天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

文字の大きさ
108 / 158

ドラゴン 対 ユーリ

しおりを挟む
ユーリが、ドラゴンから私を引き離そうとすると、ドラゴンがくわっと口を開け、ユーリに向かって火を吐いた。

あぶない、ユーリ!!
 
…っと、思ったら、そのドラゴンの火は、ユーリに届く寸前に、ジュッと音をたてて消えた。
正確には消された。

ユーリが氷のような冷気をだして、火を消したみたいだ。
だって、ドラゴンに抱き着かれている私まで凍るように寒いもの…。

が、ドラゴンは私に抱き着いて離れない。
更に口をあけて、火を吐き続ける。そして、ユーリも冷気でその火を消し続ける。

「あの、二人とも! …じゃない、一人と一匹! やめてくれない?!
火と冷気に挟まれる私の身にもなってよ! 熱くて、寒いじゃない!」
と、たまらず、私は叫んだ。

すると、ドラゴンがキィーと鳴いて、抱き着いたまま私の顔を見上げた。
つぶらな瞳がうるっとしている。

(かあさん、ごめん)

(私はあなたのお母さんじゃないの。ドラゴンじゃないから)
と心で伝えた。

が、うるうるした金色の瞳はじっと私を見上げている。

もー、なんて、かわいいの! 

思わず、抱き着かれているドラゴンを、私のほうもぎゅーっと抱きしめた。

途端に、ゴーッとすごい風がふき、冷気につつまれる。

寒い…。ユーリさん、寒すぎるわ…。

あったかいドラゴンちゃんを更にぎゅーっと抱きしめて、暖を取る。

「アデル、騙されたらダメだよ。こいつ、あざといからね?」
と、ユーリが私に言う。

「でもね、私をはぐれたお母さんだと思ってるみたいなんだよ! まだ、子どものドラゴンだし、かわいそうでしょ?」
私は、ドラゴンを抱きしめながら、ユーリのほうを振り返って言った。

「さっきからアデルを見る時と、ぼくを見る時の目の違いがすごいんだけど? 演技してるよ、そのクソチビ」
と、ユーリが、氷のような眼差しでドラゴンを見据える。

そこで、ブリジットさんが聞いてきた。
「あのアデル王女様、お母さんだと思ってるみたいというのは、どういうことでしょうか?」

「そうよね。説明してなかったわね。さっきから、ドラゴンが頭の中に、直接メッセージを送ってくるの。私のことを「かあさん」って呼んでくるから、私はあなたのお母さんじゃないって、心で念じてるんだけどね。どうも伝わってないみたい」

ブリジットさんは、
「ドラゴンが人の考えを感じ取るのはわかっていましたが、まさか、直接会話をしてくるなど、今まで聞いたこともありません…。やはり、アデル王女様は、なんらか、このドラゴンと特別なつながりがあるとしか思えないですね…」
そう言うと、私とドラゴンを観察するように見た。

アンドレさんもうなずきながら、
「アデル王女様に、このドラゴン保護センターに通ってもらって調べてみたらどうでしょう? ドラゴンも喜ぶでしょうし」
と、言った。

すると、デュラン王子が、
「いいね、それ! じゃあ、アディーに、この保護センターの客員名誉研究員にでもなってもらおうか。
ブルージュ国に住んでもらって、王宮から、週に数回、ずーっとながーく通ってもらおうよ」
と、にこやかに提案する。

「是非、そうしてください! わからなかったドラゴンの生態が解明できるかもしれません!」
と、ブリジットさんが興奮気味に言い、アンドレさんも首をぶんぶんと縦にふる。

一気に場の温度がさがった。

「なに、好き勝手なこと言ってんの? そんなこと、俺が許すわけないでしょ?
このセンターごと永久凍土にされたいの?」

あ、久々に、ユーリが俺って言っている。相当いらだってるわね…。

しかし、こんな冷え冷えとしたユーリにおびえることもなく、発言を続けるブリジットさん。
ドラゴン好きの血が騒いでるのか、目がぎらぎらとしている。

「しかし、こんなドラゴンとつながれる方は他にはおられません。アデル王女様、この保護センターにどうぞ力をお貸しください!」
と、ぺこりと頭をさげる。アンドレさんも、あわてて頭をさげる。

でも、いやいやそれは、いくらなんでも無理だよね…。
それに、ユーリがすごい目で見てるけど…。

「私も国に帰らないといけないですし…」
と、ユーリの圧に押されながら言いかけると、ドラゴンが更に力を入れてしがみついてきた。

「この子、アデルちゃんから離れないんじゃない?」
と、イーリンさん。

確かにね…。一体、どうしたらいいのかしら。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。 時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。 数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。 自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。 はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。 短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました を長編にしたものです。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!

キムチ鍋
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。 だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。 「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」 そこからいろいろな人に愛されていく。 作者のキムチ鍋です! 不定期で投稿していきます‼️ 19時投稿です‼️

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いて欲しい!

カントリー
恋愛
「懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。」 でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。 大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きな小太した女子高校生。 今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。 ダーク 「…美味そうだな…」ジュル… 都子「あっ…ありがとうございます!」 (えっ…作った料理の事だよね…) 元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが… これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。 小説の「異世界でお菓子屋さんを始めました!」から20年前の物語となります。

処理中です...