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ドラゴン 対 ユーリ
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ユーリが、ドラゴンから私を引き離そうとすると、ドラゴンがくわっと口を開け、ユーリに向かって火を吐いた。
あぶない、ユーリ!!
…っと、思ったら、そのドラゴンの火は、ユーリに届く寸前に、ジュッと音をたてて消えた。
正確には消された。
ユーリが氷のような冷気をだして、火を消したみたいだ。
だって、ドラゴンに抱き着かれている私まで凍るように寒いもの…。
が、ドラゴンは私に抱き着いて離れない。
更に口をあけて、火を吐き続ける。そして、ユーリも冷気でその火を消し続ける。
「あの、二人とも! …じゃない、一人と一匹! やめてくれない?!
火と冷気に挟まれる私の身にもなってよ! 熱くて、寒いじゃない!」
と、たまらず、私は叫んだ。
すると、ドラゴンがキィーと鳴いて、抱き着いたまま私の顔を見上げた。
つぶらな瞳がうるっとしている。
(かあさん、ごめん)
(私はあなたのお母さんじゃないの。ドラゴンじゃないから)
と心で伝えた。
が、うるうるした金色の瞳はじっと私を見上げている。
もー、なんて、かわいいの!
思わず、抱き着かれているドラゴンを、私のほうもぎゅーっと抱きしめた。
途端に、ゴーッとすごい風がふき、冷気につつまれる。
寒い…。ユーリさん、寒すぎるわ…。
あったかいドラゴンちゃんを更にぎゅーっと抱きしめて、暖を取る。
「アデル、騙されたらダメだよ。こいつ、あざといからね?」
と、ユーリが私に言う。
「でもね、私をはぐれたお母さんだと思ってるみたいなんだよ! まだ、子どものドラゴンだし、かわいそうでしょ?」
私は、ドラゴンを抱きしめながら、ユーリのほうを振り返って言った。
「さっきからアデルを見る時と、ぼくを見る時の目の違いがすごいんだけど? 演技してるよ、そのクソチビ」
と、ユーリが、氷のような眼差しでドラゴンを見据える。
そこで、ブリジットさんが聞いてきた。
「あのアデル王女様、お母さんだと思ってるみたいというのは、どういうことでしょうか?」
「そうよね。説明してなかったわね。さっきから、ドラゴンが頭の中に、直接メッセージを送ってくるの。私のことを「かあさん」って呼んでくるから、私はあなたのお母さんじゃないって、心で念じてるんだけどね。どうも伝わってないみたい」
ブリジットさんは、
「ドラゴンが人の考えを感じ取るのはわかっていましたが、まさか、直接会話をしてくるなど、今まで聞いたこともありません…。やはり、アデル王女様は、なんらか、このドラゴンと特別なつながりがあるとしか思えないですね…」
そう言うと、私とドラゴンを観察するように見た。
アンドレさんもうなずきながら、
「アデル王女様に、このドラゴン保護センターに通ってもらって調べてみたらどうでしょう? ドラゴンも喜ぶでしょうし」
と、言った。
すると、デュラン王子が、
「いいね、それ! じゃあ、アディーに、この保護センターの客員名誉研究員にでもなってもらおうか。
ブルージュ国に住んでもらって、王宮から、週に数回、ずーっとながーく通ってもらおうよ」
と、にこやかに提案する。
「是非、そうしてください! わからなかったドラゴンの生態が解明できるかもしれません!」
と、ブリジットさんが興奮気味に言い、アンドレさんも首をぶんぶんと縦にふる。
一気に場の温度がさがった。
「なに、好き勝手なこと言ってんの? そんなこと、俺が許すわけないでしょ?
このセンターごと永久凍土にされたいの?」
あ、久々に、ユーリが俺って言っている。相当いらだってるわね…。
しかし、こんな冷え冷えとしたユーリにおびえることもなく、発言を続けるブリジットさん。
ドラゴン好きの血が騒いでるのか、目がぎらぎらとしている。
「しかし、こんなドラゴンとつながれる方は他にはおられません。アデル王女様、この保護センターにどうぞ力をお貸しください!」
と、ぺこりと頭をさげる。アンドレさんも、あわてて頭をさげる。
でも、いやいやそれは、いくらなんでも無理だよね…。
それに、ユーリがすごい目で見てるけど…。
「私も国に帰らないといけないですし…」
と、ユーリの圧に押されながら言いかけると、ドラゴンが更に力を入れてしがみついてきた。
「この子、アデルちゃんから離れないんじゃない?」
と、イーリンさん。
確かにね…。一体、どうしたらいいのかしら。
あぶない、ユーリ!!
