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できる二人
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目の前に並ぶお料理は、どれも本当に美味しい。
でも、すぐに冷える。お隣からの冷風によって強制的に冷やされる。
美味しいんだけれど、冷たい…。
なんでもいいから、温かいものが食べたいわ…。
テーブルに、全部のお料理が出揃ったみたいね。
すると、静かだった広間が、いきなり、ざわざわしはじめた。
見ると、あちこちで、席を立って、動いている人がいる。
「あの人たち、どうしたのかしら?」
と、デュラン王子に聞いてみた。
「ブルージュ国の晩餐会ではね、最後まで料理が出たら、席を立って、動いていいんだ。
だから、思い思いに、知りあいのところへ話しにいったり、この機会に、話してみたい人のところへ挨拶しにいく人もいる。
もちろん、そのまま、すわって食べててもいいよ。まあ、要するに、自由ってこと」
そう言って、デュラン王子は微笑んだ。
ええ、そうなの?! くだけた感じで、楽しそうね。
と、思ったら、お隣の席から、甲高い声が聞こえてきた。
「あの、オパール国の方ですよね?」
うん、耳慣れた感じの声色ね。
見ると、ユーリのところに、三人の令嬢がやってきていた。
とっても見慣れた感じよね。
外国にいることを忘れてしまいそう…。
ユーリは、
「ええ、そうですが? 何か?」
と、完全に、外向きのきらきらした笑みをうかべて、答えた。
令嬢たちの目がハートになり、ボルテージが、一気にあがったのがこっちまで伝わってきた。
一瞬にして、心をつかまれてる。
だまされないで! それは、うちの魔王よ!
私の願いもむなしく、三人の中の真ん中の令嬢が、ユーリの前にすすみでた。
金髪をくるくると巻き、ゴージャスなパープルのドレスを着て、ひと際、派手…いえ、華やかな雰囲気。
私より、いくつか年上に見える。
「わたくし、ブルージュ国の筆頭公爵家であるジェフアーソン家の娘ミラと申します。是非、オパール国の方にご挨拶させていただきたいと思いまして」
そう言いながら、色っぽく微笑んだ。
が、うーん…。
お綺麗なんだけど、なんか、うすっぺらい感じがいなめない。
やはり、デュラン王子やユーリなど、本格的な、魔王の色っぽい微笑みを見慣れてしまってるから、私の基準がおかしくなったんだわ。
すると、ユーリが、
「それはそれは、ご丁寧に。わたしは、オパール国のユーリ・ロンバルトと申します」
そう言うと、これ以上ないくらい、表面的な笑みをうかべた。
「ユーリ様って、おっしゃるんですね!」
と、その令嬢が、うっとりとユーリを見つめる。
いやいや、うっとりしている場合じゃないですよ!
筆頭公爵家の令嬢の方、ユーリをちゃんと見て。
きれいに微笑んでるけど、目が笑ってないよ…。
すごーく怖い目をしているよ…。
おそらく、名前を呼ばれたことが不満だったんだと思う。
あれ? ユーリのななめ前にすわっている王女。確か、イーリンさんって言ったわね。
すごく、ふるえてない?
しかも、顔が、さっき見た時以上に、下をむいている。
もしや、ユーリの本性を見抜いてふるえてるとか?
とにかく、あの様子は、普通じゃないわね。
私は、とりあえず、デュラン王子に、
「ちょっと失礼」
そう声をかけて、あわてて席をたった。
デュラン王子が、
「どうしたの? アディー」
と言っているが、私は急いで、でも、走っていると思われないよう、自然に見えるように、イーリンさんのところに近寄っていった。
挨拶を装って、にこやかに、そして、他の人に聞こえないよう、小声で話しかける。
「私、オパール国の王女アデルです。どこかお悪いの?」
イーリンさんは、体をびくっとゆらした。
すると、斜め前のユーリの近くから、クスクスと笑い声が。
嫌な響きだわ…。
そう思って見ると、あの筆頭公爵家の令嬢が笑いながら、
「イーリン様は、いつもそんな感じですのよ。王女様、お気になさらないで」
と、私に向かって言った。
なに、その、小ばかにしたようなニュアンス!
私が長年、熱狂的なユーリファンに言われている悪口を思い出すわね。
共感しすぎて、ほおっておけないわ。
が、気になるのは、私の場合よりも、悪意を感じることよね…。
私は、気持ちをこめて、イーリンさんにささやきかける。
「私はあなたの味方よ。私に、なにかお手伝いできることはある?」
すると、
「ここから連れ出して」
と、かすれた声がもどってきた。
「わかった。まかせて」
私はそう言うと、私のあとを追ってきたデュラン王子に小声で言った。
「イーリンさんとご一緒に退席させていただきますね。ということで、あとは、うまーくお願い」
と、デュラン王子にまるなげした。
すぐさま、事情を察したデュラン王子。
「ごめん、アディー。イーリンをよろしく」
すぐに、デュラン王子が、人を呼び、その人に小声で指示をだした。
その人が、私の方を向いて、
「アデル王女様、ご案内いたします」
と言ったので、イーリンさんを椅子から立たせて、一緒に歩き出した。
幸い、会場はざわいついてるので、ぬけだしやすい。
そして、もう一人の魔王にも、あとはまかせた!という思いをこめて、目で合図を送る。
すると、ユーリの顔が一瞬、素に戻った。
そして、しかたないなあ、という感じで微笑みかけてきた。伝わったみたい。
ユーリは、すぐさま、外向きの笑顔に戻って、あの令嬢に話しかけ始めた。
私たちが退出する間、令嬢たちの注意を自分にひきつけ、そして、ついでに情報も得るつもりね。
ということで、いざという時、頼りになる二人が、あとはなんとかしてくれるでしょう。
だって、魔王たちは、仕事ができるものね。
でも、すぐに冷える。お隣からの冷風によって強制的に冷やされる。
美味しいんだけれど、冷たい…。
なんでもいいから、温かいものが食べたいわ…。
テーブルに、全部のお料理が出揃ったみたいね。
すると、静かだった広間が、いきなり、ざわざわしはじめた。
見ると、あちこちで、席を立って、動いている人がいる。
「あの人たち、どうしたのかしら?」
と、デュラン王子に聞いてみた。
「ブルージュ国の晩餐会ではね、最後まで料理が出たら、席を立って、動いていいんだ。
だから、思い思いに、知りあいのところへ話しにいったり、この機会に、話してみたい人のところへ挨拶しにいく人もいる。
もちろん、そのまま、すわって食べててもいいよ。まあ、要するに、自由ってこと」
そう言って、デュラン王子は微笑んだ。
ええ、そうなの?! くだけた感じで、楽しそうね。
と、思ったら、お隣の席から、甲高い声が聞こえてきた。
「あの、オパール国の方ですよね?」
うん、耳慣れた感じの声色ね。
見ると、ユーリのところに、三人の令嬢がやってきていた。
とっても見慣れた感じよね。
外国にいることを忘れてしまいそう…。
ユーリは、
「ええ、そうですが? 何か?」
と、完全に、外向きのきらきらした笑みをうかべて、答えた。
令嬢たちの目がハートになり、ボルテージが、一気にあがったのがこっちまで伝わってきた。
一瞬にして、心をつかまれてる。
だまされないで! それは、うちの魔王よ!
