になりました。

ユーリは、オパール国の正装で、さりげなく、水色を差し色にした衣装を着ている。
これまた私とおそろいのよう。
そして、輝くばかりの金髪を少し後ろになでつけているからか、大人の魅力というか、妖しい色気?みたいなものもあふれだしている。

ユーリに免疫がない人にとっては、危険なレベルの美しさだわね。

しかも、さっき、廊下にあった大きな鏡に、私たち二人の並んだ姿がうつったんだけど…。
うーん、これってどうなのかしら?

まず、目にとびこんできたのが、ユーリの美しい青い瞳と、私のチョーカーの青い宝石。

どう見ても、ユーリが主で、私が主の色の首輪をつけられて、隷属させられているように見えるんだけど。

さしずめ美貌の魔王と、使い魔みたいな感じかしら。
自分で言って悲しいんだけれど…。

ま、できるだけ、王女らしさをかき集めて、がんばりましょ!


案内された広間には、想像していた以上の沢山の人々が集まっていて、びっくりした。
もっと、こじんまりとした晩餐会かと思ったら、招待客が多いのね?

うん、緊張してきた…。

そして、各テーブルにわかれ、その場で立って、私たちが入場するのを出迎えてくれている。

そんな中、私はデュラン王子に続いて、王族方の座られる一番奥のテーブルまで歩いていく。
私の後ろに、ユーリが続いているのだけれど、私を素通りして、後ろのユーリを見ている女性たちの視線がすごい。

さすが、ユーリね。
国が違っても、どこでも女性たちの反応は同じだわ。
そう思うと、緊張がとけてきた。

王様、王妃様、王太子様、デュラン王子のテーブルに、私がまじる。
ユーリは、ランディ王子のいるお隣のテーブルに案内された。

が、テーブルが別なことを知り、ユーリが一瞬、凍りそうな鋭い目で案内係の人を見る。

こら、やめなさい! おびえてるじゃない?!

しかも、王様の前で、まずいわよ?! 

私は、
「ダメだよ、ユーリ」
と、あわててささやく。

すると、ユーリが、
「ぼくが離れている時に、アデルになんかあったら、王宮ごと消すから」
と、物騒なささやきを返してきた。

…はい?! 食事の間、テーブルが離れるだけだよ?
しかも、お隣のテーブルだよ?!

しぶしぶ案内された席につくユーリを見届け、私も用意された席につく。

そんな様子をながめていた王様が、
「アデル王女の婚約者殿は、一時もアデル王女と離れるのが惜しいようだ。愛されてるのう」
と、ほほえみながら言った。

が、そんなほほえましい感じとは程遠い、とても物騒なことを言ってますけどね…。

とは、言えないので、
「いえいえ、そんな…」
と、私は、長年培ってきた、あいまいで、どうとでもとれる王女スマイルでごまかしてみる。

「そうだよ。アデル王女は、結婚するまで、まだ時間もあるし、どうなるかわからないよね?」
そう口をはさんできたのは、いつの間にか、私の隣に座ったデュラン王子だ。

ちょっと、何を言い出すの? やめて! 
離れたとは言っても、ユーリの座るテーブルは隣のテーブルだよ? 

しかも、魔王らしく、すごーく地獄耳だよ? 
話す言葉には気をつけて! 

…と、思った瞬間、隣のテーブルから、冷気が流れてきはじめた。

あ、やっぱり、聞こえてたのね。

王妃様が、ぶるっと震える。

「寒いわ。少し、空調が効きすぎてるのかしらね? アデル王女、寒くない? 大丈夫?」
と、優しく声をかけてくださる。

「私は大丈夫です。慣れてますので…」
と、答えながら、変な汗がでてきて、とまらない。

…王妃様、申し訳ありません。この寒さ、自力で冷風を放出する、うちの魔王のせいです。

と、心の中で謝っておく。

そして、同じく魔王のデュラン王子は、同じ魔王の寒さは感じないらしく、
「今日は、ブルージュ国の名産がでてくるから楽しみにしててね。アディー」
と、甘さ全開で、微笑みかけてきた。

だから、アディーと、ここで呼ぶのはやめて!! 
その名産のお料理が、のきなみ凍ってしまうわよ?

どうぞ、聞こえてませんように。

が、願いもむなしく、一気に寒さが増した。

王妃様が、人を呼んで、空調を弱めるように指示を出している。

そんななか、王太子様が、
「デュランは、アデル王女を愛称で呼ぶほどに、仲良くなったのだね」
と、スミレ色の瞳を細めて、優しく微笑まれた。

「うん、そうなんだ。でも、もっと仲良くなりたいな。ね、アディー」
と、これでもかと甘さをふりまく、デュラン王子。

お隣のテーブル方面から、一層強くなった冷気がながれてきた。
王妃様だけでなく、王太子様も震えてる。

この晩餐会、寒さと甘さの対決だわね! 
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