…っと、思ったら、そのドラゴンの火は、ユーリに届く寸前に、ジュッと音をたてて消えた。
正確には消された。
ユーリが氷のような冷気をだして、火を消したみたいだ。
だって、ドラゴンに抱き着かれている私まで凍るように寒いもの…。
が、ドラゴンは私に抱き着いて離れない。
更に口をあけて、火を吐き続ける。そして、ユーリも冷気でその火を消し続ける。
「あの、二人とも! …じゃない、一人と一匹! やめてくれない?!
火と冷気に挟まれる私の身にもなってよ! 熱くて、寒いじゃない!」
と、たまらず、私は叫んだ。
すると、ドラゴンがキィーと鳴いて、抱き着いたまま私の顔を見上げた。
つぶらな瞳がうるっとしている。
(かあさん、ごめん)
(私はあなたのお母さんじゃないの。ドラゴンじゃないから)
と心で伝えた。
が、うるうるした金色の瞳はじっと私を見上げている。
もー、なんて、かわいいの!
思わず、抱き着かれているドラゴンを、私のほうもぎゅーっと抱きしめた。
途端に、ゴーッとすごい風がふき、冷気につつまれる。
寒い…。ユーリさん、寒すぎるわ…。
あったかいドラゴンちゃんを更にぎゅーっと抱きしめて、暖を取る。
「アデル、騙されたらダメだよ。こいつ、あざといからね?」
と、ユーリが私に言う。
「でもね、私をはぐれたお母さんだと思ってるみたいなんだよ! まだ、子どものドラゴンだし、かわいそうでしょ?」
私は、ドラゴンを抱きしめながら、ユーリのほうを振り返って言った。
「さっきからアデルを見る時と、ぼくを見る時の目の違いがすごいんだけど? 演技してるよ、そのクソチビ」
と、ユーリが、氷のような眼差しでドラゴンを見据える。
そこで、ブリジットさんが聞いてきた。
「あのアデル王女様、お母さんだと思ってるみたいというのは、どういうことでしょうか?」
「そうよね。説明してなかったわね。さっきから、ドラゴンが頭の中に、直接メッセージを送ってくるの。私のことを「かあさん」って呼んでくるから、私はあなたのお母さんじゃないって、心で念じてるんだけどね。どうも伝わってないみたい」
ブリジットさんは、
「ドラゴンが人の考えを感じ取るのはわかっていましたが、まさか、直接会話をしてくるなど、今まで聞いたこともありません…。やはり、アデル王女様は、なんらか、このドラゴンと特別なつながりがあるとしか思えないですね…」
そう言うと、私とドラゴンを観察するように見た。
アンドレさんもうなずきながら、
「アデル王女様に、このドラゴン保護センターに通ってもらって調べてみたらどうでしょう? ドラゴンも喜ぶでしょうし」
と、言った。
すると、デュラン王子が、
「いいね、それ! じゃあ、アディーに、この保護センターの客員名誉研究員にでもなってもらおうか。
ブルージュ国に住んでもらって、王宮から、週に数回、ずーっとながーく通ってもらおうよ」
と、にこやかに提案する。
「是非、そうしてください! わからなかったドラゴンの生態が解明できるかもしれません!」
と、ブリジットさんが興奮気味に言い、アンドレさんも首をぶんぶんと縦にふる。
一気に場の温度がさがった。
「なに、好き勝手なこと言ってんの? そんなこと、俺が許すわけないでしょ?
このセンターごと永久凍土にされたいの?」
あ、久々に、ユーリが俺って言っている。相当いらだってるわね…。
しかし、こんな冷え冷えとしたユーリにおびえることもなく、発言を続けるブリジットさん。
ドラゴン好きの血が騒いでるのか、目がぎらぎらとしている。
「しかし、こんなドラゴンとつながれる方は他にはおられません。アデル王女様、この保護センターにどうぞ力をお貸しください!」
と、ぺこりと頭をさげる。アンドレさんも、あわてて頭をさげる。
でも、いやいやそれは、いくらなんでも無理だよね…。
それに、ユーリがすごい目で見てるけど…。
「私も国に帰らないといけないですし…」
と、ユーリの圧に押されながら言いかけると、ドラゴンが更に力を入れてしがみついてきた。
「この子、アデルちゃんから離れないんじゃない?」
と、イーリンさん。
確かにね…。一体、どうしたらいいのかしら。
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