私の願いもむなしく、三人の中の真ん中の令嬢が、ユーリの前にすすみでた。
金髪をくるくると巻き、ゴージャスなパープルのドレスを着て、ひと際、派手…いえ、華やかな雰囲気。
私より、いくつか年上に見える。
「わたくし、ブルージュ国の筆頭公爵家であるジェフアーソン家の娘ミラと申します。是非、オパール国の方にご挨拶させていただきたいと思いまして」
そう言いながら、色っぽく微笑んだ。
が、うーん…。
お綺麗なんだけど、なんか、うすっぺらい感じがいなめない。
やはり、デュラン王子やユーリなど、本格的な、魔王の色っぽい微笑みを見慣れてしまってるから、私の基準がおかしくなったんだわ。
すると、ユーリが、
「それはそれは、ご丁寧に。わたしは、オパール国のユーリ・ロンバルトと申します」
そう言うと、これ以上ないくらい、表面的な笑みをうかべた。
「ユーリ様って、おっしゃるんですね!」
と、その令嬢が、うっとりとユーリを見つめる。
いやいや、うっとりしている場合じゃないですよ!
筆頭公爵家の令嬢の方、ユーリをちゃんと見て。
きれいに微笑んでるけど、目が笑ってないよ…。
すごーく怖い目をしているよ…。
おそらく、名前を呼ばれたことが不満だったんだと思う。
あれ? ユーリのななめ前にすわっている王女。確か、イーリンさんって言ったわね。
すごく、ふるえてない?
しかも、顔が、さっき見た時以上に、下をむいている。
もしや、ユーリの本性を見抜いてふるえてるとか?
とにかく、あの様子は、普通じゃないわね。
私は、とりあえず、デュラン王子に、
「ちょっと失礼」
そう声をかけて、あわてて席をたった。
デュラン王子が、
「どうしたの? アディー」
と言っているが、私は急いで、でも、走っていると思われないよう、自然に見えるように、イーリンさんのところに近寄っていった。
挨拶を装って、にこやかに、そして、他の人に聞こえないよう、小声で話しかける。
「私、オパール国の王女アデルです。どこかお悪いの?」
イーリンさんは、体をびくっとゆらした。
すると、斜め前のユーリの近くから、クスクスと笑い声が。
嫌な響きだわ…。
そう思って見ると、あの筆頭公爵家の令嬢が笑いながら、
「イーリン様は、いつもそんな感じですのよ。王女様、お気になさらないで」
と、私に向かって言った。
なに、その、小ばかにしたようなニュアンス!
私が長年、熱狂的なユーリファンに言われている悪口を思い出すわね。
共感しすぎて、ほおっておけないわ。
が、気になるのは、私の場合よりも、悪意を感じることよね…。
私は、気持ちをこめて、イーリンさんにささやきかける。
「私はあなたの味方よ。私に、なにかお手伝いできることはある?」
すると、
「ここから連れ出して」
と、かすれた声がもどってきた。
「わかった。まかせて」
私はそう言うと、私のあとを追ってきたデュラン王子に小声で言った。
「イーリンさんとご一緒に退席させていただきますね。ということで、あとは、うまーくお願い」
と、デュラン王子にまるなげした。
すぐさま、事情を察したデュラン王子。
「ごめん、アディー。イーリンをよろしく」
すぐに、デュラン王子が、人を呼び、その人に小声で指示をだした。
その人が、私の方を向いて、
「アデル王女様、ご案内いたします」
と言ったので、イーリンさんを椅子から立たせて、一緒に歩き出した。
幸い、会場はざわいついてるので、ぬけだしやすい。
そして、もう一人の魔王にも、あとはまかせた!という思いをこめて、目で合図を送る。
すると、ユーリの顔が一瞬、素に戻った。
そして、しかたないなあ、という感じで微笑みかけてきた。伝わったみたい。
ユーリは、すぐさま、外向きの笑顔に戻って、あの令嬢に話しかけ始めた。
私たちが退出する間、令嬢たちの注意を自分にひきつけ、そして、ついでに情報も得るつもりね。
ということで、いざという時、頼りになる二人が、あとはなんとかしてくれるでしょう。
だって、魔王たちは、仕事ができるものね。
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